仕事で成功を収める経営者の多くが腕時計に情熱を注ぐのはなぜなのか? 時計がビジネスマインドにもたらす価値を探る。【特集 高級腕時計のシゲキ】
京都・新門前「米村」シェフ・米村昌泰氏の時計選びとは
料理人人生の集大成として、2019年に京都・新門前に「米村」をオープンし、日々奮闘する米村昌泰氏。若かりし頃、スタイリストを目指していた無類の服好きである米村氏にとって、腕時計選びとファッションは切り離せない関係にある。
「休日になると、今日はどんな服を着て、どんな腕時計をはめようかと考える時間が楽しい。出かけている間もずっと時計のことが気になってしまいます」
数十本あるコレクションのなかでもパルミジャーニ・フルリエの腕時計は、このところ着用頻度が増えているお気に入りだ。
「うちの店に来てくださる腕時計に詳しい方によくパルミジャーニ・フルリエの話をうかがってはいたのですが、なかなか購入するまでにはいたらなくて。ところが、昨年『トンダ GT』を買ってから、ブランドを見る目が180度変わりました。この腕時計はスポーティなデザインである一方、針の先端にいたるまで神経が行き届いて、ずっと眺めていても飽きないですね。服を選ばず何にでも合わせられるので重宝しています」
最近購入した「トリック エミスフェール レトログラード」は、スーツに合わせる機会が多い。
「黒い文字盤の腕時計はあまり買うことがないのですが、これは久々に欲しいと思えた1本。一見すると複雑に見えるダイヤルデザインですが、視認性が優れていて、時刻や日付表示が読み取りやすい。ちなみにパルミジャーニ・フルリエの時計は、エルメスがレザーストラップを製造していることでも知られていますが、とにかくクオリティが素晴らしくて、クラフトマンシップが感じられます」
神の手を持つ時計師とも称されるミシェル・パルミジャーニ氏の徹底した時計哲学が、米村氏の心を鷲摑みにしたようだ。
「朝から晩までくたくたになるまで働いて、家に帰って腕時計を眺めていると、どんなに疲れていても心身がリフレッシュされます。例えるなら、僕にとって好きな腕時計と触れ合える時間は、美味しい料理を食べた時に近い感動がありますね」
F・P・ジュルヌの「クロノメーター・レゾナンス」をはじめ、入荷を心待ちにする腕時計がいくつかある。
「毎回これで最後だと思っても手にした途端に次の1本が欲しくなるから、本当に切りがない(笑)。今では買い続けていくことが何にも勝る仕事へのモチベーションになっています」
Masayasu Yonemura
1963年京都生まれ。京都の老舗レストランでの修業を経て、独立後に「レストランよねむら」を開業。2004年には東京・銀座に進出し、独創的な料理が注目を集める。2019年には、新門前に「米村」を新規オープン。