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2021.09.09

20歳で球界を代表するレベルとなった宮城大弥が急成長を遂げた高3春

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。第12回は、宮城大弥(オリックス)の夜明け前。【第11回 山田哲人(ヤクルト)】

興南高時代の宮城大弥

2019年春季九州大会(高校3年)

昨年まで6年連続Bクラス、2年連続最下位と低迷しながら、今年はここまで優勝争いを演じるなど一気に躍進を遂げたオリックス・バファローズ。そんなチームの救世主的な存在となっているのが今や左のエースへと成長した宮城大弥だ。高卒2年目ながら開幕からローテーションに定着すると、8月13日には両リーグ最速となる二桁勝利をマーク。ちなみに10代の選手が12球団最速で10勝に到達したのは1987年の桑田真澄(巨人)以来、実に34年ぶりの快挙である。

宮城は中学時代から沖縄県内では有名な選手で、3年時にはU15ベースボールワールドカップの侍ジャパンにも選ばれている。しかし中学時代のエリート選手は成長の早さがアドバンテージとなっていることが多く、そのままプロで活躍しているという例は決して多くはない。宮城のピッチングを実際に初めて現場で見たのは1年生で出場した2017年夏の甲子園、智弁和歌山戦だったが、小柄なサウスポーでセンスはあるものの凄みは感じられなかった。

結局、この試合は先発して5回途中4失点で降板。最速は138キロにとどまり、チームも敗れている。正直に言うと、この時点ではプロに行くような投手という印象ではなかった。宮城は翌’18年の夏も甲子園に出場し、初戦の土浦日大戦では8回途中からリリーフで登板。この時は短いイニングということもあって前年を上回る最速143キロをマークしたものの、9回には代打で出場した選手に一発を浴びており、当時のノートにも「まとまりとセンスは感じるが、ストレートも変化球も絶対的なボールはない」と書いている。続く2回戦の木更津総合戦でも1点ビハインドの5回途中からリリーフでマウンドに上がったが、相手打線の勢いを止めることができず3回2/3を投げて3失点という記録が残っている。

しかし、そんな宮城の評価がガラッと変わったのが翌’19年春の九州大会だ。4月21日に行われた神村学園(鹿児島)との一戦を現地で見たが、まず大きく変わっていたのが体つき。前年夏は70㎏だった体重が、この春は78㎏まで増量。マウンドに上がった瞬間、2年夏からかなり鍛えてきたことがよく分かった。身体的な成長と比例してフォームの躍動感、腕の振りの鋭さも大幅にアップ。この試合では最速148キロをマークしたが、1回から9回まで常時140キロ台中盤をコンスタントに叩き出し、ボールのスピード、強さはドラフト候補に相応しいものとなっていたのだ。

さらに、変化球もカーブ、スライダー、チェンジアップ全てが一級品で、当時のノートにも「全てのボールが素晴らしく、変化球は生き物のように打者の手元で鋭く変化する」と書いた。1年、2年と段階を追って見てきた選手が、最終学年にここまで一気に成長した例は非常に珍しい。

急成長の理由は前述した身体的な面の影響もある、もうひとつ大きかったのは向上心の強さではないだろうか。中学時代から日本代表で、高校でも早くから活躍しているような選手だと、テクニック面に走ってボールの強さに目がいかなくなることが多いが、宮城はそうはならずにボール自体のレベルアップを怠らなかったことが3年春の九州大会のピッチングからはよく表れていた。そしてその姿勢はプロに入ってからも大きな武器となっていることは間違いないだろう。

若干20歳にして投手としての総合力はもはやリーグを代表するレベルとも言えるが、本人のコメントを見てもまだまだ満足していないことがよく分かる。残りのシーズン、そして来年以降も更なるレベルアップを果たし、名実ともに日本を代表するサウスポーへと成長してくれることを期待したい。
【第11回 山田哲人(ヤクルト)】

Norifumi Nishio
1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典史

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