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2022.07.21

【三好康児】堂安律や久保建英と比較されることについて

三好康児柴崎岳武藤嘉紀中島翔哉……。己の成長、その先にある目標を目指して挑戦し続けるフットボーラーたちに独占インタビュー。さらなる飛躍を誰もが期待してしまう彼らの思考に迫る。まずは、U17、U19、東京五輪、各年代別の日本代表に選出された天才レフティー。三好康児2回目。第1回はこちら。

矢印を自分に向ける 〜堂安律のこと、久保建英のこと〜

周りに左右されず、やるべきことを淡々と――。

絶えずシビアな生存競争が繰り広げられ、多くの困難が降りかかる異国で生き抜くコツとして三好康児が挙げたのは、メンタルの安定である。

しかし、口で言うほど簡単ではないだろう。チームメイトにポジションを脅かされたり、実際に奪われたりしたとき、黒い感情が湧き上がることはないのだろうか。あの選手より俺のほうが優れている、あるいは、俺を使わないなんて、あの監督はあり得ない、というような。

「もちろん悔しいという気持ちはありますよ。でも、それが他人に向くことはないですね。自分が活躍してチームを勝たせたい、ということは昔から思っていましたけど、もともと、そこまでの目立ちたがり屋でもないので(笑)」

そう、さらっと言ってのけた三好が引っ張り出したのは、小学生時代の記憶だった。川崎フロンターレU-12時代、三好は攻撃的MFのポジションを明け渡した時期がある。

のちに「アカデミーの最高傑作」と謳われることになる少年をベンチに追いやったのは、1学年下で、今年3月に日本代表のカタール・ワールドカップ出場に大きく貢献した三笘薫(みとま かおる)である。

「小学生の頃、薫とポジションが被って、薫が試合に出場して自分がベンチに座ることがあって。でもそれで、薫がどうとか、監督がどうっていうのはなかったですね。ただただ悔しいというか。そうした悔しさは、自分を奮い立たせてくれるいい感情だと思っていて。もっと頑張ろうって思わせてくれる」

子どもの頃から矢印をライバルや監督に向けるのではなく、自分に向けられるタイプだったそうだが、それでも過去を振り返ってみると、思い当たるきっかけもある。フロンターレU-12時代の恩師である高崎康嗣の言葉である。

「タカさんからは『他人のせいにしていてもしょうがないよ』って常に言われていましたね。あと、とにかく考えさせられた。自分がどう考えて、何を思ってプレーしたのか。急に練習を止めて『なんで、そこに立ってるの?』って聞かれて、『え、ここに立ってる理由?』って(苦笑)。小学生の頃なんて、そんなこと考えてないじゃないですか。でも、それくらい突き詰めて考えさせられたことが、今の思考に繋がっているんじゃないかなと」

オリンピックを振り返るより、ワールドカップを目指してやっていく

他人を気にせず、矢印を自分に向けるという三好のスタンスを思うとき、思い浮かぶのは2021年夏に開催された東京オリンピックである。

三好は’17年12月のチーム立ち上げ以来、中心選手として攻撃を牽引してきたが、オリンピック本番ではサブに甘んじることになった。

代わって攻撃をリードしたのが、すでにA代表の常連となっていた1歳下の堂安律と4歳下の久保建英だった。3人はいずれも左利きで、小回りの利くアタッカーだ。

大会期間中に行われたオンラインの囲み取材では、堂安と久保に関する質問を三好は何度も受けていた。聞いているこちらがいたたまれなくなるほどに。

しかし、三好は嫌な顔ひとつせず、「自分は自分」と繰り返していた。

「確かにその質問は多かったですけど、聞かれることが嫌だということはなかったですね。別に律やタケと勝負しているとは思ってないので。チームとして何ができるか。チームとして金メダルを獲ることが僕たちの目標だった。それを実現するために、自分が活躍してチームを勝利に導ければ一番嬉しいですけど、律やタケが活躍してチームが勝ったら、もちろん嬉しい。悔しい感情もありますけど、それはポジティブな悔しさというか、自分もやってやろうと思わされるので、比較されることは嫌なことではないですし、むしろ、彼らにあって自分にないものは何か、考えるきっかけになりましたね」

だから、東京オリンピックに関して今なお残る悔しい思いは、堂安や久保とのポジション争いに敗れたことではなく、チームが苦しいときに救えずメダル獲得を逃した経験、ということになる。

南アフリカとのグループステージ初戦で先発し、フランスとの第3戦で途中出場からゴールを奪った三好にとってのハイライトは、スペインとの準決勝だった。

0-0で90分を終えて延長戦を迎えたとき、チームを率いる森保一監督は疲労困憊の堂安と久保を同時に下げ、FWの前田大然とともに三好をピッチに送り出す。

しかし、三好はその期待に応えられなかった。チャンスを作りながらもゴールを割ることができず、115分に決勝ゴールを決められ、金メダルの夢が砕け散った。

「疲労を抱えた選手に代わって自分が出たのに、同じレベルを維持できなかった。自分が出て勝利に導くというイメージを持って準備をしていたので、結果を出せなかったのは不甲斐ないし、チームも負けてしまって、悔しかったですね……まだ、振り返れるほどの時間も経っていないので……」

あれから約10ヵ月が経ってもなお、消化できない悔しさを抱えているというわけだ。

「足りないものが多いなと感じたのが正直なところですね。ただ、ワールドカップが半年後にある。今はオリンピックを振り返るより、ワールドカップを目指してやっていこうと思っています」

TEXT=飯尾篤史

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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