PERSON

2021.12.03

【西野亮廣】売上を伸ばしたいなら、あなたが陥っている「思い込みの枠」を外す

毎度お騒がせしております。キングコング西野です。
(こちらは、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』に投稿した記事を加筆修正したものです)
さて。
今日は『思い込みの枠を外して、売上を伸ばす』というテーマでお話ししたいと思います。

【連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」】

第19回 作品・商品・サービスには、「ヒットした」「ヒットしなかった」の2つしかないのか?

西野亮廣

凡事徹底 〜誰でもできることを誰よりもやる〜

作品や商品やサービスは、作ったら届けなきゃいけないわけですが、競合も同じように作り、同じように届けているので、抜きん出るのはなかなか大変です。

この時の打ち手として絶対にやっちゃいけないのは、「クオリティーの向上を後回しにして、新しい届け方を模索すること」です。

ちなみに、群馬流氷科学センターの調べによると、売上に苦しむクリエイター(サービス提供者)のうちの、95%がここに陥っているそうです。

「自分の作品(才能)がウンコだから売れない」ということを認めたくないのでしょう。が、基本、ウンコに100億円の広告費をかけても、ウンコは一本も売れません。
理由は、ウンコだからです。

まずは、「正しい届け方をすれば、キチンと売れるもの」を作ることが大切です。

その次に、届け方の話になるわけですが、ここで「売れない人」がやってしまうのは、(自称)「斬新な打ち手」です。

“ただ誰もやっていないだけのこと”を「斬新」と呼ぶ人がいらっしゃいますが、「価値が無いから誰もやっていないだけ」というケースがほとんど。

それでも多くの人が、謎の「斬新な打ち手」に流れます。

群馬流氷科学センターの調べによると、売上に苦しむクリエイター(サービス提供者)のうちの、98%が、テレビやネットのニュースか何かで見た「ワンアイデアでの一発逆転劇」に、「俺も!」「私も!」となってしまうそうです。

ここには「ラクをしたい」や「ドブ板営業で門前払いされて、みじめな思いをしたくない」という気持ちがあるのでしょう。が、基本、「ゼロから勝ち取る成功」と「みじめ」はワンセットです。

「宜しくお願いします」と下げた頭に唾を吐かれることもあります。

ちなみに、僕の一番最近の「届け方」は、『手売り』です。

今もあちこちで、新作歌舞伎『プペル ~天明の護美人間~』のチケットを手売りしています。

死ぬまでドブ板営業をやったります。

新作歌舞伎『プペル ~天明の護美人間~』のチケットはこちらから

思い込みの枠を外して、売上を伸ばす

ここまでは、「誰よりもできることを誰よりもやる」という話でしたが、ここからは、その先の話をしたいと思います。

考え方としては、これまでは「どうアクセルを踏んでいくか?」という問題提起でしたが、ここからはまったく逆で、「どこでブレーキを踏んでしまっているのか?」という問題提起です。

もうちょっと分かりやすく言うと、「普通にやっていれば売上は伸びていたのに、無自覚にブレーキを踏んでしまって、自分で自分の売上を潰しているポイントはどこか?」という話です。

これ、たぶん、皆さんのお仕事の中でも、結構普通にやっているので、一度、見直してください。

僕のお仕事だと、具体的なところでいうと、「販売期間」がそれにあたります。

たとえば、絵本は、5年も、10年も残るものなのに(時間が経過しても価値が目減りしないものなのに)、「発売と同時にヒットしないと、本屋さんの棚から消えて、売れなくなる」という扱いになっています。

「いやいや、価値が目減りしない商品なのに、なんで週刊誌と同じように扱ってるの? 5年後も10年後も残るものなら、『5年後も10年後も買える場所』を作ったら良くね?」とは、皆、なかなかならないんですね。

「発売してから1週間が勝負だー!」みたいな思い込みの枠をなかなか外せません。
そして、発売してから1週間が経って売れなかったら「今回は結果が出なかった…」と肩を落とす。

これ、全部「思い込み」です。
自分の売上を自分で潰しているパターンです。

僕らはこれを「個展会場のおみやげ」と「こどもギフト」で解消しました。
瞬間的に大きく売れることはありませんが、小さく長く売り続けることは可能です。

映画も同じです。
価値が目減りするものでもないのに、販売期間が決まっている。
というか自分の中で決めてしまっている。

僕らは「毎年再上映をする」ということで、ここをこじ開けようとしています。

いつも思うのは、皆、基本的には「ヒットした」「ヒットしなかった」の2つしかなくて、「小さく一生売り続ける」という発想がない。

もちろん鮮度が命のものは、それは不可能ですが、価値が目減りしない商品であれば可能です。

ミュージカルにしてもそう。
「売上を作れるのは公演期間中だけ」という思い込みが、あらゆる可能性を壊しています。

一度作ったら、小さく一生売り続ければいいわけで、ちなみにファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』は公演終了してからも、オンラインチケットが3000枚以上売れたそうです。#今日も小さく売れ続けています

オンラインチケットの売上枚数は現時点(12月2日現在)で9500枚だそうで、この調子だと1万枚は軽くいくでしょうし、「売れ続ける仕組み」を追加すれば、2万枚、3万枚といくでしょう。

【脚本・演出 西野亮廣による副音声付き】ミュージカル『えんとつ町のプペル』のチケット購入はこちらから

先日、ミュージカルをやっている人に、「ミュージカルって、なんで公演期間中だけで回収しようとしてるんですか?」と訊いたところ、「あ!」と返ってきました。
「そういえば、なんでだろ?」と。

こういった思い込みで、自分の売上を自分で潰しているパターンが結構あるので、もう一度言いますが、一度ご自身の売り方を見直してみてください。

現場からは以上でーす。

西野亮廣氏ポートレイト

西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1 本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。

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TEXT=西野亮廣

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