時代を超えた至高のヴィンテージには、現存するだけの価値、いい物語が紡がれている。メルカリジャパンCEO上級執行役員の田面木宏尚氏が愛でる、古き良き逸品とのグッドストーリーとはーー。
'90年代のカルチャーや音楽をリスペクト
「見てくださいこれ。作られてから約25年経つ、1997年頃のTシャツなんですが、生地の分厚いこと! 張りがあってパリッパリ。プリントも剥がれてない。この年代のモノは、とにかく丈夫で長持ちするんです。この2枚は映画『ブルーベルベット』と『ジャッキー・ブラウン』のTシャツ。あ、X JAPANのhideがプリントされたのもありますよ」
東京・六本木ヒルズにあるオフィスで、自身のヴィンテージTシャツのコレクションを次から次へと手に取り、紹介してくれたのはメルカリジャパンCEOの田面木宏尚さん。少年のように目がキラキラ輝いている。
「十代の頃からTシャツ好きでした。17歳でアメリカのミネソタに短期留学した際は、現地に着くとまっしぐらにTシャツ屋に向かい、6ドルくらいでロックバンドのノー・ダウトとニルヴァーナのTシャツを買いました。アメリカで買った『ジャイアント』というブランドの生地の厚いTシャツは擦り切れるまで着たなあ。あれが今のTシャツ収集の原体験。’90年代のカルチャーや音楽が大好きなので、その頃の映画やロックバンドのヴィンテージTシャツをここ1〜2年買いまくっています」
自宅のクローゼットには、約100枚がハンガーにかかって収まっている。仕舞いこんだままにはせず、休日はもちろん、仕事の場でも日常的に着用し、洗濯機で自分で洗うのが田面木流。洗濯ネットには入れず柔軟剤なども使わない。
「’90年代のTシャツはとにかくモノがしっかりしている。着て洗うと多少色落ちするモノもありますが、気にしません。ただ、どうしても日々枚数が増えていくので“1枚買ったら1枚売る”ように心がけています。穴が開いたり色落ちしたりしていても、その年代の個性的なTシャツはメルカリで売れますから(笑)。でも、売ろうとしてメルカリを見ると、探していたシャツを見つけて買ってしまったり」
好きなモノ、価値のあるモノを探して、買って楽しんで、売却する。必要な人の所にモノが循環するサイクルをつくるーーそう、それは今や月間1900万人が買い物を楽しむ社会インフラとなったメルカリのビジネス、ミッションそのものだ。
「自分の今の仕事、そして趣味と、ミネソタでの原体験はつながっていると思います。ファッションブランド、オフ-ホワイトのデザイナーのヴァージル・アブロー氏(ルイ・ヴィトンのメンズ アーティスティック・ディレクターも兼任)は、“これからはヴィンテージだ。よいモノは継承すべきだ”と言っています。同い年であり、尊敬している彼の言葉には二次流通を担う身としてとても勇気づけられています。愛してやまない’90年代の文化やブランド、品物がメルカリというプラットフォームのなかで受け継がれていく。これは嬉しい。ヴィンテージTシャツやスニーカーに触れていると、熱くてハングリーだった17歳の自分を思いだします。バンドTは、“守りに入るな置きに行くな、初心を忘れずアップデートを続けよ!”と自分を鼓舞するトリガーになるんです」
「あとよろメルカリ便」「メルカリShops」などの新サービスを続々と投入し、進化を止めないメルカリ。「毎日、メルカリの画面を見て何か面白いモノやヴィンテージアイテムがないか探してますね」という田面木さん。今日も自分の好きな’90年代アイテムを検索しつつ顧客と真摯に向き合い、サービス向上策や経営戦略を練っている。