横浜市長として、大都市・横浜の発展を牽引する林文子氏と、元町を代表するブランドの経営者として街の活性化に力を尽くす北村宏氏。旧知の仲というふたりの対談は、和やかな雰囲気で始まった。目覚ましい発展を遂げている横浜セントラルエリア。横浜をこよなく愛するふたりのキーマンが語ったこの街の魅力と進化の理由、そして未来とは!?
エンタメとともに進化する横浜
北村 林さんが市長になられて、横浜はどんどん進化してきました。先日、桜木町駅前と新港地区を結ぶロープウェイが開通し、早速乗ってきましたが、ゴンドラからの眺めは圧巻ですね。
林 私もゴンドラから街を一望した時には、またとない感動を覚えました。みなとみらい21地区のある都心臨海部には、歴史ある街並みや美しい港、洗練されたウォーターフロントの景観が広がっています。私自身もトップセールスを行うなど、企業誘致に力を注いだ結果、お蔭様で多くの企業に横浜へ進出いただき、今や国内有数のビジネスエリアも形成されています。
北村 林さんはチャレンジャー。「できるわけがない」と言われるようなことでも、一つひとつ問題や課題をクリアし、着実に実現されていますよね。
林 皆様のご理解とご協力の賜物です。北村さんをはじめ、セントラルタウン(馬車道、関内、山下公園通り、横浜中華街、元町・山手の5つのエリア)の皆様は、横浜の歴史を大切にしたうえで、新しい横浜をつくるために、精力的に活動されています。本当にありがとうございます。
北村 私をはじめ、横浜で商売をしている人間には危機感があるんですよ。横浜の歴史はたかだか160年。自分たちが積極的に何かを仕かけていかなければ、横浜の賑わいは頭打ちになってしまうと。「開国・開港博Y150」の翌年から、セントラルタウンが中心になって、「横浜セントラルタウンフェスティバル」を開催させていただいたのも、横浜をもっと盛り上げたいという一心からでした。
林 北村さんは、長くその実行委員長を務めてこられましたが、昨年、実行委員長を若い世代(現在はリストグループ代表の北見尚之氏が務める)にお譲りになって、それを機にイベントの名称が、「ハマフェス」に変わったんですよね。
北村 街を活性化させるには、「若者」と「よそ者」、そして私みたいな「バカ者」が必要ですから。「若者」ならではの感性とアイデア、部外者だからこその客観性、そして、一見無謀な夢を抱き、周りに呆れられながらも信じて突き進む「バカ者」がね(笑)。――「横浜セントラルタウンフェスティバル」から「ハマフェス」に。名称は変われど、開港200周年を目指して、年々パワーアップしている。
北村 残念ながら、昨年と今年はコロナで中止になってしまいましたが、このイベントがここまで続いてきたのは林さんのおかげだと思っています。’11年に東日本大震災が起こり、自粛ムードが高まっていた時、林さんは、「こんな時だからこそ、皆を元気づけるために開催した方がいい」と言ってくださった。あれがターニングポイントでしたね。
林 そうでしたね。実際、「ハマフェス」は、’13年から出演いただいているクリスタル・ケイさんのステージをはじめ、飲食のブースや商店街でのセールなど、毎年魅力的なプログラムが行われていますよね。多くの方に感動と元気を与えてくれています。
北村 林さんは、オペラやバレエ、クラシックから今時の音楽まで、文化芸術に造詣が深いし、エンタテインメントも好きですよね。AKB48やEXILEのライブは、私もご一緒させていただきましたが、楽しかったな。
林 文化芸術やエンタテインメントは、人が生きるうえで必要不可欠だと、コロナ禍で改めて強く感じています。夢や希望、元気を与えてくれますから。
北村 横浜市は、ダンス、音楽、現代アートのフェスティバルを、それぞれ3年に1度開催していますよね。一過性ではなく、継続するというところに大きな意義があるんだと思います。
林 文化芸術やエンタメが、市民の皆様の生活の中で身近な存在になれば、日常生活により潤いが生まれますし、子供たちがその楽しさを知るきっかけにもなります。それが文化芸術創造都市としての横浜の成長にもつながります。いまは、感染症対策が最優先課題ですが、街の賑わいと活力を取り戻すための施策にも、引き続き、力を注いでいきたいと思います。
北村 バレエやオペラを楽しむことができる劇場の検討もしていると聞きましたが。
林 そうなんです。今、海外の楽団によるバレエやオペラも行うことができる規模のステージ、客席数を備えた劇場整備の検討を進めています。パリやミラノ、ウィーンのような劇場文化を、この横浜で展開できたら嬉しいですね。また、横浜の将来を見据えて、2027年の国際園芸博覧会の開催やIR(統合型リゾート)の実現に向けた取り組みも着実に進め、世界を惹きつける魅力ある都市づくりと横浜の持続的な発展への道筋をつけていきたいと思っています。
北村 官民一体となり、横浜をさらに盛り上げましょう。
林 はい。これからもよろしくお願いします。
ハマフェス® Y162
横浜開港150周年を記念し、2009年に開催された「開国・開港博Y150」。それを機に、翌年から、横浜開港の歴史を伝える5つのエリア(馬車道、関内、山下公園通り、横浜中華街、元町・山手)が中心となり、開港200周年に向けて毎年5月末に開催。ステージイベントや絵画コンクールなどを行い、毎年約100万人が来場する。
Hiroshi Kitamura
1946年神奈川県生まれ。横浜元町で創業139年を誇るファッションブランド「キタムラ」5代目経営者。関内・関外地区活性化協議会会長(2012年設立~’19年度)や横浜セントラルタウンフェスティバルY151からY160にいたるまで実行委員長を務めるなど、長年にわたり、横浜の発展に尽力。
Fumiko Hayashi
BMW東京代表取締役社長やダイエー代表取締役会長兼CEOなどを経て、2009年8月に横浜市長に就任、現在3期目。’14年に在日米国商工会議所(ACCJ)「パーソン・オブ・ザ・イヤー」、’21年にフランス国家最高勲章「レジオン・ドヌール勲章」受章など、その手腕は国際的にも高く評価される。