旅と建築を愛する岡田准一氏。ホテルと自身の仕事のあり方は不思議とリンクする。そこには、自らをつき動かす原動力が隠されていた。【特集 ホテル案内2023】
「ホテルをつくった人の、想いを知りたい」
「ホテルって、土地や地域を生かすことができる。だからそのホテルがどんな想いで建てられたのかを知ることが大事だと思うんです」
岡田准一氏はかつてラジオ番組の取材でスリランカを訪問、建築家・ジェフリー・バワの建てたホテルをめぐる旅をしたことがある。この建築は、海や山、自然と一体化していることが大きな特徴で、「インフィニティプール」を最初につくったのもバワだ。自然を生かす建築は、環境を破壊することなく、発展途上だった地域に、たくさんの雇用を生んだ。スリランカではこのバワのホテルが13存在し、貧困の地域では、ホテルを子供たちの教室として使うこともあった。
「取材の際、ホテルのGMの方や、スリランカの貧困格差をなくす活動をするNPOの方の話をうかがい、ホテルと土地の関係について知りました。以来どこか宿を訪れる際は、つくっている人の話を聞きたいと思うようになりました」
つくり手の想いを知る。それは「俳優・岡田准一」にとっても大事な作業だ。主演映画『最後まで行く』では撮影開始当時35歳の藤井道人監督とタッグを組んだ。
「彼は僕よりも若くて、そして日本映画界の希望、と言われている人物です。台本を読んだ時点で、絶対に面白くなるとわかりましたし、監督のやろうとされていることも明確でした。だから今回は、僕も一スタッフとして彼のやりたいことをサポートしていくのがベストだと思ったんです」
これまで数多くの映画で主演を務めた岡田氏、近年ではアクションシーンの構成を決める役割や、アクション指導も行う。自身もものづくりに対して並々ならぬ想いがあるからこそ、つくり手の想いを汲み、自分が前に出るべきか否かを判断する。
「もちろん前に出るべき現場もある。けれど今回は周りのスタッフも僕より若い方が多く、だからこそ彼らと監督がイニシアチブを取るべきだ、そう判断しました」
だが決して一歩引いていたわけではない。ロケ先のホテルでは、夜中までひとりアクションの動きをまとめ、監督にプレゼンするために準備を重ねた。
「ホテルに帰っても撮影中は完全にスイッチをオフにすることはありません。パソコンで言うなら、画面が消えていても、キーを叩けばオンになる、いつでも起動できる状態でいました」
撮影の長い期間、常に集中力を保ち続けられたのは、強い確信があったからだという。
「最高のスタッフ、キャストで、できうる限りのことをして、絶対に素晴らしいものができるのはわかっていましたから。この作品がどう評価されるのか、映画の世界で生きてきた自分は、それをしっかり見届けられたらと思っています」
本作が封切られたら、ひと息つきたい場所は? とたずねると、少年のように岡田氏は笑った。
「九州や北海道まで足を延ばしてみたいですね。人気の宿に泊まって『なるほどここはカニを大量に出してくれるのか』とか、人気の理由を体感したいです。でも過去に泊まって好きになった場所や人にまた会いに行って、話をするのもいいですよね」
誰かの想いとこだわりを知る、それこそが、岡田准一という人間を動かす原動力なのだ。
『最後まで行く』
2023年5月19日(金)公開
監督:藤井道人
出演:岡田准一、綾野剛ほか
交通事故を隠蔽しようとする刑事が、数々の最悪なできごとに見舞われるサスペンス・エンタテインメント。韓国で観客345万人を動員、世界各国でリメイクされた作品を、『余命10年』の藤井道人監督が満を持してリメイク。
岡田氏着用衣裳:ブルゾン¥880,000、ニットポロ¥124,300(ともにブリオーニ/ブリオーニ クライアントサービス TEL:0120-200-185) その他スタイリスト私物
【特集 ホテル案内2023】
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