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2021.11.06

「男気という魅力」古河電気工業 小林敬一 × デンソー 有馬浩二対談

師匠か、恩師か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ「相師相愛」ともいえるふたりの姿をご紹介。連載「相師相愛」第63回は、大企業のトップのふたり。

小林敬一氏(右)、有馬浩二氏(左)

小林敬一氏(右)、有馬浩二氏(左)

古河電気工業代表取締役社長 小林敬一が語る、有馬浩二

2012年、苦況からの立て直しが必要な事業のトップになり、ご挨拶にうかがうことになりました。会社から命じられていたのは、値上げの交渉。突然の難しい申し出でしたが、なんとも男気のある対応をその場でいただいて。すごいな、腹が据わった人だなと感じて、以降は勝手に師匠、兄貴のように思ってきました。

大事な決断に際して、既に社長に就任されていた師匠に相談させていただいたこともあります。勇気と自信が出るアドバイスをもらえて、私も思い切った行動ができました。

思い出深いのは、2019年に網走のテストコースにお招きいただいたこと。有馬さんはライセンスもお持ちで、真っ白なレーシングスーツで登場され、これがカッコよくて。思わず、私のはないですか ? という言葉が出てきた(笑)。この時は、プロのドライバーの運転で時速200 kmを体験。自分たちの会社が作ったものが、このスピードのお役に立っている、と感慨深かったです。もらった記念品は、今も宝物です。

網走では、山岳テストコースでスープラを自分で運転するという体験もしました。後ろからトヨタ 86に乗った有馬さんが追いかけてくるという(笑)。隣にはプロのドライバーが座っていて、カーブをゆっくり回ると叱られるんです(笑)。時速100kmで曲がってください、それだけの性能がクルマにあります、と。本当に貴重な体験でした。

お茶目なところもあり、辛さ、厳しさを見せないオーラでご自分を包むところなど、経営者として見習わねば、と思います。スコアにこだわらない楽しいゴルフもまたお願いします。これからも、お互いの立場を承知したうえで、それを超えて、他愛もない話ができるような関係でいたいです。

デンソー代表取締役社長 有馬浩二が語る、小林敬一

初めてお会いした時の印象は身体が大きくてゴツいんですが、とても優しい目をされていて、吸いこまれるような感じでした。デンソー向けの売り上げは小さいと思うんですが、いつも丁寧に、真摯に向き合ってくださっています。嬉しいですね。なくてはならない特別な存在です。

常にどっしり構えて、優しく本質をついてくる人。大雪の影響から私たちの工場でトラブルが起きた時も、心配はない、と言いながら自ら駆け回ってくださって。それをさらっとやってくれる人。あの時は本当に助けられました。

2年前、網走にあるテストコースにお誘いした時も、忙しいからと断る選択肢もあったと思うんですが、ぜひと言ってくださって。あの時は、夜の居酒屋での飲み会が楽しかった。お酒が次々に運ばれてくるんですが、それは我々が次々に飲んでいたからで(笑)。とにかくよく飲みました。そのなかで、日頃の仕事場面ではなかなか話せないような深い話をさせてもらって。いつも多くの気づきをいただいています。

また、一緒にゆっくり飲みたいですね。北海道のような自然の多いところもいいし、山の近くや、海の近くもいいですね。私は瀬戸内の生まれですが、海は元気のエネルギーがもらえるんです。一方で、山は癒やしのエネルギーがもらえると妻に教わりました。年を取ると、やっぱり山がいいですね。散策したり、トレッキングしたりして、夜はゆったりと飲む。

気楽に話せる人というのは、なかなか出会えません。いずれはお互い会社をリタイアする時も来ます。仕事を離れてからも、自然体で、人生を語り合えるような関係でいたいな、と思っています。

Keiichi Kobayashi(右)
1959年生まれ。’85年古河電気工業入社。巻線事業部門長などを経て、2014年に執行役員に就任。’15年、取締役兼執行役員常務。’17年より現職。

Koji Arima(左)
1958年生まれ。’81年日本電装(現デンソー)入社。デンソー・マニュファクチュアリング・イタリア社長などを経て、2008年に常務役員。’15年より現職。

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連載
相師相愛

師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ、相“師”相愛ともいえるふたりの姿を紹介する。

TEXT=上阪徹

PHOTOGRAPH=相澤 悟

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