師匠か、恩師か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ「相師相愛」ともいえるふたりの姿をご紹介。連載「相師相愛」第55回は、サッカーが結びつけたふたり。
DMM.com COO 村中悠介が語る、立石敬之
日本のサッカーのためにヨーロッパに拠点をつくる。チームのオーナーになる。そんな構想を提案してくださったのが、立石さんでした。日本企業が海外のスポーツクラブを持つなんて、仰天の発想ですよね。でも、どうやって利益を追求してやっていくかも考えておられて。初めて話をした時、サッカー関係者というより企業経営者と話しているみたいでした。
それからすぐにヨーロッパに何度も飛んで、代理人を探し、会計事務所に収益構造を聞き、クラブとも交渉し、ベルギーのチームに絞りこんだのは1年後。ここまでできていないと、最終的な意思決定はできないんですよ。でも、やりたかった。これも立石さんが、いけると思わせてくれたからです。
そして実際に有言実行されるわけです。数字においてもそうですし、日本人選手がたくさんやってきて実績をあげたこともそう。言われていたとおりになったのは、本当にすごい、と思います。早くまたベルギーに行きたいです。
立石さんと出会ってから、サッカーの見方は、すっかり変わりましたね。ニュースに出てくる話の裏側を聞けたのも勉強になった。これは他のヨーロッパの国もそうですが、ベルギーリーグは半分くらいが、外資がオーナーになっています。国を越えて、サッカーをビジネスとして捉えている人が増えているんです。特にアジアの企業。そしてDMMも、その一員になれた。
今後は日本企業がもっともっとスポーツクラブを持つようになったら、と思っています。この流れを、自分たちだけで終わりにしたくないですから。
シント=トロイデンVV CEO 立石敬之が語る、村中悠介
フットワークもいいし、新しいものに対する探求心も強い。何か変えてやろうという空気がある。初めてお会いして話をした時、そう強く感じました。ずっと構想していた日本企業が海外のクラブのオーナーになるプロジェクトは、この会社ならできる、と思いましたね。
ただ、当時の僕はFC東京のGMでしたし、現地には誰かに行ってもらえたらと考えていたんです。ところがチーム候補が絞りこまれて、亀山敬司会長に説明する機会をもらった時、「これは誰がやるのか」と質問が出て。同席していた村中さんが、堂々と「立石さんです」と。事前に何の相談もなく(笑)。驚きましたが、ノーとは言えず、腹を決めるきっかけにもなりました(笑)。
そして、村中さんは難しい現地での交渉を乗り切った。コロナ前まではベルギーに来ると、現地のスタッフに料理を振る舞ってくれていたんです。日本風の焼肉。タレやらポン酢やら、調味料を持ってきて。現地の肉屋で薄く肉をスライスしてもらって。また、楽しみにしていますよ。
何にでも柔軟で推進力、スピード感がすごいんです。スポーツ界やエンタメの世界にいると、暗黙のルールで動いてしまいがちなんですが、村中さんは縛られないんですよ。実際、チームはサッカー以外でも収益基盤を作っています。これは勉強になるところですね。コロナで無観客になるなど大変ですが、これからこうしようかな、というものもイメージできています。
お互い食べることが好きなんですが、現地でも店を見つけてくれるのは、村中さん。ITを駆使した検索能力は本当にすごいです。また村中さんは、私の娘のゲームの対戦相手にもなってくださっています(笑)。
Yusuke Muranaka(右)
1979年生まれ。2002年に入社。’11年の取締役就任後、多くの事業を立ち上げ、現在50以上ある事業を統括。’17年シント=トロイデンVVの経営権を取得。
Takayuki Tateishi(左)
1969年生まれ。FC東京などでプレイ。引退後、コーチなどを経て2015年からFC東京GM。’18年からベルギー1部リーグに所属するSTVVのCEOに。