PERSON

2022.09.01

3ポイントを狙う! バスケ日本代表・馬場雄大がプレースタイルを変える理由

今回はNBA入りを目指して2019年から海外挑戦を続けている馬場雄大に注目する。連載「アスリート・サバイブル」とは……

バスケ日本代表男子・馬場雄大

新たなスタイルの構築

不退転の決意で競技人生を懸けたチャレンジをスタートしたバスケットボール男子日本代表の馬場雄大(26)。シューターになるべく、新たな一歩を踏み出した。

「(日本代表監督の)トムさんのバスケは3点シュートを重視されるので、プレースタイルをガラッと変えるつもりでやりたい。海外でプレーするにあたっても外からのシュートは必須。バスケット人生を懸けて変わっていきたい」

馬場は従来、ドリブルでゴール下に切れ込むドライブを得意とするタイプの選手。今夏に東京五輪以来約1年ぶりに日本代表に招集され、トム・ホーバス監督(55)から「10回中7回ぐらいドライブするが、割合を逆にしてほしい。空いたら3点シュートを打ってほしい」と求められ、新たなスタイル構築に乗り出した。

ホーバス監督は現役時代にNBAホークスでプレーし、日本リーグではトヨタ自動車に所属して4年連続得点王に輝いたシューター。昨夏の東京五輪では女子日本代表の監督を務め、銀メダルに導いた。ゴール下に選手を配置しない5アウトのシステムを採用し、高確率の3点シュートを武器に世界を席巻。コートに立つ全選手に外からのシュートを求める。

馬場は日本代表合宿中は連日、全体練習後に指揮官とマンツーマンで3点シュートの練習に励む。中指と薬指でリリースする悪癖を矯正するため、指に輪ゴムを引っかけてボールを放つ特殊なトレーニングも導入した。

「今までは1人でシュートを打ち込んでいたが、それでは確率が上がらないと思った。トムさんのアドバイスはしっくりくることが多く、自信を持って打てるようになった。中指と薬指でリリースしてしまう時があって、そこでリリースすると(シュートが)右側のショートになる。輪ゴムを使うと成功率がめちゃくちゃ上がる。シューターだったトムさんならではの練習」

2022年8月13、14日に2日連続で行われたイランとの親善試合では第1戦で5本中2本の3点シュートを決めるなど19得点をマーク。第2戦も5本中2本の3点シュートを成功して両軍最多21得点を挙げた。チームも世界ランキング23位の格上(日本は38位)に2連勝。ホーバス監督からは「馬場の3点シュートは2試合連続で5分の2。成功率40%は悪くない」と評価された。8月25日のW杯アジア予選イラン戦では6本中5本の3点シュートを沈め、26得点。試合は敗れたが、シューターとして確かな存在感を示した。

馬場はNBA入りを目指して2019年から海外に挑戦。2019年夏のNBAサマーリーグにマーベリックスの一員で出場し、同年10月に傘下のGリーグ・レジェンズと契約した。2021-2022シーズンはレジェンズ、NBLメルボルン・ユナイテッドでプレー。2022年7月にはウォリアーズの一員としてサマーリーグに参加した。

ウォリアーズでは既存選手やドラフト指名選手、昨季傘下のGリーグチームでプレーした選手たちがロスター(チームの公式戦に出場できる資格を持つ選手)の半分を占めるなか、十分なプレー時間を得られずにアピールに失敗した。

「今回のサマーリーグを経て、次のステップに進むにはここで変わらないといけないという自覚がある」

プレースタイルを変えることに葛藤や戸惑いはなかった。ホーバス監督からは「外からのシュートがうまくならないとNBAには入れない。マインドセットできるかどうかが重要になる」と指摘されている。目標のNBA入りへ、3点シュートの精度を上げることは不可欠だ。

着実にプレーの幅を広げているが、理想はまだまだ高い。「いいシュートを8本ぐらい打って高確率で決めないと、次のステップはない。20年以上続けてきたスタイルを変えるのは簡単ではないし、すぐに変えられるか分からないがトライすることが大切」と力を込める。26歳で迎えた選手としての転機。果敢に3点シュートを狙う姿に“変化を受け入れた”という言葉はふさわしくない。“変化を楽しんでいる”という表現がしっくりくる。
 

Yudai Baba
1995年富山県11月7日生まれ。富山第一高を経て筑波大在学中の2017年にBリーグのA東京に入団。同年の東アジア選手権で日本代表デビューした。2019年夏のNBAサマーリーグにマーベリックスの一員で出場。同10月に傘下のGリーグ・レジェンズと契約した。2021-2022シーズンはレジェンズ、NBLメルボルン・ユナイテッドでプレー。富山第一高では八村塁(ウィザーズ)の2学年先輩。父・敏春氏もバスケの元日本代表。妻は女優の森カンナ。右利き。身長1m95cm、体重90kg。

■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

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TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=長田洋平/アフロスポーツ

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