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2022.10.17

日本茶を世界に! 中田英寿が見据える、そのポテンシャルとは

日本各地の茶農家を訪れ、日本茶の多様性や自然環境の大切さを学んだ中田英寿は、日本文化として茶を守り、農園を支える使命感に駆られた。産地の現状とデータを分析して見いだした「日本茶の可能性」とは─。

中田英寿

「世界でも戦える日本茶のブランドをつくる」

煎茶、ほうじ茶、抹茶などの日本茶は、中田英寿氏が注目する日本の文化のひとつ。毎月全国を巡っている中田氏は、日本のほぼすべての茶産地を訪れ、お茶にさまざまな品種があることや、土壌や気候が茶葉の味を決めることを学んだ。

「賞をとっているようなお茶の畑は日当たりがよかったり、土壌がよかったりします。これってワインと一緒だなと思った一方、お茶は同じ茶葉でも発酵させなければ緑茶になりますし、発酵させていくと烏龍茶にも紅茶にもなっていきます。要は加工によっても大きく変化します。そういうお茶の面白さに気づいたと同時に、産地の苦労や大変さも見えてきました。例えば日本では今、お茶の生産量はさほど落ちていないのに、お茶農家の数は、この50年で10分の1以下です(グラフ1上段左)」

どういうことなのか? 

「実はコンビニなどではコーヒーよりも、お茶類(緑茶、烏龍茶、紅茶など)のほうが量としては売れているんです。急須でお茶を淹れて飲む層は全体的に減っていますが、ペットボトルのお茶を飲む人は増えている(グラフ1下)。リーフ(茶葉で販売)の需要が減り、リーズナブルな茶葉を用いるペットボトル需要が増えた結果、茶葉の平均単価は下がっています(グラフ1上段右、グラフ2下)。結果、平地で大規模栽培ができる農家は機械を入れられるためどうにかやれていますが、生産性は低いがリーフ用の高品質な茶葉をつくる山間地域の茶農家の数はどんどん減っています。ペットボトル用のお茶は単価が安く、コストが見合わないこともあり、後継者が続かず、耕作放棄地が増えているという問題も各地で起こっているのです」

グラフ1

グラフ2

こうした状況に苦しむ農家を目の当たりにした中田氏は、日本茶の価値を見直すことが必要だと考えた。日本酒の魅力を日本、世界へと発信してきた中田氏だからこそ、日本茶は今以上の価値を持ち合わせていると確信していた。そして、それは日本の茶文化を守ることにつながる、と。そこから中田氏は、まず日本茶の市場データを集め、次のように分析した。

「日本茶の海外への輸出量は日本酒同様、右肩上がりに伸びています(グラフ2上)。つまり和食が世界での広がりを見せている結果、世界でのマーケット需要も伸びている。また、飲食店ではコロナや健康志向の高まりによりアルコールの消費量は落ちる一方、ノンアルコール飲料の消費量は増加している」

最高級の茶葉をブランディングする

今後もこの傾向が続くとしたら、アルコール販売で高い利益を上げているレストランでは、それに代わるノンアルコールの利益商材が必要となってくる。そこに日本茶の可能性があると中田氏は踏んだ。

「鮨や日本料理店などでは昔は水もお茶も無料でしたが、水は有料になったのにお茶は今もほとんど無料ですよね。一部の高級レストランは“ティーペアリング”を提供するようになってきましたが、使われているお茶の多くは中国茶や台湾茶。そこに入っていける日本茶のブランドがないんです。総合して考えると、飲食店にとって高い利益率が見こめる最高級茶葉をブランディングすれば国内でも海外でも需要がある、と思いました」

では食事中に飲むお茶は、どんなものがいいのか?

「単体で飲んで美味しいお茶と、食事に合うお茶は違います。例えば中国や台湾のお茶が食事中に飲みやすいのは、もちろん品種もあるでしょうが、製法として釜で炒った軽い味わいのお茶が多いからだと思っています。一方、日本独自の製法である蒸して旨味を強くした緑茶は単体としては美味しいけど、食中にはそれが食事を邪魔することが多々あります。そのため、ほうじ茶のような火を入れた軽いお茶が飲まれるんだと思います」

そうして、“食事に合う”をコンセプトに中田氏が手がけたのが「HANAAHU TEA(ハナアウ ティー)」だ。「旨味・苦味・渋味・酸味」などを食事に合うようにバランスよく設計。さらには、お湯の温度による味のバラつきを防ぐため、水出しで一番美味しくなるように茶葉をブレンド。水出しなのでオペレーションの煩雑さも解決。アルコール飲料に比肩するお茶のブランドをつくり上げた。

中田氏の目標はブランドをつくることにより、茶葉の単価を引き上げること。そして、日本文化としての“お茶”を世界に広めること。日本茶の文化と農家を守る中田氏の挑戦は、2022年秋に本格始動する。

Hidetoshi Nakata
1977年山梨県生まれ。サッカー選手としてW杯3大会連続出場。引退後は国内3000ヵ所以上の伝統産業などの生産者を精力的に巡り、世界に誇れる日本の文化継承に尽力する。旅で見つけた日本の本物(者)を伝えるプロジェクト「にほんもの」を展開。

TEXT=小松めぐみ

PHOTOGRAPH=林田大輔

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