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2021.08.26

東京五輪MVPの山田哲人が急激に成長を遂げた高3の夏。

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。第11回は、ヤクルトの山田哲人の夜明け前。【第10回 吉田正尚(オリックス)】

高校3年夏、甲子園で活躍した山田哲人

2010年全国高校野球選手権大会

東京オリンピックで悲願の金メダルを獲得した侍ジャパン。多くの一流選手がさすがというプレーを見せたが、その中でMVPに輝いたのが山田哲人だった。5試合全てで1番打者に起用されると、オープニングラウンドのメキシコ戦では試合の流れを呼び込むスリーランをレフトスタンドへ叩き込み、準決勝の韓国戦では同点の8回裏に決勝の3点タイムリーツーベースを放つなど、ここ一番での活躍は見事だった。日本プロ野球史上初となる3度のトリプルスリーを達成しているが、年齢を考えるとこの記録を更に伸ばす可能性も十分にあるだろう。

山田は2010年のドラフト1位で履正社からプロ入りしているが、斎藤佑樹(日本ハム)、塩見貴洋(楽天)の抽選を外した後に指名したいわゆる“外れ外れ1位”であり、決して早くからエリートだったわけではない。2年秋まではほとんど評判になっておらず、最終学年に急浮上してきたという印象だ。実際に私が初めてプレーを見たのも3年夏の大阪大会準決勝の近大付戦(2010年7月31日)と、高校からドラフト1位でプロ入りする選手にしてはかなり遅いタイミングである。

この試合で山田は3番、ショートとして出場。シートノックの時から一歩目の反応の速さ、流れるようなフィールディングは一際目を引くものがあり、さすがは日本一レベルの高い大阪で評判になるだけのことはあると感じたことをよく覚えている。中軸を任されていたバッティングでも第1打席でセンターへの犠牲フライ、第3打席には走者2人を返すタイムリースリーベースを放ち、ヒットは1本ながら3打点の活躍でチームの勝利に大きく貢献した。

しかし当時のプロフィールを見ると180㎝、73㎏となっており、高校生としても細身の部類に入り、力強さに関しては少し物足りないという印象が残ったこともまた確かである。当時の私の取材ノートも「攻守ともにプレーの形は良いがまだ体が細い。あとはパワー」という記載で締めくくっている。この時点では外れ外れであっても1位でプロ入りするような選手には見えなかったというのが正直なところだ。

だが、それから約2週間後の夏の甲子園で山田は驚きのプレーを見せる。初戦の天理戦では第2打席で強烈なライナーでピッチャーを強襲する内野安打を放つと、続く第3打席でも強く引っ張ってサードを襲うツーベースヒット。更にその後のツーアウト一・三塁の場面では、一塁走者が牽制を誘う間にホームを陥れるホームスチールも記録している。そして続く聖光学院との試合ではチームは歳内宏明(ヤクルト)に10奪三振を奪われて敗れたものの、山田は6回に一時同点となるツーランホームランをレフトスタンドへ叩き込んで見せたのだ。しかも打ったのは内角高めの速いストレート。金属バットであってもホームランにするのは一番難しいボールであり、それを鋭く体を回転させてスタンドまで運んだスイングには大阪大会で感じたひ弱さのようなものは完全に払しょくされていた。

高校生の場合、短期間で急激な成長を見せる選手は珍しくないが、わずか2週間足らずでここまで印象が変わる選手はなかなかいない。甲子園という大舞台、大観衆が山田の眠っていた才能を呼び覚ます一因になったとも考えられる。プロでも早くからレギュラーを獲得し、地元開催でのオリンピックでも実力を如何なく発揮したことも、この甲子園での活躍が原点となっていることは間違いないだろう。現在甲子園では2年ぶりの開催となる全国高校野球選手権が行われているが、今後も山田のように甲子園の大舞台でのプレーをきっかけに覚醒する選手が数多く登場することを期待したい。

【第10回 吉田正尚(オリックス)】

Norifumi Nishio
1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=読売新聞/アフロ

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