魂を揺るがす祈禱が経営者の運気を上げるパワースポット
祈願者が内陣(ないじん)に入り、本尊の阿弥陀如来(あみだにょらい)の前に座ると、ほどなくして、住職の祈禱が始まる。朗々として威厳のある声音が徐々に高まり勢いを極めていく。タンタンタン、タンタンタンとリズムを刻む太鼓の合間に、住職の気合溢れる大音声が響く。まるで身体の芯を貫く迫力で、気づくと、心身が揺さぶられているような感覚に陥っている。
京都東山にある「即成院」の平野雅章住職による祈禱が、数々の企業を上場させているという。2003年以降、経営者100人以上を「即成院」に案内してきたベネフィット・ワン代表取締役社長の白石徳生氏は言う。
「この寺は上場や株価上昇がかなう寺といわれていて、僕がお連れした経営者の多くが、実際に願いをかなえているんです」
経営者の間でこの事実が伝わると、「次はうちも」と祈禱希望者が増えていったそうだ。
「この25年ほどの間にたくさんのご祈禱をさせていただきました。そのうち何人の方が希望をかなえられたかは正確にはわかりませんが、多くの企業様が、お礼参りをされているのは事実です」と平野住職。なぜそれほどまでのご利益があるのか。
「まず、ここへ来られる方はもともと運気の強い方です。仏様も、そのような運気のある方をここへ呼ばれる。お互いの想いが呼応してよい結果が生まれるのでしょう」
「即成院」は、皇室ゆかりの寺として知られる「御寺泉涌寺(みてらせんにゅうじ)」の塔頭(たっちゅう)である。正歴(しょうりゃく)3年(992)に藤原頼通の三男・橘俊綱が建てた光明院を始まりとし、明治時代に現在の地へ移った。現世極楽浄土と呼ばれる本堂内陣の本尊・阿弥陀如来と二十五菩薩(ぼさつ)は重要文化財。平家物語で語られる弓の名手・那須与一(なすのよいち)の墓が本堂裏にあることでも有名だ。
平野住職は、高野山で修行を終えた後に「御寺 泉涌寺」に奉職し、2012年以降は、「即成院」の住職に専念。穏やかながらも気力溢れるパワフルな人柄に誰もが惹きつけられる。
「本来、お寺での祈禱は、仏様に向かって読経を唱える住職がいて、祈願者はその後ろからご本尊を拝むものです。ところが、私どもでは祈願される方には、より運気のよい内陣、つまり仏様と私の間で祈禱を受けていただきます」
祈願者は、自分の背後から祈禱を受けることで、より強い運気に満たされるというのだ。
また、ここでの祈願は上場ばかりではない。本尊を囲む二十五菩薩は、それぞれ琵琶や笙(しょう)などを手にする様子から“仏像のオーケストラ”と呼ばれ、音楽や芸能の能力を伸ばすご利益があるといわれている。ゆえにミュージシャンや俳優など芸能に関わる参拝者も多い。さらに25体のなかの獅子吼菩薩(ししくぼさつ)像は、その柔らかな表情から、「ほほえみの菩薩」といわれ、女優やモデル、化粧品会社など美を願うプロが参拝する人気菩薩である。
「ヤマノビューティメイトグループの山野幹夫社長や、ベクトルの西江肇司会長らもご案内しました。皆さん、お連れした後に上場や株価上昇を果たされています」と白石氏。毎年2月の節分の頃には、60人ほどの希望者を連れて京都を訪ね、「即成院」の祈禱のほか、パワースポットを巡る旅を企画する。
「京都は美味しい料理屋も多いし、花街という独特の文化もある。祈禱で力をいただくだけでなく、仕事を離れゆったり過ごすことができます。みんなで一緒に3日ほど滞在することもあります」と白石氏は、京都での安らぎも目的のひとつと話す。
ただし、上場祈願や株価上昇を含めた内陣での祈願は、紹介制。まずは、紹介されて内陣に座ること。経営者の願いはそこから始まるのかもしれない。
SOKUJYOIN
住所:京都府京都市東山区泉涌寺山内町28
TEL:075-561-3443
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Norio Shiraishi
1967年東京都生まれ。’96年パソナグループの社内ベンチャー第1号として、前身のビジネス・コープを設立。2000年ベネフィット・ワン代表取締役社長に就任。福利厚生サービスを核に、インセンティブ、CRM、ヘルスケアなど幅広く事業を展開する。