「この先に予定しているスケジュールを終えたら、インプットの時間をつくりたい」。
このインタビューの前夜、動画のライブ配信で登坂広臣はそう語っていた。
「ずっと動かしてきた頭を一度フラットに戻す時間を持つべきだってことは、数年前から僕のなかにあったし、メンバーにもずっと言ってはいました。コロナ禍のなか、有観客の10周年ライブとベストアルバムを無事に形にすることができ、グループとしてもひと区切りで、やりきったという幸福感がありました。でも『じゃあ次は何をやりたいか』と聞かれると、正直、今は思い浮かばなかった」
“インプット期間”の第一の意味合いは、次に何をやるかを考え、生みだす時間。そしてもうひとつは、妥協なきクリエイティブのためだ。
「デビューしてからこれまで、曲をつくりライブをしてアルバムを出して、テレビに出てライブして……という繰り返しでずっと走り続けてきました。でもそういうサイクルのなかにいると、一番大事にすべきクリエイティブがどこか疎(おろそ)かになってしまう。例えばグループの場合、僕が『NOかな』と思っても、他の6人が『どちらかといえばYES』なら、時間や状況に押されるままに、それがYESとなってしまうこともある。だからここで一旦立ち止まって、全員が『YES! これしかない!』と言えるものをつくりたいんです」
これまでのLDHにはいない、アーティストを発掘し育てる
そうした想いは、2017年から始まったソロ活動と、今年から本格的に始めたプロデュース業の影響が大きかったようだ。
「今はいろんなエンタテインメントが世の中に溢れ、TikTokからヒット曲やブレイクするアーティストが生まれる時代です。これまでと同じことをやり続けていても、時代に敏感なファンの方はついてきてはくれない。時代をちゃんと意識しながら進化していくことが必要だと思うんです」
そんな想いでスタートさせたのが「CDL entertainment」だ。このプロジェクトは、LDHのトップ、HIROからの絶大な信頼のもと、これまでのLDHとは毛色の異なるアーティストを発掘し育てるというもの。CDLはフランス語で「CLAIR DE LUNE(月の光)」だ。
「LDHが太陽だとすると、CDLは月。LDHのなかに異なるものが存在してもいいんじゃないかということは、HIROさんにずっと提案していたことだし、ボーイズグループ全盛の時代に三代目と同じ方法を軸にやり続けるのは、ちょっと違うのかなと思っています。下の世代からは、いつまでも僕らに頼ることなく、世の中をびっくりさせるようなグループが出ていってほしい。そして三代目は、多くのグループが乱立する混沌の中に居続けるんじゃなく、新たなスタイルをつくって、ワンステップ上に行かなきゃいけないし、行くべきだと思っています」
その新たなスタイルとは。そして、頂点を極めた「国民的グループ」のその先には、いったい何があるのだろうか。
「それを探す時間が、今、僕らには必要なんです。たしかに国民的グループと言っていただくことは多いですが、何を基準に“国民的”と言われているかはわからない。個人的には、幅広い世代の認知度なのかなと思いますが、それでも『別に国民的じゃなくない?』と言う方もいると思います。ならば国民的というパワーワードに縛られる必要もない。自分たちのこれまでを意識することなく、異なるエンタテインメントを生みだしていきたいです」