師匠か、恩師か、目を掛ける若手か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ「相師相愛」ともいえるふたりの姿をご紹介。第69回は、外資トップとプロSUPサーファー。【連載 相師相愛はこちら】
アドビ代表取締役社長神谷知信が語る原田俊広
学生時代にサーフィンを始めて、よく出入りするようになったのが、鎌倉にあるOKUDA STYLE SURFING。原田とは30年ほど前にここで出会ったんですが、当時からセンス抜群でうまかったですよね。そこからの大活躍は、仲間として本当にうれしかった。ニカラグアでの世界大会は、仲間たちとライヴ映像で見ていましたが、燃えましたよ。
外資系企業にいると海外での報奨旅行があったりするんですが、もっといろんな経験を積んでほしいと一緒に連れていったりしたこともあるんです。コスタリカでは上司にサーフレッスンをしてくれたりして、喜ばれましたね。
そして古い仲間たちも家族も集うサーフショップを、創業者から引き継いでくれたんです。ところが、コロナが来て。お店が大変になったんですね。心配で真っ先にサーフボードを買いに行きました。妻に内緒だったんですけど(笑)。経営者であり、現役の選手でもあり、いい刺激も、もらっています。自分も頑張らないとな、といつも思わせてもらえる存在です。
かつて東京に住んでいた時期は、いい波があると聞くと、朝4時に起きてクルマをすっ飛ばしてサーフィンした後にネクタイをして会社に行く、なんて時代もありました。今は鎌倉に住んで、しかもリモートワークが中心ですから、ちょっと気分転換に昼休みに海へ、なんてことができる。嬉しいですね。
いつかは仕事も引退しますが、サーフィンは、60代、70代の大先輩たちが現役バリバリで楽しんでいます。お互い年を取っても、そうやって楽しめるように今から備えておきたいですね。だから、海のスポーツはいい。今後も変わらず、いろいろ楽しんでいきましょう。
ウォーターマンシップ代表取締役社長原田俊広が語る神谷知信
中学の先輩なんですが、4つ違いなので顔を合わせたのは大人になってからなんです。サーフィンを一緒にやり、飲み会をやり、冬はスノボで山にも行って。今はお互い子供もいますので減りましたけど、とにかくしょっちゅう会っていましたね。いつでも海に入れていいな、とうらやましがられる一方で、僕から見れば先輩たちの活躍もまぶしかったし、何より一緒にいられて楽しかった。だから、みんなが集まれる場所を残したいと思って創業者からサーフショップを引き継いで経営者になりました。
神谷さんが社長になると聞いた時、海の上でこう言ったんです。社長としては僕が先輩なんで、いつでも相談してください、と(笑)。僕も神谷さんの社長就任は嬉しかったです。
忘れられないのは、結婚しようと思っている、と相談したときです。「お前が幸せだったらいいんだよ」とズバッと言われて。これで覚悟が決まりました。僕には兄はいませんが、お兄ちゃんみたいな、本当にありがたい存在です。
神谷さんの社長は、なるべくしてなったと思っています。絶対に人には見せませんが、何より努力家だから。会社の報奨旅行で海外に連れていってもらった時、同じ部屋に泊まっていたんです。僕に気を使わせないよう、暗がりの中で遅くまで仕事をされていました。でも素敵なのは、昼間は全力で遊び倒すことです。
今は、家族ぐるみでお付き合いをさせてもらっています。自宅にもよくお邪魔します。お互い40代ですが、70代、80代になっても、サーフィンをして、ワイワイお酒を飲んで、今のような関係がそのまま続いているような気がしています。楽しみです。
Tomonobu Kamiya(右)
1975年生まれ。青山学院大学卒業後、外資系大手IT、半導体、音響機器メーカーなどを経て、2014年にアドビシステムズ入社。‘21年4月より現職。
Toshihiro Harada(左)
1978年生まれ。15歳でサーフィンを始める。2013年、全日本SUP選手権大会優勝、'14年のSUP世界選手権日本代表。3度の日本一、4度の日本代表経験を持つ。