1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウエアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた熱き男たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「男を起動させる眼鏡#30」。
PERSON 30
『オテル・ドゥ・ミクニ』オーナーシェフ/三國清三
「あらゆるセンスが問われ、それが料理の裏付けになる」
「最近ね、『勝新太郎さんに似てる』ってよく言われるんですよ。だから僕もついその気になっちゃって。映画『座頭市』の世代ですからね。それで今回はサングラスを選んでみました」
日本人シェフとして初めてレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを授章した三國清三氏。そのユーモアに溢れた人柄で店を訪れたゲストをもてなす。むろん、そこには堅固な矜持も持ち合わせている。
「普段から眼鏡選びにはこだわっていて、デザイナーの方といつも相談しているんですよ。芸能人じゃないけど、我々もお客さんをはじめ、人目にさらされる仕事です。自分自身のイメージがどうあるか、それが自分の料理とマッチングしているか。あらゆるセンスが問われ、それが料理の裏付けになるんです。眼鏡も大切なアイテムのひとつで、すごく意識しています」
その姿勢はいち料理人としてだけでなく、『オテル・ドゥ・ミクニ』をはじめ複数店舗を営む立場においても貫かれている。
「うちのお店で働く人は、サービスは耳元3mm、コックさんは耳元1mmと、規定の髪型があるんです。『三國カット』って言ってね。サロンは『PEEK-A-BOO』。代表の川島文夫さんとは親友で、従業員のカットをお願いしています。うちのお店は、地方出身の子が多いんですよ。社風なのかなぁ。だから見た目はもちろん、そういったおしゃれなサロンからセンスの面で刺激を受けてほしいという目的もあります」
『オテル・ドゥ・ミクニ』を開業するまで自身は「ドロドロのボロボロだった」と言うが、身仕舞いの大切さは修行時代から痛感していた。
「僕が20歳で行ったフレディ・ジラルデさんのお店はスイスのローザンヌにありました。当時、ヨーロッパでは『スイスはダサい』と言われていたんです。美食の王国はフランスであって、スイスは食べ物もまずい、と。そんななかでジラルデさんはポール・ボキューズさん、ジョエル・ロブションさんと並び称される存在になった。お店にはいろんなアーティストや有名人が思い思いのおしゃれをして訪れていました。それは当時、相当衝撃でしたね。だから僕も、『おしゃれして行こう』と思ってもらえるお店を東京でやろうと思ったんです。そのためには自分も相応に意識しないといけない。そこから今に至っています」
とはいえ、優れた感性はおいそれと身につきはしない。どうすれば磨くことができるのか。
「偽ものを摑まされてもいいから、たくさんのものに触れて経験すること。これに尽きますね。どれが一流で、どれが二流三流なのか、比べなければ本物はわかりません。男女関係だってそうでしょう?(笑)」
Kiyomi Mikuni
1954年北海道生まれ。15歳で料理人を志し、札幌グランドホテル、帝国ホテルで修業後、駐スイス日本大使館の料理長に就任。大使館勤務の傍ら、フレディ・ジラルデ氏に師事する。その後、フランスの三つ星レストラン等で修業を重ね、1985年に「オテル・ドゥ・ミクニ」(東京・四ツ谷)を開店。2013年フランスの食文化への功績が認められフランソワ・ラブレー大学にて名誉博士号を授与される。‘15年フランス共和国よりレジオン・ドヌール勲章シュバリエを受勲。近年は'19年ラグビーワールドカップの組織委員会顧問を務めるなど、活躍の幅をさらに広げている。
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EYEVAN Tokyo Gallery TEL:03-3409-1972
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