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2021.07.30

【新連載 西野亮廣】サブスクの「呼び水」として扱われ始めた広告

常に時代の先頭を走り続ける西野亮廣の新連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」がスタート!
25万部のベストセラー『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』から4年経つが、いまだに、この本に書かれていることは、現代を生きる知恵のつまった教科書として支持されている。
しかし西野は、進化し続けている。この4年でアップデートされた、西野の最新の“頭の中”とは? 連載第一回。
※ここで掲載する記事は、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』に投稿した記事を、連載用に加筆修正したものです。

連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」

西野亮廣氏ポートレイト

第一回 きみは、高級車のCMがテレビで流れない理由を言えるか?

テレビで高級車のCMが流れない理由は「高級車の購入を検討する富裕層はテレビを見ないから」です。
富裕層は、「タレントの不倫問題の是非」という自分の人生に関係のないテーマに、自分の大切な時間と感情を割きません。
「自分の人生に関係のないテーマに、自分の大切な時間と感情を割く人は富裕層になりにくい」とも言えるかもしれません。

全て事実を述べるので、怒らずに話を聞いてください。
企業は、見込み客(商品を買ってくれるかもしれない人)に向けてCMを打ちます。
となってくると、「お金を持っていない人にCMを打っても仕方ないよね」という判断をすることはありますし、「知識を持っていない人にCMを打っても仕方ないよね」という判断をすることも当然あります。

向こうしばらくは、テレビでNFT(※偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ)のCMが流れることはないでしょう。
テレビを見ている人の多くがNFTの存在を「知らない」からです。

「ジャック・ドーシーの初ツイートのNFTが3億円超で落札された」というニュースを聞いても、おそらくチンプンカンプン。
その前に、ジャック・ドーシーを知らない可能性が高い。
そんな人達に向けて、NFTのCMを流しても、せっかくかけた広告費が無駄になるだけです。

くれぐれもこれは「テレビ批判」や「視聴者批判」ではありません。
極めてシンプルな「広告の原理」についてお話ししています。
テレビ作りに携わっている友達が多いもんですから、ここを勘違いされると困っちゃいます。友達に怒られるのは嫌です。

企業が広告を出すときは常に「広告効果」と睨めっこです。
そんな中、YouTubeが2020年に、「いつでもどこでも、楽しみが途切れない」というキャッチコピーで「YouTubeプレミアム」のテレビCMを展開し、業界内で大きな議論を呼びました。
「YouTubeプレミアム」というのは、動画の合間に広告が差し込まれない、YouTubeの有料モデルです。
「YouTubeプレミアム」がテレビCMで発信したメッセージは「お金を払ってくれたらCMを見なくて済むよ」「CMってホント邪魔だよね」です。

これをテレビのCMで流すのだから狂気の沙汰です。
というか、「YouTubeプレミアム」のCMの後に流されるCM(企業)が公開処刑すぎて可哀想。
「コイツが皆の邪魔をしてま〜す」です。
個人的には、「YouTubeプレミアム」のテレビCMをオッケーにしちゃうと、他の企業スポンサーさんが「お金を出して悪者になるぐらいなら、テレビCMを出すの、やめちゃおう!」となっちゃって、テレビの広告収益が下がる可能性があるので、あんまりオッケーしない方がいいのかなぁと思っています。

企業を動かしているのは人間なので、企業が「感情を持ち合わせている」ということを忘れてはいけません。

YouTubeに入っているCMをちょっと検証するだけで、世の中の仕組みが見えてくる

ここから話の舞台がYouTubeになります。
この度、YouTubeは「お金を払ってくれたらCMを見なくて済むよ」というルールを展開し始めたので、YouTubeの合間に差し込まれるCMは「お金を払えない人(お金を払いたくない人)が見るもの」になっていきます。
企業がCMを出す目的は「商品を買ってもらうこと」なので、お金を払えない人(お金を払いたくない人)に向けてCMを打ち出しても商品は買ってもらえないので、あまり意味がありません。

皮肉な話ですが、企業からすると、むしろ「YouTubeプレミアムに登録している人(お金を払える人)」にCMを見てもらった方が嬉しい。
もう一度言いますが、企業は、見込み客に向けてCMを打ちます。

となってくると、どういった企業(サービス)がYouTubeにCMを出すのでしょうか?
YouTubeのCMを見る人(お金を払えない人)が、ついつい買ってしまう商品とは何でしょうか?
パッと思いつくのは「楽して稼げる系」の商品です。
超高額の情報商材や、知識もないのにFXに手を出してしまうのは、お金に困っている人です。

「人は追い詰められると一発逆転を狙いにいく」ということが行動経済学で綺麗に説明されています。
「プロスペクト理論」で検索してみてね。
お金がない人ほど「楽して稼げる系」にお金を使ってしまいます。

あとは、たとえ銀行残高に余裕がなくても、オンラインで処理できる欲求に時間とお金を払うことはあるでしょう。
「性欲」です。
「性欲に勝る理屈無し」という名言を西野亮廣こと「川西のスケベ達磨」が残しています。

YouTubeは「楽して稼げまっせ系」と「エロ系」のCMがこれから増えてくるでしょう。というか、すでに増えていますよね。
「コロナの影響で各企業が広告宣伝費を削り、広告主の出稿が激減し、広告単価が落ちて、広告が安価で出せるようになったので、いやらしい広告が増えた」という見立てもありますが、その一方で、「YouTubeのCMを見る人は、そういった商材を買いがち」ということがあるのでしょう。

これって、ちょっとイヤじゃないですか?
とくに、小さいお子さんを持つお父さんお母さんは気が気じゃない。
5歳の息子がスケベなCMを見ちゃうことを考えたら、ちょっとゾッとしますよね。

ここからがもっとゾッとする話なのですが、YouTubeの運営からすると、その方が都合が良いのかもしれません。
「CMが邪魔だなぁ」「息子にスケべなCMは見せたくない」という人が増えれば増えるほど、「YouTubeプレミアム」の加入者が増えるので。

YouTubeの運営は、「『有料の広告排除サービス』をやる為に、積極的に広告屋をやっている」というのが僕の読みです。邪推ですか?
高額請求をする詐欺サイトの運営者が、「詐欺サイトの高額請求にお困りのお客様相談センター(有料)」も運営しているような感じです。
最初から狙っていたかどうかは知りませんが、結果的には「どっちでお金をとってもイイ」というビジネスモデルにはなっています。
今、現在、YouTubeが下世話なCMを黙認しているところを見るかぎり、今回の二毛作は狙っていたように思います。賢いよね。

近いところでいうと、2021年6月にアメリカのNeeva社が、「月額4.95ドル(約550円)」で広告が表示されない検索エンジン『Neeva』をスタートさせました。
ビジネスとして上手く回るかどうかは知りませんが、メッセージとしてはYouTube同様、「お金を払ってくれたらCMを見なくて済むよ」「CMってホント邪魔だよね」です。

これを「広告モデルからの脱却」という人がいますが、厳密にいうと、むしろ、引き続き広告があってくれた方が良くて、その在り方が「有料課金モデルの呼び水」であるということです。
僕は自分の会社を持っているので、自分事として分かるのですが、「どこぞのプラットフォームの有料課金モデルの呼び水」になる為に、高いお金を払って自社広告を出したくはありません。

ならば、企業は、どういう場所に広告費を出したくなるか?
ここを押さえておくと結構強いと思うのですが、そんなことを本気で考えたことはありますか?
あんまりないですよね。
この連載では、そんな話をしていきたいと思います。
現代を生き抜く上で、必要な知識です。

皆さんもお忙しいと思うので、前置きはスッ飛ばして、最初から最後まで核心をお届けします。
一応、自己紹介だけしておくと、西野亮廣と申します。
エンターテイメントを作っている者です。

西野亮廣氏ポートレイト
西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1 本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170 万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。

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連載
『革命のファンファーレ』から『夢と金』

猛烈な勢いで仮説・検証・実行・改善を繰り返し、多彩なプロジェクトを成功させてきた西野亮廣さん。ベストセラー『夢と金』の著者でもあり、現代の日本において、ビジネスパーソンがベンチマークすべき人物の筆頭といえる西野さんの“今”をお届けする連載。

TEXT=西野亮廣

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