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2023.08.10

身長2メートル! 3年目で開花した、巨人軍再建のキーマン・秋広優人

松井秀喜の背番号55を継承する巨人の“若き大砲”、秋広優人がスターとなる前夜に迫った。連載「スターたちの夜明け前」とは

巨人・秋広優人

松井秀喜の背番号55を継承する巨人軍期待のホープ

3年ぶりのセ・リーグ優勝が期待されながらも現在4位とBクラスに沈んでいる巨人(2023年7月27日終了時点)。

坂本勇人、丸佳浩などのベテラン選手の力が落ちており、世代交代が急務となっているが、そのなかで希望の星といえる存在となっているのが秋広優人だ。

入団直後から身長2mという体格が話題となり、1年目から二軍では主力として活躍。そして迎えた3年目の今シーズンは4月下旬から外野の一角に定着すると、ここまで打率.298、10本塁打、31打点と見事な成績を残しているのだ。規定打席到達も目前に迫っており、このペースで行けばチームトップの打率をマークする可能性も高いだろう。

高校時代は4番、ピッチャーとして出場

そんな秋広だが、ドラフト5位という指名順位からもわかるように高校時代はそこまで高い評価を受けていたわけではない。

それにはいくつかの理由があるが、2年秋の東京都大会では早々にチームが敗退し、最終学年となった2020年はコロナ禍で公式戦が行われなかったというのが大きかったのではないだろうか。高校生の場合は3年生になってから大きく成長するケースも多く、そこでアピールの機会が失われたというのは秋広に限らず多くの選手にとってマイナスとなったはずだ。

ようやく秋広の名前がドラフト戦線を賑わせるようになったのは最終学年の7月を過ぎてからである。

身長2mという長身、そして投手としても野手としても高い能力を誇るということで徐々にその存在が知られるようになり、東東京の代替大会前には注目選手の1人としてスポーツ紙でも報道されている。

実際に秋広のプレーを見ることができたのは2020年7月29日に行われた東京成徳大高校との試合だった。

この試合で秋広は背番号3をつけて、4番、ピッチャーとして出場。投手としては1回、2回といずれもヒットで走者を許したものの、しっかり後続を抑えて4回を被安打2、四死球0、無失点と好投を見せている。

当時のノートには「ステップの幅は狭く、体が一塁側に流れるものの、長身の割に器用でコントロールも安定。(中略)下半身が使えるようになればまだまだ速くなる」と書かれており、投手としても非凡な才能を見せていたことをよく覚えている。

この日の最速は142キロだったが、投手としてトレーニングを積めば150キロ以上のスピードボールを投げる本格派になっていた可能性も十分にあっただろう。

もちろん野手としての能力にも光るものがあったことは確かだ。第1打席は死球で出塁すると、第2打席と第4打席ではいずれもセンターにツーベースを放ち、4番としての役割をしっかりと果たしている。当時のバッティングについては以下のようなメモが残っている。

「体つきはまだ細く見えるが、大きな構えで打席での雰囲気は十分。ゆったりとした動きでタイミングをとり、長くボールを見られるのが長所。(中略)スイングの軌道も体の近くからスムーズに振り出すことができており、強引に引っ張るのではなく、センター中心に打ち返すことができる。長身でリーチが長くても持て余しているようなところがなく、リストワークも巧みでボールと上手く距離をとれるのが良い。長身に見合う筋力がついてくれば面白い」

ただ、この時に放った2安打はメモにもあるようにパワーというよりもどちらかというと上手さが目立ったものであり、完全なスラッガータイプという印象ではなかった。ツーベースの二塁到達タイムは8.12秒(8.2秒台以下なら脚力のある基準と言われている)とまずまずのスピードはあったものの、守備位置もファーストということに不安を感じたことも確かだ。

開花したバッティング

先述したように、この時点では投手として勝負するという選択肢もあったはずである。

しかし巨人はチーム事情もあって入団当初から野手として育てることを選択し、低い指名順位にもかかわらず二軍では早くから中軸を任せたことで才能が大きく開花したことは間違いないだろう。

2023年7月17日のヤクルト戦で放ったホームランはライトを守るサンタナが打球を見失うほどの特大の当たりであり、高校時代には見せていなかったパワーを強く印象付けた。

また本格的な一軍デビューは2023年からでありながら、3割近い打率を残している“上手さ”の部分も見せているのは大きなプラスである。巨人軍再建のキーマンとして、後半戦もチームを牽引する活躍を見せてくれることを期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

■連載「スターたちの夜明け前」とは
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

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TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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