『ゲーテ』毎年恒例のレストラン特集「ゲーテイスト」では小山薫堂が推薦するレストランの取材を担当する凄腕フードライターの小松めぐみ。フランスで食べ歩きをするためにフランス語を学び、懐石料理の神髄に迫るべく茶道を習うなど、美味探究に全力投球の彼女が、手土産のマイルールと笑顔をもたらす3品を紹介する。
手土産には贈り主のセンスと人間性が表れる
手土産は、贈り主のセンスや人間性がなんとなく表れてしまうもの。なので、自分が贈る際は、とても気を遣っています。本当に美味しいと思うものを選ぶのはもちろんですが、それと同じくらい大事にしているのが、手土産に適しているかどうか。暑い時期にオランジェット(オレンジピールのチョコレートがけ)を手土産にしたことがあったのですが、保冷剤は入れていたものの、持ち歩いているうちにチョコレートが溶けてしまって。あれは反省しました。
以来、形や状態が変化しづらく、安心して持ち運べることは必須条件に。職場にお持ちする場合は個包装で取り分けやすいもの、外出先でお渡しするなら、大き過ぎるものや重過ぎるものは避けるなど、相手の状況を考えてセレクトしています。
また、食の好みは十人十色ですが、私が好きなのは季節感のある料理です。旬のもの(たとえば冬ならフグ、カニ、海老芋、春なら山菜、筍、ホタルイカなど)を味わうと、季節の変化を楽しむ余裕が生まれ、心が豊かになります。というわけで、手土産を選ぶ際も春は桜餅、夏は水羊羹、秋は栗きんとん、お正月なら松や亀甲などの吉祥モチーフのものなど、その季節のものを選ぶようにしています。
編集者時代、初対面のベテランライターさんからいただいた手土産が、大変贅沢なおいしさで。すごいものをいただいてしまったと恐縮する一方、仕事で粗相のないようにせねばと気が引き締まりました。たかが手土産、されど手土産。私も、相手の心に残り、コミュニケーションの潤滑油になるようなものを贈りたいと思っています。
フードライター・小松めぐみとっておきの手土産3選
1.味、食べやすさ、ビジュアルと三拍子そろった手土産の雄
小鯛雀鮨 すし萬の「鯖姿すし」
ホームパーティーの手土産は、その会で飲むものによって変わりますが、日本酒の場合にお持ちするのは鯖寿司や押し寿司です。ホームパーティーには大勢の人がいろいろなものを持ち寄るので料理が余ってしまう場合がありますが、こういうお寿司は少し日持ちがするので、余ってもホストの方に翌日召し上がっていただけるだろうなと思って選んでいます(といっても、小鯛雀鮨 すし萬の「鯖姿すし」をお持ちして余ったことはまだないのですが)。小鯛雀鮨 すし萬は大阪寿司の老舗。「小鯛雀鮨」が有名ですが「鯖姿すし」も人気で、手土産としてお持ちすると知っている人には喜ばれ、知らない人にも説明すると興味を持たれ、食べると誰からも好評です。私にとっての外さない手土産です。ちなみに看板商品の「小鯛雀鮨」は見た目が紅白なので(赤は小鯛の皮の色)、新年の手土産として大変重宝します。
鯖姿ずし[6貫]¥2,160(小鯛雀鮨 すし萬 紀ノ国屋インターナショナル店 TEL:03-3409-1089)
2.F・L・ライトゆかりの市松模様を模した美しきクッキー
帝国ホテル「プレミアムクッキー缶」
スイーツが大好きなので、常にアンテナを張っています。ただ、味は抜群に良くても、賞味期限が短かったり、包装が簡単過ぎたりして、手土産向きのものは、実は少ないんです。そんな中、こちらは自信をもってお渡しできる逸品。おいしさはもちろんですが、帝国ホテル旧本館の設計者、フランク・ロイド・ライトが好んだという市松模様をイメージした詰め方がとても美しくて。目上の方にも安心して贈ることができます。
3.ラム酒香る栗がアクセントの大人の大福
HISAYA KYOTO 麻布十番店「栗大福 -ラム酒入り」
秋冬の手土産にぴったりなのが、高級栗に特化したHISAYA KYOTOの「栗大福」。香りの良いラム酒風味の渋皮栗入り、白あんとホイップクリームが調和した、贅沢な大人の大福です。ただし、6個入りまでなので、オフィスなど人が大勢いる場所にお持ちする時は、「HISAYAのどら焼き(12個セット)」の方を選びます。併設カフェでいただける作りたてのモンブランも大好きなのですが、持ち運びに気を遣うので、私は手土産にはしません。
小松めぐみ/Megumi Komatsu
1975年東京都生まれ。大学卒業後、ライフスタイルマガジンの編集部勤務を経て2000年に独立。学生時代はフランス料理作りに没頭し、就職後は茶懐石の原稿の書き方に悩んだのがきっかけで茶道を習い始め、現在は遠州流茶道上席師範に。本誌をはじめ雑誌やウェブで料理やお茶の原稿を執筆中。