Passionable(常熱体質)とは、Passionとableを組み合わせた造語。仕事や遊びなど、あらゆることに対して常に情熱・熱狂を保ち続けられる=”常熱体質”な人を脳科学者である中野信子さんが、日本の歴史上の人物のなかからピックアップした連載のまとめて振り返る。「常熱体質であり続けるために必要なこととは何か?」。その秘密を脳科学の視点から解き明かす。
新奇探索傾向を味方につける/Key person 島津重豪
新しいものや冒険を面白がる気持ち、旺盛なチャレンジ精神はビジネスの成功にはもちろん、充実した人生を謳歌するためにも重要な資質といっていいでしょう。しかし、スリルや冒険を過剰に追い求めすぎてしまうと、時には手痛い失敗にあってしまうことも……。
リスクを冒してでも新しい物事に挑戦しようとする性質のことを「新奇探索傾向」といいます。人の脳内では快感を得た時にドーパミンが分泌されます。ドーパミンは報酬系の神経伝達物質。新奇探索傾向が高い人はその快楽が癖になっていて、常に新しい刺激を追い求め続けるのです。
そういった人物として真っ先に私の頭に浮かんだのは、江戸時代後期の大名である島津重豪(しげひで)です。1745年生まれの薩摩藩第8代藩主で、幕末期に名君といわれた島津斉彬(なりあきら)の曽祖父にあたります。鎖国の世にありながら西洋文化を積極的に吸収し、数々の開明的な政策を実施したことでも知られています。またその一方で並外れた浪費家でもあり、金に糸目をつけずにひたすら西洋の贅沢品を蒐集したそうです。
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モチベーションを上げる技術/Key person:大友宗麟
組織のリーダーの仕事で最も重要なことのひとつは、チームの士気を高めることでしょう。士気の高さはビジネスの成果に直結します。その方法として有効なのはリーダー自身のモチベーションを上げること。組織はよくも悪くも上に立つ人間の影響を受けるので、トップの熱意は周囲に伝播します。裏を返せば、リーダーのモチベーション低下はそのまま組織全体の衰退にもつながってしまうわけです。
戦国時代のキリシタン大名、大友宗麟をご存知でしょうか。豊後国府内(現在の大分県大分市)に生を受けた宗麟は1550年に大友家当主となると、立花道雪(どうせつ)や高橋紹運(じょううん)といった優秀な家臣にも恵まれ、破竹の勢いで勢力を拡大。その10年後には九州の約80%を支配下に置き、大友家は全盛期を迎えました。しかし、そんな前半生とは一転、後年は領国経営の意欲も意思も失い、ひたすら信仰にすがって生きるようになります。戦があっても戦場に行かずに後方で礼拝に明け暮れる。そんな姿に家臣たちは反感を募らせ、領民の反乱も相次ぎ、結局島津氏によって滅亡寸前まで追い詰められました。当主の急激なモチベーションの低下が領内の混乱を招き、それが引き金となって大友家は衰退していくことになったのです。
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ビジネスと教養の親和性/Key person:蒲生氏郷
テクノロジーが日進月歩で発展を続ける現代では、何事にも効率が優先し、即効性のある知識ばかりがもてはやされ、教養は軽視される傾向にあります。しかし、一流のビジネスパーソンを目指すのであれば教養は欠かせません。効率ばかりを追い求めていると、ものの見方がどんどん短期的、表層的になっていきます。
また、教養のない人はどんなに仕事ができたとしても周りから尊敬されることはありません。真の意味で成功を収めているリーダーたちはみな例外なく、幅広い知見や教養を身につけているもの。教養とは一見、仕事の成果と直接的な関係はないと思われがちですが、新たなアイデアのもととなり、さらには豊かな人間力を育み、周りからの尊敬を集めることにつながるのです。
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