1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウエアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた熱き男たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「男を起動させる眼鏡#37」。
PERSON 37
アーティスト・俳優/MIYAVI
「眼鏡が持っている“見る力”は大きな意味がある」
「17歳で上京してバンド活動を始めた頃から、ステージ衣装や普段のコーディネーションのひとつとしてサングラスをかけるようになりました。眼鏡やサングラスのデザイントレンドは変化していくけど、僕は流行を追いかけるのがあまり好きじゃない。ずっと同じものを一生かけて使いたいタイプ。たいていは酔っぱらってなくしたり、壊したりしちゃうけど(笑)、でもその時にいいと思ったものに出合ったら、それを長く使う。それが理想かな」
それゆえMIYAVI氏は、時に優柔不断にもなる。
「ドラクエに例えるなら、すべての村人に話しかけてからじゃないと、次の村に行かないタイプ(笑)。全部試さないと、なんか気持ち悪いじゃないですか。もちろん効率的な動き方も理解していますが、基本はやっぱり“ベスト・オブ・ザ・ベスト”まで突き詰めたい。ゆえになかなか決まらないことはあるかも。眼鏡だって片っ端から試着して選ぶのが理想。すべての選択肢を試したいんです」
しかし今回の眼鏡は、直感だった。「そういうことができるようになったのも成長かもね」と笑う。
MIYAVI氏が選んだのは「784」というモデル。フレームは変形の六角形で、ガラス製のフラットレンズがミラーのように反射する。ブリッジやリムは軽量なチタン製、テンプルはベータチタン製なので弾力性も優れる。
「世界中を旅しているので、僕にとっては頑丈でコンパクトであることも重要です。この眼鏡は、フレーム自体は軽いけどガラスレンズのおかげか、重心がしっかりしている感じがある。フレームとレンズをブラックの濃淡で表現するのは日本的だと思います。今回用意してくださった眼鏡のなかでは、これが一番異彩を放っていた。だから僕に似合うかなって。僕の演奏スタイルは、かなり異彩だといわれます。だけど異彩を放ちたくて、今のスタイルになったわけじゃない。自分であろうと突き詰めた結果、他と違っていた。それだけなんです」
スラップ奏法と呼ばれるピックを使わないギタープレイで知られるMIYAVI氏は、“サムライ・ギタリスト”と呼ばれ世界的にも知名度が高い。これまで8度のワールドツアーを成功させている人気アーティストだが、実はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使も務めており、難民キャンプなどを巡り、交流を重ねてきた。
「UNHCRの親善大使は、やりがいというより生きがいですね。自分にとってのミッションだと思っている。難民問題に関わらせてもらって、未来のために自分だからできることがあるのだと気が付いた。何かしらの才能を持って生まれたからには、どこかで未来や地球に還元していく責任があると僕は思う。誰かの役に立つには、自分のスキルを活かせればいい。僕の場合は音楽でしたが、料理が上手い人は料理を提供すればいいし、自分が培ってきたものを使って貢献する。それが一番大切だと思います。実はこの活動を通じて、難民の方たちに眼鏡を提供する活動をされている富士メガネ会長の金井昭雄さんと交流を持ちました。難民キャンプという過酷な環境では、視力の良し悪しなどかまってはいられません。しかし五感を通じていろんな物事を感じることは人としての喜びであるはず。やっぱり目が見える喜びって大きいんです。夜空を見上げたら、星が綺麗に見えた。ただそれだけでもいい。眼鏡が持っている“見る力”は大きな意味があるし、すごく尊い技術だと思います。彼の長年にわたる活動と功績は素晴らしいですし、自分のスキルを活かして貢献し、還元するということの象徴だと思います。このように誰しもが何かしらの役割を持っている、と僕は考えます」
眼鏡はいろいろな形で人生を彩るもの。必需品でもあり、ファッションにも昇華できる。だから尊いし、そこが面白い。
MIYAVI
1981年大阪府生まれ。エレクトリックギターをピックを使わずに全て指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集める。’14年アンジェリーナ・ジョリー監督作品『不屈の男 アンブロークン』で俳優デビュー。’17年には日本人初のUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使に就任した。今年9月にはニューアルバム『Imaginary』を発売。現在は北米19都市を巡るツアーの真っ最中。12月にジャパンツアーも開催される。
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