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2022.09.19

大切なのは熱量を理解する肌感覚。yutori片石貴展のマンネリに陥らない経営のコツ

オリジナルブランドからタイムリーかつリーズナブルなアイテムを多く発表し、今若い世代から絶大な支持を集めるyutori。その代表取締役社長である片石貴展さんに、スピーディに変化する経営戦略を聞いた。連載「起業家の星」とは……

片石貴展さん

肌感を持って提案することの大切さ

日本から海外へ。若者を中心に人気を集め、急成長中のアパレル会社yutoriを経営する片石貴展さんが狙う、次の地はアジア。なかでも、韓国が有力候補だ。

「日本のファッションやポップカルチャーがどこまで通用するか未知数ですが、若者にとっては親和性が高い国なので、速度感のある展開が見込めると思っています」

yutoriで展開するオリジナルブランドの強みは、若者が欲しいアイテムをタイムリーかつリーズナブルに提供していることにあると語る片石さん。逆に言えば、買わない理由をいかに無くしてゆくことなのだとか。それは、SNSを利用した徹底したマーケティングに基づくのかと聞けば、そうではないとの答えが。

「もちろん、今何を若者が求めているのかを調査・分析はしますよ。しかし、ファッションは単に数値的な物差しで測れる世界ではありません。なんとなくカッコいい、なんとなくかわいい。そうした感覚的なマッチングも大切にしなければいけません。

それに、ユーザー自身が自分の欲しいものを100%理解しているわけではありませんから。そのために、同年代のデザイナーやスタッフによる、半歩先の提案を心がけています。社員の平均年齢は20代前半。ファッションに対する若者の熱量を、リアルタイムかつ肌感覚で理解出来るスタッフが揃っています」

片石貴展さん

yutoriのロゴマークは、上下を逆にすると「王者(Hojah)」と読めるようになっている。これは“TURN STRANGER TO STRONGER”というブランドのミッションを表したものだとか。

片石さん自身も、SNSだけでなく肌感をもって若者世代の感覚を日々捉えている。先日、下北沢に会社を移転したのも、そのためだ。

「もはや観光地化した原宿に対して、下北沢はまだ若者のリアルなカルチャーが残っている街です。再開発が進んではいますが、今でも地べたに座って長時間喋っていても怒られませんし(笑)。あとは下北沢以外だと、高円寺や歌舞伎町ぐらいですかね、街のカルチャーが残っているのは。もちろん、原宿にもまだ良い古着屋は残っていますけどね」

仕事も趣味も大事なのは“冒険家マインド”

アパレル会社として、まだまだ発展途上と語る片石さん。そんな中でも、昨今ファッション以外のことに興味を注いでいることがある。それが、アートだ。

「会社にもいくつか飾っています。最近も、7作品ほど購入しました。基本的には自分と同世代だったり友人になれそうな作家さんの作品を買っています。まだ世の中に見つかってない若い才能を応援したいので」

そこには、古着の面白さに目覚め、足繁く古着屋に通っていた頃の片石さんの姿が垣間見られる。

「やっぱりメジャーで色んな人に知られてる方より"インディーズ"な人を応援するのが僕の役割なのかなと。この『人と被りたくない』って思いは、古着好きの性でしょうね。いわゆるディグ的な感覚です」

片石貴展さん

オフィスの壁には、いたるところにアート作品が飾られている。写真は、20代のアーティストsumaさんの作品。

面白いかどうか。その追及にマンネリは大敵だ。片石さんが重要とする新陳代謝が、まさにカギとなってくる。

「会社も人も、成長し続けるためには、新陳代謝を受け入れる必要があります。極端な話、弊社で展開しているブランドは、消費されてゆく存在でもいいんです。若者のニーズは、日ごとに変化しますから。いつまでも追いかけっこしているような状況を、企業として安定性がないと見る人もいるでしょう。もちろん、リスキーなことはあります。でも、僕からすれば逆。変化に対してフレキシブルに反応し対応できる会社が、今後残ってゆけると思っています」

言い換えれば刹那的。だが、それによるヒリヒリとした感覚の連続が、自らのモチベーションになっているという。確かに、昨今のトレンドは変化が早く、リバイバルのサイクルも早い。柔軟性だけでなく、スピード感も求められている。それに対応するため、社内の体制も、トップダウンではなくボトムアップ型を採用する。

「各ブランドのクリエイティブは、個々にまかせています。ある程度の裁量権を渡すことによって、それぞれが自発的に提案し、積極的に取り組むようになります。当然スピードは上がるので、変化の早い若者のファッション感覚にも対応が可能です。失敗することもありますが、結果が担当した当人にダイレクトに伝わるので、その原因の分析もしやすくなります。その結果、スタッフのスキルアップスピードも早くなります」

片石貴展さん

スタッフに裁量権を渡すと、経験を積んだ後に独立を目指す人も増えてきそうだが、片石さんいわく「それでもウチに居続けたいと思ってもらえる場作りをするのも、僕の仕事です」。そんな片石さんは、数年以内での上場を目指すと語る。

「上場しない方が経営的には自由度は高いのですが、やはり規模感はどうしても小さく収まってしまいます。せっかくここまで来たのに、それでは面白くない。ただの学生サークル的なビジネスに留まらず、今僕たちがやっていることが社会のどこまで通用するのかを見てみたいんです。コロナ禍以降はアパレル業界では暗いニュースが多いなかで、僕らが業界でも若い星として応援してもらっているのでその分の恩返しとしても」

最後に、プライベートでやってみたいことを聞いてみた。すると、意外な答えが。

「う〜ん、バスケ・カラオケ・ボーリングですかね(笑)。高校生みたいでしょ? コロナ禍の影響もありますが、リアルな遊びがしたいんです。日頃はSNS漬けですが、やっぱり身をもって体験することも大切。今後海外進出を目論んでいるので、海外への旅にも沢山行ってみたいですね」

片石貴展さんの素顔が垣間見える一問一答!

Q26 仕事道具としてマストなものは?
スマホ。スマホ中毒です。

Q27 連絡方法は電話?ライン?メール?
LINE。メールとかすごく大変。

Q28 座右の銘は?
“Faith is the key”

Q29 仕事で成し遂げたいことは?
この勢いと楽しさのままどんどん登っていきたい。

Q30 対人関係で大切にしていることは?
笑わせること。

Q31 今まで出会った人のなかで、こんな仕事人になりたい!と思った人は?
いっぱい! 特に一緒に仕事してるクリエイターの方からはすごく刺激を受けています。

Q32 メンターはいますか?
父とZOZO創業メンバーである武藤さん。

Q33 リモートとリアルの打ち合わせをどう使い分けてる?
基本リアル派です。

Q34 人生のターニングポイントは?
高校生になって、はじめて原宿で古着を買った時。洋服や音楽などカルチャーへの入り口がその瞬間だった。

Q35 アイデアが湧く瞬間は?
人と話してる時と、シャワーを浴びてる時。

Q36 一緒に仕事したい企業は?
洋服と音楽はセットになってカルチャーなので、音楽に関わる仕事はもっとしたいです!

Q37 一緒に仕事したい人物は?
鈴木敏夫さんをリスペクトしています。

Q38 結婚相手に求めることは?
日々面倒くさいことがあっても許してください。すいません!

Q39 今の生きがいとは?
好きなことを好きな人と好きなだけやってること

Q40 喜怒哀楽は激しい方?
激しい。感受性豊かということでw

Q41 今の仕事を辞めたいと思ったことはある?
ないです。

Q42 生まれ変われるとしたら何になりたい?
バンドマン。満員のスタジアムとかでライブやってみたい!

Q43 10年後は何をしていると思う?
今の会社をずっとやってると思う。アジア中に会社もブランドも展開する。

Q44 一緒に働きたいと思う人はどんな人?
優しくて強くて面白い人たち。

Q45 今までにもらって嬉しかったものは?
たくさんありますよ!

Q46 夢を叶えるために大切なことは?
叶うと思うこと、叶ったと思って行動すること、信じることが真実です。

Q47 今、自分が抱いている理想(目標)まで何割達成している?
個人的な目標とかあんまりないタイプです。

Q48 これから身につけたいスキルは?
運転技術向上

Q49 あなたにとって仕事とは?
好きな人と繋がるためのもの。そのために自分が好きなことをやっていなきゃ。

■アパレル不況でも年商17億超え! yutori片石貴展が若者の心を掴み続ける理由

 

Takanori Kataishi

Takanori Kataishi
yutori代表取締役社長。1993年生まれ。2018年 インスタグラムアカウント『古着女子』を立ち上げ、初期投資0円の“インスタ起業”としてyutoriを創業。「9090」や「genzai」「PAMM」など複数のファッションブランドを運営。2020年7月、ZOZOグループへハーフジョインし、IPOを目指す。Forbes 30 UNDER 30 JAPAN 2020を受賞するなど、今最も注目を集めているアパレル会社経営者のひとり。
Twitter:@katap_yutori
Instagram:@yutorikun

■連載「起業家の星」とは……
志を高く持ち、夢を語り、世界に一石を投じるのは、いつの時代も若手の起業家たちだ。本連載では、未来を形づくるその仕事に迫り、明るい社会を期待せずにはいられない起業家の想いに光を当てる。

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TEXT=安岡将文

PHOTOGRAPH=デレック槇島(StudioMAKISHIMA)

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