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2022.03.11

【西野亮廣】意外にみんなわかっていない!?「ヒットするサービスと、面白いサービスは違う」──連載「革命のファンファーレ2」Vol.33

毎度お騒がせしております。キングコング西野です。今回の記事は、毎朝voicyという音声メディアで配信している「#西野さんの朝礼」でお話したことから、編集して紹介させていただきます。(※今回の記事を音声で楽しみたい方はコチラ
今日は、『ヒットするサービスと、面白いサービスは違う』という話です。

【連載「革命のファンファーレ2~現代の労働と報酬」】

第33回 いつの世も説明不要なシンプルなサービスしかヒットしていない。ただし、そのサービスは、ものすごく面白い人達が作っている!

「こねくりまわしたサービス」はヒットしない

まず、自分のスタンスを明らかにしておくと、「ヒットするサービスと、面白いサービスは違う」というのは、「売れているものは面白くない」と翻訳されてしまうリスクを孕んでいると思うのですが、僕は、そうは思っていないです。

たとえば、「お笑い芸人」なんかは顕著で、売れている芸人さんはすべからく面白いです。
どれだけ御託を並べようが、どれだけ立場がある人であろうが、「笑いが起きなかったらアウト」という、誰にでも判断できるジャッジポイントがあるので、そこはもう間違いない。
「いやいや、あの芸人、そんなに面白くないけど」と思う人がいるかもしれませんが、テレビ局側や劇場側に「面白くない芸人を起用するメリット」なんて一つもないわけで、よくよく見てみると、その芸人さんが「パス」を出していたり、「リアクター」になっていることで、笑いのキッカケを作っていたり、あるいは、笑いを大きくしていたり、とにもかくにも必ず「笑い」がそこに絡んでいる。
売れ続けている芸人さんは本当に面白いなぁと思います。

あと、漫画でいうと『ドラゴンボール』は面白いし、『スラムダンク』も面白いし、『呪術廻戦』も面白いし、映画でも『君の名は。』は面白いし、『パイレーツ・オブ・カリビアン』も面白い。
中学生の頃は「フランス映画が好き」とか言ってたのですが、当時、それは完全に嘘で、ポジションを獲得するための好みで、僕、売れているもの、結構、好きです。

なので、今日の話は「売れているものはダメだ。売れていないものにこそ本質がある」みたいな話ではありません。
その上で、『ヒットするサービスと、面白いサービスは違う』という話なのですが、僕、どういうわけか事業の相談というか、意見を求められる機会が多くて、「僕なんかに相談して大丈夫なのかな?」と思いつつも、求められたからには、正直にお答えしているんですけど、
なんか「面白いサービス」をやろうとする人が多いんです。

嫌な言い方をすると「こねくりまわしたサービス」です。
「これが、こうなって、ここで、こうなった時に、こういう運動が発生するので、このタイミングでマネタイズをして…」みたいな「伏線回収系の小説」のようなやつです。

そりゃ、やるからには「面白いサービス」をやりたくなるのは、僕も痛いほど分かるのですが、僕自身、「結果的にココとココが繋がって、鬼バズりした」みたいな経験はあっても、最初から二発目のパンチや三発目のパンチを用意していて、それが見事に打てた試しって、ほとんどないんですね。
「3連コンボが決まってから、それをまた再現できるように、環境を整える」ということが多いです。

僕がシャレで作ったサービスの中だと、一番面白いのが『レターポット』かなぁと思うのですが、「お金と言葉って性質が似てるよね」というところからスタートしているサービスなので、サービスというよりも、もはや表現活動に近い。
なんかもう「説明込みで面白い」というものなので、こういうものはヒットはしないですよね。

一方で、これもまたシャレで始めたサービスなんですけども『キンコン西野のサイン本屋さん』
という、「キンコン西野がサイン本の注文をとって、キンコン西野がサインを入れて、キンコン西野が梱包して、キンコン西野が郵便ポストにブチ込む」という、ただの根性だけで回している「アイデアの欠片も何もないサービス」があるんですけども、実はコレ、たいした宣伝もしていないのに、ず〜っとご利用いただいているんです。

サービス内容は面白くもなんともないですけども、超ロングヒットなんです。

「単純なサービス」を今の時代のやり方でやる

じゃあ、この話の流れだと、「面白いことをするな。説明が要らない簡単なサービスだけをしとけ」となりそうなのですが、そうではなくて、僕の言い分は「面白いことができる脳ミソを、説明が要らないサービスを作ることに使った方がいいんじゃね?」です。

サービスを作る時に、ついついこねくり回したくなる事情はあって、それというのは「単純なサービスはもうすでに世の中にあるから」です。

あるんです!

おっしゃるとおり、たしかに世の中にあるんですけども、その「すでにあるような単純なサービス」を、今の知識、今の時代のやり方で、やるんです。
今の知識、今の時代のやり方でやれば、必ず違うものができるから。

「ちびっこ電話相談室」が「おもいっきり生電話」になり、「ひろゆきサンのYouTubeチャンネル」じゃないですか。
「キューピー3分クッキング」が「クックパッド」になり、「クラシル」になってるじゃないですか。

いつの世も説明不要なシンプルなサービスしかヒットしていなくて、ただ、そのサービスは、ものすごく面白い人達が作っているよ」というのが本質だと思うんですね。

なので、例外もありますが、「面白いサービスを作ったんですけど、あまり使ってもらえなくて」という相談に対しては、毎回「複雑で面白いからだよ」と思ったりします。

最後にこれだけはお伝えしておきたいのですが、今日は便宜上、「面白い」と「ヒット」を対にして喋りましたが、普段の僕は「ヒットしている分かりやすいサービス」や「ヒットしそうな分かりやすいサービス」を『面白いサービス』と呼んでいて、「複雑でユニークなサービス」を『あんまり面白くないサービス』と呼んでいます。
少しややこしいですが、そこんとこ夜露死苦!

西野亮廣氏ポートレイト

西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。

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TEXT=西野亮廣

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