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2022.05.26

わくわくさん・久保田雅人「芸術も保育も学んだことはない。社会科の先生になりたかった」──短期集中連載「Climbers 2022 – 春 –」

アスリート、文化人、経営者ら各界のトップランナーによる新感覚オンラインライブイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第4弾が、5月13日から3日間にわたって開催され、35人の仕事人が出演し、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回、わくわくさん/工作の伝道師の久保田雅人さんによる特別講義を一部抜粋して掲載。すべての講義を聴くことができるアーカイブ配信はこちら。※5月17日〜5月31日18時までの無料限定公開。【短期集中連載「Climbers 2022 – 春 –」はこちら】

学校の先生になりたかった

NHKの工作番組『つくってあそぼ』に、“わくわくさん”として23年間出演しました。視聴者から工作や芸術のプロと思われていたようなんですけど、芸術も保育も学んだことはありません。大学時代は、社会科の先生になりたかったんですよ。専門は日本中世仏教史。カタい学問をやっていたんです。

大学4年生になって、2週間、母校へ教育実習に行きました。でも、うまくいかなかった。先生という仕事は自分には無理だと感じるばかりで。実習を終え、教師になることをあきらめてしまったんです。

先生でなければ、自分には何ができるのか? 将来を模索しながら、いろいろな本を読みました。ドラマも見たし、映画もいっぱい見た。どこかにヒントが隠されているかもしれないなと思って。それで、ある日、本屋で立ち読みをしていた時に、劇団員募集の広告が目に入ったんです。「これだ」と思って応募し、オーディションを受けたら、なんと合格しちゃった。

わくわくさん、誕生!

その劇団というのは、「プロジェクト・レビュー」。声優の三ツ矢雄二さんと田中真弓さんが設立した規模の小さな劇団です。私は演技の経験がないにも関わらず、入団半年後にビデオアニメの主役の声優に抜擢。その作品は山寺宏一さんのデビュー作でもあったんですよ。私が主役で、山寺さんが端役。でも、実力が全然違う。半年後に再び山寺さんと共演しましたが、その時は山寺さんが主役で、私が端役でした。

それからは、小さな役をコツコツとやりました。死体とか、喫茶店のお客さんとか。エキストラ中心でしたね。そんな状況が激変したのが、平成元年の3月。団長の田中真弓さんのところに、NHKから「『できるかな』が終わるので、新しい工作番組を作りたい。若い男性でしゃべれる人、誰かいませんか」と連絡があったんです。田中さんにすすめられてオーディションを受けたら、結果は合格。“わくわくさん”の人生が始まりました。

番組でつくる作品は、すべて造形作家のヒダオサムさんが考案したもの。ヒダさんは『できるかな』でも造形指導を務めていた大ベテラン。指導は厳しく、僕が出したアイデアなんてすべて却下されてしまう。でも、番組へ注ぐ情熱が高く、「名指揮者」という印象を受けました。僕もなんとか、ヒダさんの期待に応えられるくらいの「演奏家」になりたいと思いましたね。

挫折を経験して、強くなった

プレッシャーは、ものすごく重かった。でも、何とか食らいついていこうと。番組が始まった頃は他の番組の仕事もしていましたが、すべて辞めさせてもらった。『つくってあそぼ』1本に専念したんです。

原動力になったのは、過去の挫折ですね。いちばんの夢であった学校の先生になる夢をあきらめたのだから、今度こそは成功をつかみたいなと。“わくわくさん”にすべてを賭けよう。その思いが、番組が23年間続くことになった一因だと感じます。

若い人に伝えたいのは、「人生、一度はくじけてください」。失敗しても、また考えればいいじゃないですか。挫折や失敗によって、心は磨かれていきます。

工作も同じです。自分で作ったものは、自分で修理ができます。壊してしまったという失敗を、直して蘇らせることで、物を大切にする心が生まれていくんです。

久保田雅人さんの講義全文を動画でチェック。※5月17日〜5月31日18時までの無料限定公開。

【短期集中連載「Climbers 2022 – 春 –」はこちら】

TEXT=川岸 徹

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