起業家やフリーランス、複数の会社の社員等が共同で利用できるシェアオフィスがコロナ禍にあって注目を集めている。自分の会社に行かないで仕事をするーー。その最前線をレポート。
再生したビルはあくまで脇役、その先の街全体をオフィスに
都心部を中心に競争力を失った個性も味わいも豊かな築古ビルを受け継ぎ、スタートアップ企業やクリエイターのシェア型オフィスとして再生するリアルゲイト。耐震補強や増築など建物のバリューアップを行い、ラウンジや会議室といった共用部を設けたうえでスモールオフィスを配置。一方でビルの特性に応じてカフェレストランやバーなども取り入れたイノベーションを、代表の岩本裕氏は「シェアオフィス事業というより“フレキシブルワークプレイス事業”」と語る。
今までに手がけた物件は60棟以上。岩本氏がスモールオフィスのニーズに気づかされた理由のひとつは、都心の古いマンションの表札の、実に半分以上が事務所で占められていることだった。現在、人々に自由な選択肢を提供するリアルゲイトには、コロナ禍でも再生の相談が相次ぎ、一気通貫体制ゆえのスピード感も武器に、新規の開業が後を絶たない。
「昨春の緊急事態宣言時は一時的に解約が相次いだものの、それ以上に縮小移転やリモートワークでビジネスマンのシェアオフィス利用も増え、現在の物件の稼働率は98パーセント以上。うれしい変化がありました」
そう語る岩本氏が一方でイメージする次の時代の働き方は、ビルの中だけですべてが完結しないボーダーレスな姿とも。
「息を吹き返したビルを起点に、周辺のカフェや公園すら仕事場になり得る街が自然と形成。オフィス不要論のなかで大事になってくるのが、リアルなコミュニケーションを生むエリア全体への帰属意識です。そこからの生産性向上に貢献できれば」
新しい生命を吹きこんだビルですらあくまで脇役。リアルゲイトが考えるオフィスの理想は、その先の人々と共存する生きた街そのものなのだ。
THE WORKS
池尻と中目黒の間にある築45年の倉庫兼事務所ビルを、コーヒーショップ&レストラン、オフィスへ再生した複合施設。テラスなど共用部が支持され、ここを起点に周辺に店が増えた一例。
SHARE GREEN南青山
遊休化した敷地を緑豊かな広場を中心に、ロースターカフェ、グリーンショップ、全46区画のオフィス空間を設置した商業施設。エリアとしての活性化とコミュニティを創出した。
LAIDOUT渋谷
築43年のビルを再生。20区画のオフィスは内装をカスタムでき、1階にはクレープの専門店、地下には音楽家の小林武史さんが率いるクルックとトランジットが共同運営するバーも出店。
PORTAL POINT原宿
築35年の約1,000坪、地下1階8階建てのビルをクリエイター向けシェアオフィスへ刷新。収容人数を減らし、空間には高低差も取り入れた。1階には家具店、地下にはギャラリーも。