ドバイに渡り活躍する、日本のビジネスパーソン。職種や渡航の経緯はさまざまだが、みんなが口を揃えて「思い切ってドバイに来てよかった」と言う。今回は、和包丁専門店を営む久富啓介氏がドバイを選び、そこで働く理由に迫った。【特集 熱狂都市・ドバイ】
和包丁を通してニッポンクオリティをドバイで伝える
切れ味、耐久性、握った時のフィット感……。職人技が光る日本の包丁は海外でも高く評価され、世界中の料理人にとって憧れの的でもある。
久富(くとみ)啓介氏が夫婦で営む「KUTO」は、ドバイで唯一の和包丁専門店。最高品質の和包丁を多く取り扱っており、ドバイ中の一流レストランやシェフたちからも広く知られた存在だ。
もともと日本の食品を海外に卸す商社に勤めていた久富氏。ドバイを含むさまざまな国のレストランとのつながりを深めていくなかで、和包丁に対するニーズ、ビジネスチャンスを強く感じていったという。
「海外での和包丁に対する評価は高い。ニューヨークやパリといった世界の食の主要都市には、必ず和包丁専門店があります。しかし、ドバイにはなかった。これは自分が売るしかないなと。それに、知り合いのドバイの料理人たちもみんな和包丁を欲しがっていたし、その願いをかなえたいと思ったんです」
2014年、ドバイに移住した久富氏は「堺」「関」「武生(たけふ) 」など有名ブランドの包丁を販売開始。自身の姓をもじった和包丁専門店「KUTO」をオープンし、2021年にオリジナルの包丁ブランド「富久(とみひさ)」も立ち上げた。
「うちに来るお客さんの80%はプロのシェフです。でも、若い駆けだしのシェフはお金がないから高い包丁を買えません。だから、高品質かつ比較的安価な『富久』をつくったんです」
久富氏は毎日店頭に立ち、さまざまな国の人たちに包丁の扱い方を説明する。一方、包丁の研ぎなどは久富氏の妻である文枝さんが担当している。
「お店のオープンに先駆け、妻が研ぎの訓練を受けました。私が包丁を売り、妻が手入れや修理を担当する。店が維持できているのは、妻の支えも大きい」
今ではドバイの一流レストランの多くが、久富氏が売る和包丁を使っているという。メイド・イン・ジャパンの底力を伝えていくため、久富氏は文枝さんと二人三脚で走り続ける。
My Dubai Episode
子供はいずれトリリンガル? むしろ日本語が一番心配
幼稚園に通う子供は外では英語、家では日本語で会話している。「最近は幼稚園でもアラビア語の勉強が始まったみたいです。家族との会話でしか使わないので、日本語の習得が一番心配です(笑)」
Favorite Item
KUTO/クト
住所:Shop No.1, Sheikh Majid Bldg‐Sheikh Zayed Rd
営業時間:10:00~19:00
定休日:土曜
TEL:56-477-6509
この記事はGOETHE2023年12月号「総力特集: ヒト・モノ・カネが集まるドバイ」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら