1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウエアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた熱き男たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「男を起動させる眼鏡#40」。
PERSON 40
俳優/佐藤浩市
「眼鏡には強い力がある」
普段はなるべく眼鏡をかけないようにしているという佐藤浩市氏。といっても視力がそれほどよいわけではない。もちろん自動車を運転したり、本を読んだりする時は眼鏡が必要なのだが、どういう訳だか「なるべくかけたくない」のだそう。
「若い頃から、街中を歩くのにサングラスをかけてっていうタイプでもなかったんです。周囲からも騒がれないから、全然大丈夫ですよ。気配を消しちゃえばいいんだから。眼鏡をかけないというのは、役者という仕事とも関係があるのかも。レンズの反射とか映りこみを気にしながら芝居をするのが嫌だったんですよね。もちろん役柄で必要なら眼鏡もかけますよ。それに実は結構持ってるんですよ、眼鏡。人からプレゼントされることもありますし、親父の形見分けでもらった眼鏡もありますし」
眼鏡が嫌いなのではない。むしろ眼鏡の効果や強さを理解しているからこそ、眼鏡そのものに対して真摯に向き合っているともいえる。
「人間ドラマとしてしっかり背景があり、その役柄に必然性があれば、もちろん眼鏡はします。いい意味で眼鏡には、演出効果がありますから。でもそうじゃない場合は、ちゃんと自分で眼鏡をかける、かけないを決めたい。例えば、2000年の映画『ホワイトアウト』でテロリストのリーダーを演じた時は、娯楽映画ということもあったし、“出オチ”というわけじゃないけど、一目見て観客にパッとキャラクターを読み取ってもらうビジュアルを作るためにサングラスをかけさせてもらいました。それくらい眼鏡には強い力がある。僕らがデビューした1970〜'80年代は、松田優作さんがかけていた目元が見えないくらいレンズの色が濃いサングラスが印象的だった。目の表情を見せないで演技するというのが、カッコよかったね」
今回選んだEYEVANの「Danny-R-SUN」は、小ぶりなウェリントンタイプのサングラス。ハットに合わせるということもあって、細いフレームで軽やかに見せることを意識した。テンプルなどにはβチタンを使用しているので、軽いのに丈夫。そこに薄いブルーのレンズを合わせている。
「今はマスクが必須な時代だから、サングラスであっても目元が透けて見えるくらい色が薄いレンズが主流みたいだね。眼鏡は自分自身をアピールするものでもあるし、生活必需品でもある。使う人によって、あるいはその時々によっても、とらえ方が変化する。眼鏡って不思議なものだよね」
キャリアを積み上げてきたからこそ、活動のフィールドを広げる新しいチャレンジもまた楽しい。佐藤氏は昨年末に、キャリア初となるヴォーカル・アルバム『役者唄 60 ALIVE』を発表した。
「今日だって、この撮影の前に、宇崎(竜童)さんと木梨(憲武)、中井(貴一)と歌ってきたよ。みんなジジイだし、馬鹿だなって思いつつも、そういう面白さが伝わってくれればいい。こんなジジイたちが遊んでるんだなって。それが同世代に対しても、若い世代に対しても刺激になればいいんじゃないのかな。それこそ昔のような濃い色のサングラスをかけて、目の表情を見せないで演じてみるのだって、この時代だからこそ面白いかもよ」
Koichi Sato
1960年東京都生まれ。’81年に『青春の門』で映画デビュー。同作で第24回ブルーリボン賞新人賞を受賞。以降、映画、テレビドラマと多数の作品に出演し、’94年に『忠臣蔵外伝 四谷怪談』、2016年に『64‐ロクヨン‐前編』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞している。今年も5月に映画『20歳のソウル』、短編映画制作プロジェクトである『MIRRORLIAR FILMS S2』の三島有紀子監督作品「インペリアル 大阪堂島出入橋」に出演する。また現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では上総広常役を演じる。
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EYEVAN Tokyo Gallery TEL:03-3409-1972