周囲に造形物はいっさいない、自然に囲まれた「海」。そこに身を置き、遊びに興じる時間は、仕事とはまた違う充足感と喜びをもたらしてくれる。3人のエグゼクティブが語る、海遊びの魅力とは──。【特集 海を愛するエグゼクティブたち】
ユニバーサル ミュージック社長・藤倉尚が心と頭を"整える"、サーフィンのすすめ
契約アーティスト数は世界最大級、近年は藤井風、Ado、ヨルシカといったデジタル世代のアーティストを発掘し、音楽業界を席巻し続けるユニバーサル ミュージック。2014年に社長 兼 最高経営責任者に就任し、以来8年連続で増収を達成してきた藤倉尚氏が「最大のストレス解消」として大切にしているのが、サーフィンだ。
藤倉氏がサーフィンを始めたのは、社長に就任した直後。46歳の若き敏腕社長の誕生は、音楽業界で大きな話題となり、一躍時の人となった頃だった。
「ありがたく感じる一方で、自分なんてまだまだだという気持ちもあって。自分に活を入れるつもりで、新しいことに挑戦しようと思ったんです。そのひとつがサーフィンでした。その他の料理教室は1日でやめ、中国語も続かなかったけれど(笑)」
初めてボードに乗ったのも、"ホーム"にしているのも、アメリカ本社があるサンタモニカのビーチ。出張時は早朝、波に乗ってから本社に向かうという。
「サーフィンをしている間、頭にあるのは、目の前の波とどう対峙するかだけ。仕事を完全に忘れてリフレッシュできます。頭がクリアになるからか、陸に上がった後、いいアイデアを思いつくこともありますしね。おかげで、プレッシャーがかかる本社でのミーティングに、ニュートラルな状態で臨めます」
レコードからCD、ダウンロード、そして、今はサブスクリプションが主流になるなど、音楽業界は常に最先端にさらされている業界だ。その流れを、世間に先んじて取りこまなければ、取り残されてしまう。タフな業界だけに、頭と心をニュートラルにする術は、必須なのだろう。
「ボーダーレスやSDGsなど、今の時流はサーファーのライフスタイルに直結しているものが少なくありません。それを肌で感じられたのも大きかったと思います。サーフミュージックは、誰が聴いても心地よい音楽。このジャンルで、もっとスターが出てきていいと思いますし、発掘したい。サーフィン人口が増えれば、そのなかから音楽をより楽しんでくれる人も出てくると思うけれど、サーフィンはハードルが高いと感じる人が多いのかな。46歳からでも始められるんですけどね(笑)」
サーフィンがもたらした新たな音楽の扉。それが開くのは、もう間近かもしれない。
Naoshi Fujikura
ユニバーサル ミュージック 社長 兼 最高経営責任者。1967年東京都生まれ。洋酒メーカーを経て、ʼ92年、ポリドール(現ユニバーサル ミュージック)に入社し、多数の人気アーティストを見いだす。2014年より現職。ʼ19年、’21年、ʼ22年と米・ビルボード誌「International Power Players」に選出。