幼少期からアフリカの人々の美しさに強烈に心惹かれ、23歳のとき単独で初めてエチオピアに渡った、ヨシダナギ。好きなものを追いかけ続けた結果、フォトグラファーとして活躍する彼女の生き方と作品は、若者を中心に指示され、写真展は1年で10万人を動員するなど、注目を集め続けている。「ゲーテ」本誌の本編では触れることができなかった、ヨシダ節が満載のこぼれ話をもう一杯。
ありのままで勝負する
等身大の自分を認めながら、無理をして大きく見せることをしない。我々はそのありのままに惹かれていく。そんなヨシダナギのオフタイムは、どのようなものだろうか。
「基本はオフなんです。仕事がなければ、本当に何もしないで、1日ケータイをイジってます。ゲームしたり、気になったものをポチったり(笑)」
オンのスイッチは突如入るという。それも他人が予想のつかないタイミングで。ヨシダナギのとあるエピソードをマネージャー氏が語ってくれた。
「ドラァグクイーンの撮影は、ヨシダ史上初の屋内撮影。つまりライティングが必要となることが想定されていたわけです。打ち合わせから撮影まで、特にライティングプランを何も考えてなかったようで、現地に向かう飛行機のなかで突然、ライティングどうしよう?ってなったんですよ。今それ?って(笑)。普通だったら、もっと前に準備するじゃないですか。結局、機内の弱いWi-Fiを駆使して一夜漬けでなんとか解決しましたけど」
この瞬発力と集中力が、まさにアフリカ好きが高じて突発的に、無計画に渡航した経験をもつ、彼女の生き様を象徴しているようだ。
「写真を勉強したうまい人には、どうやっても敵わないので、あくまで勉強しないというポリシーは今後も貫いていきます」
ありのままであろうとする姿勢と、研鑽を積んできた他のカメラマンへのリスペクト。これらが、ヨシダナギというフィルターを通して融合したように思える。やはり、独特な感性の持ち主だ。コロナ禍では海外への渡航がままならず、約2年半、作品に対してシャッターを押していなかったという。
「カメラマンを名乗っていながら、作品集よりも、エッセイなどの著書のほうがその数を超えてしまいました(笑)。なんだか世のカメラマンに失礼だな、なんて思ってしまいます。日本一コスパの悪いカメラマンなんですよ」
自重気味に話すが、人物を中央に配置し、作品集のタイトルのひとつともなっている「ヒーロー」さながらの圧倒的な構成力。それがヨシダ作品の大きな魅力だ。
「力士や歌舞伎役者とか、新たな被写体にもトライしてみたいです。クライアントがあれば、ですが(笑)」
どこまでもヨシダ節をのぞかせる。
「ここまで私がフォトグラファーでいられるのは、ひとえに人の力。私を拾ってくれた人、被写体になってくれた人、また、渡航や撮影に関わってくれたいろいろな人。人は財産。日々感謝。ラッパーみたいですね(笑)」
そんなヨシダナギの話題の偏愛エッセイ『贔屓贔屓(ヒーキビーキ)』
「好き」という衝動は、自分を、世の中を動かす。少数民族からうぶ毛やつむじ、サヨリの尻尾まで。自分が偏愛する「ご贔屓たち」を、綴った偏愛エッセイ。「好き」や「美しい」くらい自由でいい。生きにくい時代に自分らしくあるためのヒントにも。何気ない日常が愛おしくなったり、新しいアイデアが湧いたり……頭の中が自由になる1冊。
話題の偏愛エッセイ『贔屓贔屓(ヒーキビーキ)』より、担当編集がとくに贔屓にしている箇所を抜粋してお届け中。こちらからどうぞ。