新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫るコーナーがスタート。第1回は、7ORDERの阿部顕嵐をクローズアップ。アイドル性とパフォーマンス力を兼ね備えた男性グループが群雄割拠状態にある昨今、7ORDER はバンド形態で活動し、熱狂を生み出している。ボーカルを務める阿部はグループの“顔”として、俳優としても気鋭の存在だ。3月25日公開の『ツーアウトフルベース』で長編映画初主演を果たした24歳に、リアルな仕事観を聞く。【後編はこちら】
20代で人生の基盤を作り、30代で世界へ
13歳で芸能活動をスタートした阿部顕嵐。経験豊富な10年選手だが、近年は舞台出演が多く、長編映画での主演は『ツーアウトフルベース』が初となる。
「他の仕事とそんなに変わらず、気持ち的にはフラットに取り組みました。仕事によって力の入れ方を変えるのは、僕は違うと思うので、すべての仕事に対して同じ力で取り組んでいます。経験上、力が入りすぎると良いパフォーマンスにならないということもあります。お芝居もライブも本番は絶対に力が入り過ぎてしまうので、リハーサルでは120%、本番はその半分の60%くらいの意識でやるようにしています」
阿部が演じたイチと、友人のハチ(板垣瑞生)は、高校時代にプロ野球入りが期待されるほどの選手だった。しかし、部員の不祥事で甲子園出場が取り消されてしまう。それから10年間社会のはみ出し者として生きてきた2人が、人生の一発逆転を狙う。
「イチもハチももったいないことをしているな、と思います。人生の基盤となる、一番大事な時期なのに」
阿部にとって2人は他人事ではないのだろう。芸能の仕事は表立った活動ばかりが注目されるが、彼は30代、40代、さらにはその先を見据えて、裏での鍛錬にも勤しんでいる。
「30代で、全世界で見てもらえるコンテンツに出ることが夢のひとつです。音楽でも、俳優活動でも、20代で達成しないといけないことがたくさんあります。今はNetflixなどがあるので、実現の可能性はやり方次第。絶対に叶えてやろうと思っています。"アジア人を起用するならこいつだな"と思われる人になるために、今はアクションや殺陣、馬術などのトレーニングをしています。馬術はまだまだ未熟なのですが」
尊敬する俳優は、日本人俳優として世界で活躍し、尊敬されている真田広之だ。
「世界で活躍されていて格好良いですし、凛としていて素敵です。真田さんが2~3年前のインタビューで『もう少ししたら弟子を育てようかな』とおっしゃっていたので、ロサンゼルスのご自宅の玄関で出待ちするか、映画祭のレッドカーペットのときに志願しようかなと考え中です。ネット時代だからこそ、リアルや生であることに価値がありますし、直接足を運んだ方が誠意が伝わると思います」
グループにおける“顔”担当で“とんかつ博士”?
7ORDERにおける自分の役割について質問すると、冗談めかしながらも、恵まれた容姿をきちんと生かさなければという意思が伝わってきた。
「僕は“グループの顔”として、先頭に立って切り開いていかなければいけないと思っています。表に出る役割と、顔担当と(笑)、2つの意味で」
とはいえ、主体はあくまでも自分にある。
「俳優業は自分の表現を追求する場所です。自分の活動のコアは自分で、グループの名前やお金は後から付いてくるものだと思っているので、個人の仕事では自分がやりたいことや、自分に求められているものを表現することを大事にしています。特に俳優の仕事は求められないことにはできないので、需要と供給のバランス感覚は常に頭に置いていますが、たくさんやっていきたいと思っています」
自分から発信できる"やりたいこと"とは?
「自分が好きなものや趣味を発信して、見たい人が見てくれたらいいなと思案中です。ゲーム配信とか、とんかつについての配信とか。僕はとんかつが大好きでめちゃくちゃ詳しいので、全国のとんかつ屋を回ってYouTubeで配信したいんです。いろいろと食べ比べて、自分の好きなとんかつを伝えていけたらなって。お店によってお漬物も違いますし、キャベツも切り方で全然変わってきますし、豚肉の種類もいろいろありますし。『三元豚は3つの豚を配合しているんだよ』みたいなこともお伝えしたいです。とんかつを食べたいと思った人はとりあえず僕のYouTubeを見に来る、くらいの知名度になりたいです」
阿部顕嵐式SNS活用術
LINEとInstagram に続き、2022年2月13日にTwitterの個人アカウントを開設した。それも"発信する"という動きの一環だろうか?
「グループとは別の僕の個人活動が、僕のファンの方々に届きづらいなと思っていたんです。僕の情報をキャッチはできるけれど、発信する側で整理ができていない状況に、ファンのみなさんのフラストレーションが溜まるだろうなと。今回の映画の宣伝をきっかけに、僕個人の情報をメインに、僕自身もつぶやきますよ、というスタンスでTwitterのアカウントを活用していきたいです」
各SNSの特性を踏まえ、発信する内容や使い方に変化をつけているという。
「TwitterやInstagramを使うときは、自分もそうですけど情報収集をするという目的や、外の物や人を見る感覚、周りから見られているという意識があると思うんです。LINEは身近な人と連絡するツールなので、登録してくれている方の生活の一部に入り込めるところが素敵だなと思っていて。だからこそ、思い立ったときに『雪が降ってきた』とか『今日何を食べた』とか、ラフなLINEを送るようにしています。
今の時代、考えてやると意外と良くないというか、敷居の高いものに対しての反応が鈍る気がするんです。自分を身近に感じてもらえるように、ラフさは大事にしています。Twitterはまだ情報発信しかしていない状態で、Instagramはバキバキに格好つけています(笑)。それがInstagram本来の使い方かな、と思うので」
【後編はこちら】
『ツーアウトフルベース』
甲子園の夢に破れて以来、10年間も自堕落な生活を送るイチとハチ。どん底状態から脱出するために、ドラッグとアメ車に手を出した2人は、絶体絶命のピンチに追い込まれる。青春の禍根を引きずる男2人の最悪な一日を描く、クライム&青春エンターテインメント。
監督・脚本:藤澤浩和/脚本:内田英治/出演:阿部顕嵐、板垣瑞生(2022年製作/97分)
3月25日(金)全国ロードショー