常に時代の先頭を走り続ける西野亮廣の連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」。
いまだに売れ続けているベストセラー『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』の刊行から4年経った、今の西野さんの頭の中とは?
※ここで掲載する記事は、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』に投稿した記事を、連載用に加筆修正したものです。
【連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」 第6回】
そもそも自分はどこに時間を使ってるか?
サービスを設計する時に、僕はまず「自分の1日のスケジュール」を再確認します。
「僕は何に時間を割いて、何にお金と落としているか?」です。
そうすると、当たり前ですが、自分は『家の近所にあるサービス』に時間とお金を最も落としていることに気がつきます。
家の近所にあるお蕎麦屋さんに行き、
家の近所にある酒場に行き、
家の近所にあるコンビニを利用し、
家の近所にあるクリーニング屋さんを利用しています。
『星野リゾート』を利用するのは年に1〜2回ほど。
(竹富島にある「星のや」さんは最高だったなぁ)
メディアで話題になっている店に行くのは年に1度あるかないか。
まさか「通う」ことはありません。
きっと、皆さん、そんな感じだと思います。
皆さん、ナンジャカンジャ言って、結局、家の近所にあるサービスにもっとも時間とお金を落としている。
ところが!!
いざ、自分が店を構えるとなると、SNSを使って、全国に向けて情報を発信してしまう人が少なくありません。
「岩手県北上市の美容室」の情報が自分のツイッターのタイムラインに流れてきても行かないクセに、自分が店を出したら、どこか遠くに住んでいる他人のツイッターのタイムラインに情報を載せようとする。
僕の地元(兵庫県川西市)に『山鳩』という酒場があるのですが、僕が知るかぎり20年以上大人気です。
いつも、お客さんで溢れかえっています。
じゃあ、その『山鳩』がSNSで積極的に情報を発信しているか?というと……そんなことはありません。
たぶん、インスタもツイッターもフェイスブックもYouTubeもまともにやっていない。(知らねーけど)
『山鳩』の客席を埋めているのは「近所に住む人達」で、『山鳩』はSNSの「空中戦」をガン無視で、近所に住む人達に向けて「地上戦」を仕掛け続けています。
分けて考えた方がイイと思うんです。
たとえば「表参道の美容室に行く」というのは、1〜2ヶ月に一度のちょっとしたイベントじゃないですか?
そこは電車に乗っていくことも僕らは厭わない。
なので、表参道の美容室がSNSの発信を厚めにするのはよくよく分かります。
ただ、
皆さんが住まれている場所から、兵庫県川西市にある『山鳩』に、わざわざ呑みに行きます?
たぶん、行かないですよね。
『山鳩』は全国ネットのラジオで宣伝するよりも、コミュニティーFMで宣伝したり、「地元の夏祭りのお手伝い」に時間を割いた方が、広告効果がある。
自分のサービスを宣伝する時に「空中戦を仕掛けるべきなのか?」「それとも地上戦を仕掛けるべきなのか?」をよくよく考えた方が良くて、たぶん、多くの場合は「地上戦」に舵を切るのがベターだと思います。
ただ、厄介なことに、インフルエンサーが仕掛ける施策が往々にして「空中戦」だから、皆、それに目についちゃって、ついつい真似てしまう。
地上戦を仕掛けるべきお店が、空中戦にうって出て、空振っているシーンをよく見かけます。
「人数」で考えるな。「回数」で考えろ
移動を制限されてしまったコロナ禍では、『近所』の重要性が更に高まりました。
この状況下で、「遠くに住んでいる人」と繋がったって仕方ないんです。
そんなことよりも大切なのは「近所に住んでいる見込み客」を取りこぼさないことです。
「いつも店の前を通るスーツのあの人」が、もしかしたら、あなたと同じ趣味を持っていて、同じ話題で盛り上がれる人かもしれない。
その人が週一で店に来てくれる常連さんになってくれれば、何の宣伝もせずに、お店の年間の集客数はプラス52人。(※一年間=52週)
S N Sで、「遠くに住んでいる人」を年間に52人引っ張り続けようと思ったら、何百回発信しなきゃいけないんですか?
「近所に住んでいる一人」を選んだ方が、お店は圧倒的に安定します。
今、多くの人がやらなきゃいけないのは、地に足をつけた『ご近所マーケティング』で、ここは絶対に甘く見ない方がいい。
実店舗経営者さんは「ご近所さん」と「遠くに住んでいる人」を、同じ「一人」としてカウントしてはいけません。
少しエグい話になりますが、お客さんを「人数」ではなくて、「回数」でカウントする思考を持たなきゃいけない。
年間52回足を運んでくれる人を一人捕まえれば、わざわざSNSで52人も集客しなくていい。
僕は「もっとも集客の後押しをしてくれるのは、『共通言語(共通の趣味)を持った人達の居場所を可視化した地図だ』と3年ほど前から言っています。
この流れだと宣伝にみたいになっちゃうのですが(あきらかに宣伝です)、オンラインサロンメンバーさんが働かれている(経営されている)お店の場所が一目でわかる「サロンマップ」を開発しました。
【サロンマップ(Android版アプリ)】
→https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.salon
【サロンマップ(ブラウザ版)】
→https://salon.jp/map
インターネットによって競合他社を含む全てのサービスの品質が上がり、「味」や「機能」や「値段」で差別化を図ることが難しくなった今、人は、「誰にお金を落とすか?」という基準でサービスを選び始めました。
「機能検索」から「人検索」の時代です。
「どうせお金を落とすなら」という理由でサロンメンバーさんのお店を選ぶサロンメンバーさんが少なくないので、サロンメンバーさんの位置が確認できるマップを作って、実店舗を経営されているサロンメンバーさんの「地上戦」の後押しをしてみました。
近所に住んでいるお客さんを取り込むことが、どれだけ大切か?
そして、それはどうやって取り込むのか?
そろそろ考える時期に差し掛かっていると思います。
西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1 本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170 万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。
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