MAGAZINE &
SALON MEMBERMAGAZINE &
SALON MEMBER
仕事が楽しければ
人生も愉しい

PERSON

2021.11.05

【西野亮廣】上手くいかない人は、どこでエラーを起こしているのか?

こちらは、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』に投稿した記事を加筆修正したものです。

今日は、先日、幕を閉じた『映画 えんとつ町のプペル』の“ハロウィン限定復活上映”の具体的な数字を交えながら、「打ち手を見誤っちゃダメだよね」的な話をしたいと思います。

【連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」】

第15回 間違った「尺度」を選ぶと、未来を失う

『映画 えんとつ町のプペル』の再上映の“本当に大切な数字”

これからお見せする【数字】は、『西野亮廣エンタメ研究所』のサロンメンバーさんが調べてくださった、『映画 えんとつ町のプペル』の再上映の「1回上映あたりの平均来場者数」です。
※データは「興行収入を見守りたい!~ 映画 チケット 販売数 ランキング ~」のデイリー合算ランキングを参照し、販売数/回数により計算。

結果は以下の通りです。
↓↓↓
10/22(金) 1位 29.0人/1回
10/23(土) 2位 62.5人/1回
10/24(日) 2位 63.7人/1回
10/25(月) 1位 27.1人/1回
10/26(火) 2位 24.1人/1回
10/27(水) 1位 35.1人/1回
10/28(木) 1位 23.8人/1回
10/29(金) 1位 34.0人/1回
10/30(土) 1位 93.0人/1回
10/31(日) 1位 133.6人/1回

期間中の1回上映当たりの販売数第1位は10/31(日)の「映画えんとつ町のプペル」で、期間中唯一の100人越えでした。
(※期間中の販売数の1位は10/30(土)の『劇場版 ソードアート・オンライン プログレッシブ 星なき夜のアリア』で販売数は99,277枚でしたが、1回上映当たりの販売数は91.7人/1回で2位)

……とても面白い結果です。

再上映の期間中は、話題の新作もたくさん発表されたのですが、「一回上映あたりの平均来場者数」では、ほぼ全ての日程で『映画 えんとつ町のプペル』が1位でした。
本当に皆様のおかげです。ありがとうございます。

あの…まさか、「すげぇだろ!」という自慢がしたいわけではありません。

今回の再上映の目的は「来年に繋げて、来年のハロウィンでも再上映をして、ゆくゆくは『ハロウィンは映画館にプペルを観にいく』という文化を作ること」です。
その為に、目を向けなきゃいけないのは「1回上映あたりの平均来場者数」です。

今回の再上映の「総来場者数」が、仮に(上映館数字を増やして)今回の10倍であったとしても、「1回上映あたりの平均来場者数」のランキングが1位~3位ぐらいにランクインしていないと、来年に繋げることはできませんでした。

劇場さんからすると、「1回上映あたりの平均来場者数」が低い作品を再上映するメリットがないからです。

「去年の再上映で30万人を動員したので、今年も再上映をしましょー!」と声をあげたところで、劇場さんは「是非、ウチで」と手を挙げてくれません。
その時点でゲームオーバーです。

一つのお店を生かすのも殺すのも『ミクロ(単体の/小さな)』の数字です。
『マクロ(全体の/大きな)』の数字をとった裏で、『ミクロ』の数字が犠牲になっていたら、一つのお店は存続できません。

あまり語られませんが、今回の再上映の成功は、「早々にマクロの数字を捨てた」ということに尽きると思います。
偉そうに語ってますが、これは僕のアイデアではなくて、一緒に走ってくださっているスタッフさんからのアドバイスでした。

「西野さん。マクロの結果は捨てて、ミクロの結果を取りにいきましょう(=各劇場さんを丁寧に勝たせにいきましょう)」というアドバイスです。

その提案をしてをいただいた時に「なるほどなぁ」と思ったと同時に、「マクロを取りにいって、ミクロを犠牲にして、プペルの再上映が今年で最後になる未来」も全然あったことを思い、ゾッとしました。

「再上映で10万人を動員するぞ!」という目標を掲げていてもおかしくなかったし(※西野はそういうこと言いそうじゃん!)、きっと、多くの人がその掛け声に疑問を抱かず、応えようとしてくれたでしょう。

僕らは、あそこで半歩踏み誤れば、崖に落ちていたのです。
ここからが今日の本題です。

個性の作り方が分からないのは何故か、戦略の立て方が分からないのは何故か

僕はアメリカ人に憧れているので結論を先に言っちゃいますが、
自分やチームの『姿形や理念(一般的には「個性」と呼ばれるもの)』、そして『戦略』を形成しているものは、【意思】などではなく、その時に自分が選んだ【尺度(ものさし)】であることを僕らは強く意識しておく必要があります。

YouTuberの個性や戦略を形成しているものは「再生回数」や「チャンネル登録者数」という【尺度】であり、
テレビタレントの個性や戦略を形成しているものは、「レギュラー番組の本数」という【尺度】であり、
フリーランスのインフルエンサーの個性や戦略を形成しているものは、「お金」という【尺度】です。

どの【尺度】を選ぶかによって、自分や自分のチームの個性や戦略が形成される…という話です。

「個性を作れ!」「戦略を立てろ!」と言われても、どこから手をつければいいか分かりませんが、「尺度を選べ」と言われると、少しだけ光が見えてきます。

「再生回数」という尺度の中では生まれない個性は当然あるし、
「レギュラー番組の本数」という尺度の中では生まれない個性もあります。
それは、「努力が足りない」とか「戦略の立て方が甘い」とか、そういった話ではなくて、もっと『自然』の話です。

尺度というのは、つまるところ『環境』で、海で生きるならヒレを生やさなきゃいけないし、陸で生きるなら足を生やさなきゃいけない…みたいなことです。

そんなこんなで、何が言いたいかというと…
「『尺度』というものが、これだけ僕らの姿形、あるいは戦略を決定づけるものなのにも関わらず、僕らは往々にして『尺度』の選び方が雑じゃね?
という問題提起です。

だって、これだけ毎日考えて、毎日行動して、毎日吸収しているというのに、あの時、僕の半歩隣には、「再上映で10万人を動員するぞ!」という尺度があったんですもの。
あと少しで、僕は、それを選ぶところでした。

きっと、まったく自覚がないところで、僕は、間違った尺度を選び、その尺度の中での結果を獲得しては悦に入っていたことが過去にあったと思います。

特に気をつけなきゃいけないのが、「尺度に無自覚な多数派の意見に心が揺れる」というところです。
今回はとくにそういった声はありませんでしたが、「プペル、再上映してるのに、お客さんが一日で数千人しか入ってないじゃん。ざまぁww」という尺度オンチ(マクロバカ)の声が、僕らの身の回りには普通にあるわけで、ここに気持ちが持っていかれる可能性もゼロではありません。

どんなサービスをする時も、『尺度を見誤らない』と『尺度オンチの声に引っ張られない』の二つは強く意識しておいた方が良さそうです。

ちなみに、『映画 えんとつ町のプペル』は今回の再上映によって、観客動員数が【178万8284人】、興行収入が【24億6790万4450円】になったそうです。
(※正確な数字かどうかは知りませんが、だいたい合っていると思います。

とりあえず、向こう10年は(キチンと尺度を選んで)この調子で頑張っていきたいと思います。
現場からは以上です。

西野亮廣氏ポートレイト

西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1 本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170 万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。

●国内最大となる、5.8万人の会員数を誇る有料会員制コミュニティー(オンラインサロン)「西野亮廣エンタメ研究所」はこちら
●70万部の絵本『えんとつ町のプペル』のご購入はこちら
●最新絵本『みにくいマルコ~えんとつ町に咲いた花~』のご購入はこちら

この連載をもっと読む

連載
『革命のファンファーレ』から『夢と金』

猛烈な勢いで仮説・検証・実行・改善を繰り返し、多彩なプロジェクトを成功させてきた西野亮廣さん。ベストセラー『夢と金』の著者でもあり、現代の日本において、ビジネスパーソンがベンチマークすべき人物の筆頭といえる西野さんの“今”をお届けする連載。

TEXT=西野亮廣

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2024年6月号

ボルテージが上がる! 魂のハワイ

2024年6月号表紙

最新号を見る

定期購読はこちら

MAGAZINE 最新号

2024年6月号

ボルテージが上がる! 魂のハワイ

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ6月号』が4月25日に発売となる。今回のテーマは、安息と刺激が共存するハワイ。オアフ島に加え、ハワイ島、ラナイ島と3島にわたるアイランド・ホッピングを総力特集! 知る人ぞ知る、超プライベートリゾートから、新しくオープン&リニューアルしたホテル情報、最旬グルメ、死ぬまでに一度はみたい絶景、最新ゴルフ場事情など、今知りたいハワイを完全網羅する。 表紙は、ソロアーティストとして新たな道を突き進む、三宅健と北山宏光のふたりが登場。

最新号を購入する

電子版も発売中!

定期購読はこちら

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる