PERSON

2022.01.08

【オカダ・カズチカ】「スーツを着て心を整える」──新刊『「リング」に立つための基本作法』Vol.9

2022年に創立50周年を迎える新日本プロレス。団体を牽引するプロレスラー、レインメーカーことオカダ・カズチカが自身のポリシーやプライベートを綴った『「リング」に立つための基本作法』が発売中。そのなかから一部を抜粋して紹介する。

オカダ・カズチカ

プロレスラーだからこそスーツを着る理由

タイトルマッチの日はスーツを着て会場に入る。

それだけで厳かな気持ちになるからだ。気が引き締まる。デザインやブランド、色は問わない。とはいえ、どんなスーツでもいいというわけではない。

まず、僕の場合、身長が高く、筋肉もある。大胸筋も、大殿筋もパンパンに張っているので、オーダーメイドしか着られない。細かく採寸して、丁寧に仕立てていただく。

一時期は、クローゼットに何着もスーツがあった。しかし、サイズだけでなくデザインや色がほんとうに自分に合うスーツは限られてくる。

そこで、あまり着ないスーツは、思い切って処分した。ネクタイもできるだけ減らした。

その結果クローゼットに残ったのは、無地やストライプなど、シンプルなデザインのものばかりだ。色は黒、ネイビー、グレーを大切に着るようにしている。生活全般をそういう無駄のないスタイルにしたい。そんな気持ちになっている。そのうえで、今あるものをいかに工夫して着こなすか─が服装においての課題だ。

「リングに上がったら自分が一番だと思え」

「プロレスラーはカッコよくあれ」

それが闘龍門のウルティモ・ドラゴン校長の教えだった。

事実、メキシコで、校長はいつもスーツをびしっと着て会場入りしていた。カッコよかった。

メキシコにはルチャリブレの聖地が二つある。アレナ・コリセオとアレナ・メヒコだ。メキシコ修行時代、僕はアレナ・メヒコに校長の付き人として行っていた。

1956年に開場したアレナ・メヒコのキャパシティは約1万6500人。日本武道館よりやや多い。1968年開催のメキシコシティオリンピックでは、ボクシングの会場として使われた。オリンピックの後は、メジャープロレス団体、CMLLの本拠地でもある。

メキシコには、ミル・マスカラスやエル・カネックなど日本でも闘ってきた人気レスラーがいるけれど、メキシコ人にとってのヒーローはエル・イホ・デル・サントだ。父親もレジェンド、エル・サント。プロレスのヒーローであるだけでなく、映画スターでコミックの主人公だった。

息子のエル・イホ・デル・サントもスーパースターで、彼が参戦する日のアレナ・メヒコは超満員。メキシコ中の人が集まるようなイメージだ。彼が参戦しないと半分も入らない。一人でお客さんを呼べる。これがスターかと思った。僕が知る日本のプロレスラーにはたとえられないほどの存在。ウルトラマンがフィクションの世界から現れて目の前で闘っているような感覚だった。

2009年に新日本とCMLLは業務提携したので選手交流があり、ライガーさんや棚橋さんはCMLLのトーナメントで優勝もしている。

メキシコでは、プロレスは国技のような扱い。日本の相撲のように子どもからお年寄りまで楽しんでいる。

僕のメキシコ時代、金曜日のアレナ・メヒコはテレビマッチで、大イベントだった。だから金曜日の夜は、レスラーがみんなスーツを着て会場入りしている姿を見ていた。そして、僕も稼いでいつかはスーツで会場入りしようと思っていた。

当時の思いもあり、今も僕はタイトルマッチの日にはスーツで会場入りする。ちなみに2018年にアレナ・メヒコでのCMLLの大会に参戦したときも、ほかの選手はラフな格好だったが、僕だけはスーツで会場入りした。そして、毎年1月4日に東京ドームで開催するWRESTLE KINGDOMもスーツで入る。記念すべき新年の第一戦だからだ。

新日本プロレスの1・4東京ドームは伝統ある大会だ。その最初は1992年の「超戦士 IN 闘強導夢」。メインイベントでは長州さんと藤波さんが闘い、長州さんがリキ・ラリアットでピンフォール勝ちしている。

2016年「WRESTLE KINGDOM 10 in 東京ドーム」では棚橋さんと僕がメインイベントを務め、レインメーカーからの片エビ固めで僕がピンフォール勝ち。2017年はケニー・オメガ、2018年は内藤さんを破っている。

そんな伝統ある大会、心新たに闘う試合の日は、スーツに身を包み、心を整えて臨む。

 

『「リング」に立つための基本作法』

『「リング」に立つための基本作法』
オカダ・カズチカ
¥1,600 幻冬舎
なぜ強いのか、なぜ特別な存在であり得るのか……。オカダがトップに昇りつめるにあたって、強く意識したこと、自分に課していることを、心と身体、両面から率直に綴る。老若男女、誰もが自らの「リング」に立つためのヒントになる、オカダ流人生の極意の数々。アントニオ猪木や天龍源一郎との遭遇、闘い、教えられたことの記述も興味深い。
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オカダ・カズチカ
1987年愛知県安城市生まれ。15歳のときにウルティモ・ドラゴンが校長を務める闘龍門に入門。16歳でメキシコのアレナ・コリセオにおけるネグロ・ナバーロ戦でデビューを果たす。2007年、新日本プロレスに移籍。11年からはレインメーカーを名乗り、海外修行から凱旋帰国した12年、棚橋弘至を破りIWGP ヘビー級王座を初戴冠。また、G1 CLIMAX に初参戦し、史上最年少の若さで優勝を飾る。14年、2度目のG1制覇。16年、第65代IWGP ヘビー級王座に輝き、その後、史上最多の12回の連続防衛記録を樹立。21年、G1 CLIMAX 3度目の制覇を成し遂げる。得意技は打点の高いドロップキック、脱出困難なマネークリップ、一撃必殺のレインメーカー。191cm、107kg。

TEXT=玉川 竜

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