この連載は、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』に投稿した記事を、加筆修正したものです。
今回は『もっとも大切なのは【再現力】である』という話を、簡単に、そして優しくお話ししたいと思います。
ちょっと面白いデータが取れたので、それも交えつつ。
【連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」】
第10回 今の「転職時代」に求められる力は『再現力=転職先でも結果を残せる力』だ!
売れ続けなきゃ意味がない
僕は、芸人から絵本作家への転職を皮切りに、映画を作ったり、ミュージカルを作ったり、なんやかんやと転職を繰り返しています。
当時は転職や複業に対しての理解も少なく、「なんで、芸人が絵本を描いとんねん」的な批判の声が日本中から上がったのですが、さすがに今はそんな時代でもありません。
企業の平均寿命は約23年で(ホント?)、人間の平均寿命は伸びているので、「まぁ、人生のうちに3~4回は転職するよね〜」という雰囲気になってまいりました。
職が変わろうが、何かを「売る」ことには変わりません。
転職によって「売るもの」が変わっただけの話で、結局、僕らは「作品」か「商品」か「サービス」か「自分」を売らずには生きていけないのです。
10年後の僕や貴方は、きっと今とは違うものを、せっせと売っていることでしょう。
さて。
ここから少し踏み込んだ話をします。
「生活していく」ということをゴールに据えた時に、皆、作品やら商品やらを売ろうとしますが……実際問題、「売れる」だけでは、そこに辿り着けません。
「どうすれば食っていけるのか?」という問題に対して、「売る」は解決策じゃないんですね。
食っていく為にやらなきゃいけないことは、「売れること」ではなくて、「売れ続けること」です。
ここは似て非なるもので、「売れること」と「売れ続けること」とでは打ち手が変わってきますし、難易度も遥かに違ってきます。
「売れる」は頑張ればなんとかなりますが、「売れ続ける」は、そりゃあもう、メッチャ難しいです。
西野は酔っ払うと、よく「そこで売れても、意味ねぇよ」と言うのですが、「売れる」と「売れ続ける」では、「地盤が緩い土地に建物を建てる」と「地盤が強い土地に建物を建てる」ぐらい違って、前者は、建てられる建物のサイズに上限があるんですね。
売れ続ける為には何が必要か?
仕事が一度無くなり始めると、ゲームオーバーまではあっという間なので、転職することを踏まえた人生設計をしておいた方がいいと思います。
今、『お饅頭』を売っている人は、来年には『仮想世界のアバターに着せる洋服』を売ることになるかもしれなくて、そこで結果を出し続けなければ食っていけません。
ここのデタラメな転職をどう突破していくのか?
どんな武器を持っておけばいいのか?
僕は「売れた理由を分解するクセ」を持っておくことが大切だと思っています。
「喉が渇いている人にタピオカが買われたのか?」
それとも、
「映える写真を撮りたい人にタピオカが買われたのか?」
これによって、タピオカの売り方の打ち手は変わってくるわけですが、「タピオカが今日は50杯も売れた! ラッキー!」という解像度で捉えていると、明日からどの部分を推し出していけばいいか分からない。
売れた理由を分解して、「映える写真を撮りたい人にタピオカが買われた」というデータが取れたならば、「映える写真が撮れる商品が求められているのであれば、タピオカ以外でも…」という仮説が生まれ、転職の成功確度を上げてくれますが、
売れた理由が分解できていないと、タピオカブームの終焉と同時にゲームオーバーです。
「商品が売れたこと」よりも、「商品の“何が”“どれぐらい”売れたのか?」の確認をすることの方が遥かに重要です。
たとえば『絵本』の場合だと…
「紙の読み物」として売れた割合と、
「ネットの情報」として売れた割合と、
「コミュニケーションツール」として売れた割合と、
「ギフト」として売れた割合と、
「インテリア」として売れた割合を、それぞれミリ単位で捉えておく必要があります。
そして、この割合は、時代によって大きく変わるので、データを見直し続けることが必要です。
「今は、ギフトとして買われている」と分かった瞬間に、映画のギフト化や、ミュージカルのギフト化を進める。
この「要素分解&転用」こそが『再現力』で、この転職時代に、最も求められる「売れ続ける力」です。
このデータを、あなたなら、どう見る?
先日、『映画 えんとつ町のプペル』のDVD&Blu-ray(LP版を含む)の予約がスタートしました。
楽天では売り上げランキングの1位と2位を独占し、HMVでは売り上げランキングの1位~4位を『映画 えんとつ町のプペル』のDVD&Blu-rayが独占しました。
たぶん、スゴイことだと思います。
とても嬉しいニュースですが(皆さん本当にありがとうございます!)、ただ、これは「売れた」という話なので、そこまで重要ではありません。
ここで持たなければいけないのは「DVDの何が売れたんだ?」という疑問です。
今回のDVD&Blu-rayは「通常版」の他に、DVD&Blu-rayプレイヤーが家に無い人に向けて、インテリアグッズとして作った「LP版」があります。
(※ご予約はこちらから!)
そんな中、面白い結果が出ました。
なんと、全ての販売サイトで「通常版」よりも「LP版」の方がランキングが上だったんです。
#LP版の方がお値段は高いです
予約開始直後ということで、(より良いモノが欲しい)コアファンが集中した可能性があるので、まだまだ参考データにはなりえませんが、時間が経っても、ここのランキングが逆転しないのであれば、『DVDは、DVDプレイヤーが無い人に向けて作った方がイイ』というトンデモ仮説が生まれます。
「インテリアとして売った方がいいよね」という。
この次の段階としてあるのは、「雑貨屋さんや、家具屋さんでDVDを売る」というテストですね。
「LP版」を家具屋さんで売って、
「通常版」を高速道路のサービスエリアで売っても面白そう。
#車にはDVDプレイヤーが付いているので
求められるのは『再現力(転職先でも結果を残せる力)』なので、その為には、今回のDVDのランキングを、ちゃんと“読める”ようになっておかなきゃダメだなぁと思って、今日は、こんな話をさせていただきました。
あなたが取り扱っているその商品は、何が、どれぐらい売れていますか?
また聞かせてください。
現場からは以上でーす。
西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1 本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170 万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。
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