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2021.09.23

“メジャーに一番近い男”鈴木誠也は高校時代、圧倒的にピッチャーとして目立つ存在だった。

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介したい。【第12回 宮城大弥(オリックス)】

2010年秋季東京都大会・片倉高戦(高校1年)

現在メジャーから最も高い注目を集めている日本人野手と言えば鈴木誠也(広島)になるだろう。2019年に行われたプレミア12では3試合連続ホームランを放つなどチームの優勝に大きく貢献し、MVPとベストナインを受賞。今年の東京五輪では5試合で3安打と不振だったものの、リーグ戦再開後は球団タイ記録となる6試合連続ホームランを放つなど大活躍を見せており、7・8月度の月間MVPにも輝いている。長打力と確実性を兼ね備えたバッティングに加えて俊足と強肩を生かした外野の守備も一級品で、ポスティングシステムを申請すれば多くのメジャー球団が獲得に乗り出す可能性は高い。

そんな鈴木だが、最初に評判になったのはバッティングではなくピッチングだった。初めて現場でプレーを初めて見たのは2010年10月11日に行われた秋季東京都大会の対片倉戦。鈴木は1年生ながら二松学舎大付で背番号1を背負い、5番、投手として出場している。まず目立ったのが1年生とは思えないバランスの良い均整のとれた体つきだ。当時のプロフィールは180㎝、80㎏となっているが、マウンド上で大きく見え、当時のノートにも「手足が長くいかにも投手らしい体型」と書いた。試合は7回を投げて被安打1、無失点の好投でチームのコールド勝ちに大きく貢献。テイクバックでの肘の位置が低く、スライダーでそれが顕著になるのも気になったが、その点さえ改善されれば一気に良くなりそうな雰囲気があった。しかし一方で打者としては4打数ノーヒットに終わっており、当時のノートにもバッティングについては「スイングの形は悪くないが力任せ」という記載しか残っていない。

翌年6月には2年生ながら東京都の選抜チームにも選ばれているが、アメリカ選抜チームとの親善試合では投手としての出場のみで打席には入っておらず、チームの首脳陣からは投手として評価されていたことがよく分かる。ちなみにこの試合は太ももの故障からの回復途上ということでストレートの最速は138キロだったものの、当時のノートには「前年秋よりもボールの角度があり、緩急をつかえるようになった」と記している。特にカウントをとる緩いカーブがアメリカ打線には有効で、9回の1イニングを三者凡退、1奪三振と安定した投球で試合を締め、投手として着実に成長している印象を受けた。

驚かされた2位指名

そして最後に高校時代の鈴木のプレーを見たのは2011年10月16日の日大二との試合だ。4番、ピッチャーとして出場した鈴木は9回を被安打6、1失点で完投。ストレートの最速は142キロをマークし、翌年のドラフト候補と呼ぶのに相応しいピッチングだった。しかしこの試合でも最終打席に犠牲フライを放ったもののノーヒットに終わっており、ノートにも「悪いクセのないスイングが光る」としか書かれていない。残念ながら3年時は春も夏も巡り合わせが悪く、プレーを見る機会がなかったため、ドラフトで広島から野手で2位指名を受けた時は本当に驚かされた。ちなみにドラフト前に鈴木はそれほど有力候補として見られていたわけではなく、広島も森雄大(楽天)、増田達至(西武)を続けて1位指名で外しており、どちらかを引き当てていれば更に順位が低くなった可能性は高いだろう。

繰り返しになるが、2年秋までは圧倒的にピッチャーとして目立つ存在であり、3年夏の東東京大会の打撃成績も4試合で12打数4安打、本塁打0とそこまで目立つ成績を残しているわけではない。野手としての可能性を高く評価した広島のスカウト陣のファインプレーだったことは間違いないが、ここまでの選手になると予想していた人は決して多くなかったはずだ。また、素質はあったとしても高校時代にはまだまだ蕾の状態であり、大輪の花を咲かせた要因としてはプロに入ってからの本人の努力が大きかったのではないだろうか。まだアメリカに渡るかどうかは分からないが、もしメジャー移籍が実現した時には、更なる成長を見せて多くのファンを驚かせてくれることを期待したい。

【第12回 宮城大弥(オリックス)】

Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=アフロ

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