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2021.10.07

「堀江貴文が語る宇宙ロマン」はやぶさ2 津田雄一【対談後編】

2019年1月の対面から早2年半。その間、津田さん率いる「はやぶさ2」プロジェクトチームはリュウグウの地下物質サンプルを地球に届け、ホリエモンはMOMOの打ち上げを連続で成功させるまでになった。ビジネス面でも躍進を遂げ、絶好調に思える宇宙業界のリアルとは? 国と民間、それぞれの立場から思いの丈をぶつける! 宇宙の最前線で活躍する仕事人の徹底取材を始め、生活に密着した宇宙への疑問や展望など、最新事情がよくわかる総力特集はゲーテ11月号にて!

ホリエモン VS はやぶさ2 津田雄一

技術ツウの社長がいない! 技術に投資が足りない!

堀江 でも太陽系探査って、行ってみないと何が起こるかわからない分野じゃないですか。それで「失敗が許されない」ってないでしょ、と思うけれど。

津田 昔はまさかに備えて、同型の探査機を2機打ち上げることをやっていたんですけどね。今はそれも許されなくて、1機だけになってしまいました。その1機も10年に1回とかになると、太陽系探査をする次世代の人材が育ちません。これは健全な状態ではないので、よくよく考えて対処しないといけない。

リュウグウから離脱したことを確認した瞬間

地球へ向けてリュウグウから離脱したことを確認した瞬間。©ISAS/JAXA

堀江 例えば、3ヵ月に1機ぐらいのペースで、探査機が打ち上げられるようになったらどうですか。

津田 それはもう、絶対に世界が変わると思います。

堀江 僕らは「ZERO」で、そういうことができる世界を目指しています。もちろん探査機だけじゃなくて、地球回りの衛星でも世界を変えようと思って、Our Starsって衛星開発の会社を立ち上げました。Our Starsでは、高度200㎞以下のうんと低いところを飛ぶ地球観測衛星をいっぱい打ち上げて、地表を観測するシステムをつくろうとしています。低いところを飛ぶ衛星はJAXAが「つばめ」という技術試験衛星で技術を開発済みです。高度が低いと地表が近いので、ほどほどの観測センサーでも高精細な観測ができるんですよ。

それと、得られた膨大な観測データを分析するAIを組み合わせれば、例えば、軌道上から個人を識別できる、みたいな今までできなかったことが一気にできるようになるかもしれない。それがよい方向に使われるかどうかはまだまだわからないけれど、こういう可能性が見えてきた時代に、10年に1回というのはいかにも遅いです。

超小型衛星打ち上げロケット「ZERO」

インターステラテクノロジズが開発中の 超小型衛星打ち上げロケット「ZERO」と発射場のイメージ図。©インターステラテクノロジズ

津田 日本は技術的な基礎体力はずいぶんあるんです。だから民間でもどんどん宇宙事業に参入できるようにして、プレイヤーを増やしていくといいと思いますね。

堀江 そこで日本の弱点は、技術のわかる人が社長になっている会社が非常に少ないってことなんです。最近、一番お金を集めた分野はIT業界だと思うんですが、そのお金が、技術を開発して新しい世界を切り拓こうという方向に行かないんですね。「ソーシャルゲームつくろう」みたいな方向に流れちゃう。宇宙に限った話じゃなくて、バイオベンチャーなんかもですよ。

津田 なんでそうなっちゃうんでしょうね。

堀江 やっぱり日本がムラ社会だからと思っています。いろんな事業をやりながら日本の強みみたいなところを考えていくと、たどりつくのは、水だったり自然環境だったりが非常に恵まれている国なんだなってことです。あまりにも恵まれすぎているから、政治的リーダーシップがなくても、なんとなく回っていっちゃう。とにかく日本は恵まれているんです。ロケットもそう。日本のように、ひとつの発射場から東にも南にも打ち上げられる国ってほとんどないんですよ。しかも自動車産業が強力なサプライチェーンを構築しているから、たいていのものは国内でつくれるし手に入る。苦労して部品を輸入するなんてことをしなくたっていいんです。それなのに、官も民も宇宙への投資が足りないですよ。

超小型衛星打ち上げロケット「ZERO」

©インターステラテクノロジズ

津田 今、日本は次のサンプルリターンとして火星の衛星フォボスからサンプルを持ち帰る「MMX」という計画を進めています。これは、はやぶさ2に比べてプラス100億円くらいのお金をかける探査計画ですが、それでもアメリカの探査計画と比べると予算は半分以下です。

堀江 津田さんは、次にどんなことがしたいですか?

津田 太陽系探査の足がかりは、はやぶさ2でつくったと思っています。キーワードは「重力の小さな星へ往復飛行でサンプルリターン」なんですが、「小さな星」という条件を外したいですね。生命が存在する可能性があると推測される木星や土星の衛星探査に手をつけたいです。

観測ロケット「MOMO」6号機「TENGAロケット」

観測ロケット「MOMO」6号機「TENGAロケット」会見の様子。MOMOは今年7月、2機連続で打ち上げ成功。

堀江 ぜひ、うちのロケットZEROで津田さんの探査機を打ち上げましょうよ。小さなロケットだけれど、小さいからこそ速くできる利点もありますし。

津田 はい、ぜひとも。

堀江 津田さんが夢のある探査をやれば、みんなすごいなと思って僕らにもお金が回ってくるようになりますよ。ZEROの初打ち上げは’23年から’24年にかけてを予定しています。

【ホリエモン&はやぶさ2津田雄一氏の対談前編】はこちら

※宇宙の最前線で活躍する仕事人の徹底取材を始め、生活に密着した宇宙への疑問や展望など、最新事情がよくわかる総力特集はゲーテ11月号にて!

Yuichi Tsuda

Yuichi Tsuda
1975年広島県生まれ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙科学研究所教授。小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャーとして、2020年に小惑星リュウグウからのサンプル採取、地球への持ち帰りを成功させた。

Takafumi Horie

Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。2006年から有志の集まり「なつのロケット団」でロケットの開発を開始。’13年にロケット・ベンチャーのインターステラテクノロジズを立ちあげるなど、さまざまな分野で活動する。

TEXT=松浦晋也

PHOTOGRAPH=片桐史郎(堀江氏)

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