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2024.03.29

“東洋の時計王”服部金太郎を演じた水上恒司「今までの決断に後悔したことはない」

日本初の腕時計を作り、「東洋の時計王」と呼ばれた、服部金太郎。彼の一代記となるテレビドラマ『黄金の刻〜服部金太郎物語〜』が2024年3月30日(土)、テレビ朝日系列にて放送される。若き金太郎を演じた俳優・水上恒司に、作品や仕事哲学を聞いた。インタビュー前編。 ■連載「NEXT GENERATIONS」とは

微笑む俳優・水上恒司

“つなぐ”ことは、あえて意識しなかった

日本が世界に誇るセイコーの腕時計。その礎となったのが、言わずと知れた創業者、服部金太郎の存在だ。

彼の一代記となるテレビ朝日ドラマプレミアム『黄金の刻〜服部金太郎物語〜』において、「東洋の時計王」と呼ばれ、“世界のセイコー”を築き上げた主人公・服部金太郎の青年期を、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』でも話題を呼ぶ注目の俳優、水上恒司が演じる。

服部金太郎といえば、今やビジネスの遂行において何より欠かせない「正確な時間」の共有を、日本における時計製造という面で確立したキーパーソンだ。

壮年期演じる先輩俳優の西島秀俊へとタスキを渡す役でありながら、その人となりをかたちづくる青年期という、非常に重要な役どころを演じる。

「西島さんとは、少し風貌も似ていると言われることがあるのですが、その金太郎の若い頃を自分に任されるというのは、素直にうれしいです。本作では同一人物なので、しっかりと絡めないのはちょっと残念でしたけど(笑)。

今回、若き日の金太郎役を西島さんへと受け渡す立場でしたが、あえてつなげようとはしませんでした。具体的には、服部金太郎という人物を調べて作りこむことをしなかったんです。

時間に魅了されていく飾らない人柄を、当時の金太郎と同世代である僕が自由に考えて、感じたままに演じてもいいのかなと。

西島さんが“自分と似て不器用なタイプ”とおっしゃったとおり、まさに自分もそのように感じていますし、自分なりのアプローチをすることで、きっと面白い化学反応が生まれだろうと感じたんです」

役柄に対するアプローチは、作品によってさまざまだという水上だが、独自のアプローチを経て、大志あふれる服部金太郎役に挑んだというわけだ。

「基本的に金太郎が周囲に及ぼした影響というのは、金太郎自身は自覚していなかったように感じたんです。彼がその時に感じた何気ないひと言ひと言が、粂吉(辻粂吉・奉公先の主人/船越英一郎)をはじめとする周囲の人たちを動かしていった。

役柄では、そこを意識したからこそ、力みなく演じられたという気がします。『やってやったぞ』とドヤる雰囲気を前面に押し出してしまうと、きっと金太郎の周囲も動かなかったと思うんです」

立っている微笑む俳優・水上恒司
水上恒司/Koshi Mizukami
1999年福岡県生まれ。高校時代に野球部引退後、演劇の世界に誘われて、全国高校演劇大会に出場。そこから演技の世界に魅了される。2018年テレビドラマ『中学聖日記』で俳優デビューを果たす。2023年後期NHK連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロイン・花田鈴子の最愛の人・村山愛助を演じて話題に。映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』で福原遥と共に主演を務め、第47回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞し、着々とスターダムへの道を歩んでいる。

改めて深掘りした「時間という概念」

「力感がないように」と、肩の力を自分なりに抜く演技にトライしたという水上。そのアプローチについても、言葉を選びながら説き明かしてくれた。

「粂吉は、金太郎を自分の店の跡取りに考えていたはずですが、時計作りに魅せられた金太郎の背中を押してくれた。逆に言えば、粂吉が気持ちよく背中を押せる“金太郎像”を僕は演じないといけなかったんです。

今回、自分の役作りは、奉公先の主人・粂吉、その娘・浪子(吉川愛)、そして時間――この3つをどのように捉えるかがポイントでした。

力を抜いて役を演じるなかで唯一、力みを入れたシーンがあります。『それでも俺、時計なんです』と粂吉に時計作りへの道に進むことを宣言するシーン。不器用だけれどまっすぐな金太郎を、ここでは力を込めて演じきりました」

映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』においては、第47回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、演技力に定評があり、若手でも随一の呼び声がある水上。演技に対して緻密な戦略を練り、作品に臨んでいるということがよくわかる。

「泥臭くても、一生懸命。それこそ金太郎が人を惹きつけるところ。さらりとカッコよく決めてしまうのは違うと思ったんです。不器用だけどまっすぐでキラキラした金太郎こそ、リアルだと」

インタビューに答える俳優・水上恒司

実際、取材の受け答えにおいても、ひとつひとつ、その場面を振り返るように、噛み締めるように言葉を選んで、さまざまな感情を吐露してくれた。

話題となったNHKの朝ドラとは演技へのアプローチも異なったという。高校時代、野球に情熱を注いだのちに、魅了された演劇への道に進んだだけあって、向き合うベクトルは真っすぐなものに思える。

「朝ドラは、制作までに時間もあるので、じっくりと役作りに向き合うことはできます。でも、今回はかなりタイトなスケジュールということもあり、役作りの難しさはありました。

でも、演技をするということは、他人の人生を演じて、結果として作品に残していくこと。簡単ではないですけど、やりがいはあります」

そして、時間についても思いを馳せる良い機会になったと話す。

「正確な時間を共有するということが、時計によってできるようになったからこそ、僕たち日本人にも、“時間に正確であるべし”という道徳心が生まれたのだと思います。金太郎が与えてくれた恩恵は少なくないでしょう。

現代では時間に縛られるというような呪縛めいたものも、一方では感じられますけどね。

粂吉が金太郎に見せた懐中時計をきっかけとして、そのスケールの大きな“時間という概念”を感じ、その概念をベースに未来を担っていくものとして時計を生み出す。周囲を巻き込んでうねりを作り上げた金太郎の姿はすごい。やっぱり尊敬の念が生まれます」

そう改めて、時間の尊さを感じながら、自分の年齢と近しい金太郎へと思いを馳せる。

「僕は、『刹那』という言葉が好きなんです。作品にも出てきますが、この先どうなるかわからないという言葉。これは、良いことも悪いことも含めて、本当にその『刹那』ではわかることができないんです。

だからこそ、今ここにある“刹那”と向き合って、未来を見据えたいという気持ちがあります。僕は、その“刹那”で下した決断で後悔したということが、これまでの人生でほとんどないんです。失敗したとしてもそこには学びがある。その失敗がなかったら、気づけなかったこともありますから。

きっと金太郎もその“刹那”を大切に感じたからこそ、“時間の共有”が重要と考えたのかな、なんて思います。自分も金太郎を演じることで、改めて『刹那』の大事さに気づくことができました」

▶︎▶︎後編に続く。

■連載「NEXT GENERATIONS」とは
新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫る連載。毎回、さまざまな業界で活躍する10〜20代の“若手”に、現在の職業にいたった経緯や、今取り組んでいる仕事について、これからの展望などを聞き、それぞれが持つ独自の“仕事論”を紹介する。

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TEXT=髙村将司

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

STYLING=カワサキタカフミ

HAIR&MAKE-UP=Rina Kajiwara(HAKU)

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