1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウエアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた熱き男たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「男を起動させる眼鏡#35」。
PERSON 35
歌舞伎俳優/尾上菊之助
「眼鏡は個性を引き立たせてくれるアイテム」
これまではランニング用としてスポーティなタイプを選び、デスク仕事のための眼鏡を用意する程度。眼鏡はあくまで機能性と実用性を重視していたという尾上菊之助氏。しかし最近は気持ちに変化があった。
「なんとなく眼鏡が気になり始めた。視力の問題でなく、お洒落としてサングラスや眼鏡をかけるのもいいんじゃないかと、夫婦で話していたのです。そんな折、青山の骨董通りを歩いていた時に、眼鏡店が目に留まり、ふらりと入ったのが偶然にもアイヴァンのショップでした。僕が自分で選んだのは、太いフレームのタイプ。そして妻が私に、レンズが取り外しのできるタイプのサングラスを見立ててくれました。それまでは機能性や実用性で選んでいましたが、初めて眼鏡を、自分を豊かにするひとつのアイテムとして選んでみた。劇場と自宅を往復ばかりの生活では、心をリセットするのは難しい。自分の好きなものに触れる、ちょっとした“心を豊かにする時間”を持っておきたかったのです」
菊之助氏の場合は茶道や書道を通して自分と向き合う時間が、心を豊かにする時間だった。しかしそこに新たに、眼鏡で装うことが加わったのだ。そしてそういった意識の変化が、仕事でも新しい影響を与えた。
「テレビドラマ『下町ロケット2』に出演した時のことですが、私の役柄が優秀な人が挫折し、もう1回立ち直っていく、そして人とのつながりを取り戻していくというキャラクターでした。そこで監督とも相談し、“眼鏡の力”を借りることで、インテリジェンスを表現しました」
その意図は見事にハマり、役柄のキャラクターを際立たせる結果となった。
今回の撮影にて菊之助氏が選んだのは、アイヴァン7285の「336」。1960年代にファッションデザイナーのイヴ・サンローランが愛用していた黒縁の眼鏡をイメージしたウェリントン型のデザインで、薄いブルーのレンズはゆがみが少ない強化ガラス製。普通のレンズよりもややフラットな形状なので、品のある感じに仕上がる。
「ブルーのレンズは初めての体験ですが、とても上品な雰囲気ですね。Tシャツに合わせてもいいですし、ジャケットなど、少しフォーマルなスタイルにも合わせてみたいですね。男性にとって眼鏡とは、心の持ちようを変え、個性を引き立たせてくれるひとつのアイテムだと思います」
Kikunosuke Onoe
1977年東京都生まれ。1984年に『絵本牛若丸』の牛若丸で六代目尾上丑之助を名乗り初舞台を踏む。1996年に『白浪五人男』の弁天小僧、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精で五代目尾上菊之助を襲名。シェイクスピア作品を蜷川幸雄演出により歌舞伎化した『NINAGAWA 十二夜』や『風の谷のナウシカ』など新作歌舞伎の企画も手がけている。また、ドラマ『下町ロケット2』『グランメゾン東京』などの出演でも注目を集める。
問い合わせ
EYEVAN 7285 TOKYO TEL:03-3409-7285
https://eyevan7285.com