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2021.02.18

プロレス高木三四郎「ベンチャースピリットで新日本プロレスと闘う」

いまプロレスがアツい。試合の配信やドラマも話題。オールドファンから若い女性、メジャー団体からインディー団体まで盛り上がっている。サイバーエージェントグループ傘下で、DDTプロレスリングとプロレスリング・ノアの二団体を統括するサイバーファイトの高木三四郎社長に、これからプロレスをどう変えていきたいか、話を聞いた。

プロレス

『俺の家の話』のプロレスシーンを監修

宮藤官九郎脚本のドラマ『俺の家の話』(TBS系、毎週金曜22:00~)。主役の長瀬智也さんが演じるのは、能楽の宗家に生まれながら家出したプロレスラー。役作りのため体重を13kg増やし、リング上ではハンドスプリング(跳ね起き)から対戦相手の頭を両脚で挟み込んで投げ飛ばすなど、長瀬さんの圧巻の演技が視聴者の間で話題だ。

そのドラマのプロレスシーンを監修しているのがガンバレ☆プロレス。そのインディー団体が属するDDTグループを率いる高木三四郎氏は、現役のレスラーでもありながら、経営にも携わることから、ファンの間で「大社長」とよばれている。そんな高木大社長が現在のプロレスについて語った。

プロレス

「プロレスの現場では、長瀬さんをなんとかしてデビューさせられないかと言われているくらい、相当センスがいいと評判です。ドラマの収録に入る前、役作りのために道場に練習に来られていたのですが、そのときに指導したレスラーが『長瀬さんはすぐにリングに上がれますよ』って。とにかく勘がいいらしいんですよ。教えたことがすぐにできてしまう。あと、バラエティでも活躍されているからか、アドリブ力もある。プロレスって、結構アドリブを要求されるところもあったりするので。

ドラマに登場する『さんたまプロレス』というのは、いわゆるインディー系とよばれる団体で、メジャーな新日本プロレスや全日本プロレスとは違う独特の文化がある。インディー団体ってレスラーとお客さんの距離感がすごく近い。ファンサービスでも、選手が自ら売店に立って物販を行ったり。試合会場もコンパクトだから、とにかくレスラーがいつも目の前にいるんです。あと、自由度の高さもインディー系の魅力。プロレスってリング上でやらなきゃいけないという概念があるのですが、僕らのDDTはそれを取っ払い、場外乱闘の延長という考えで、『路上プロレス』といってリングのないところでも闘ったりする。2019年にはサイバーエージェントの本社があるアベマタワーズでも試合を行いました」

――DDTは、そのサイバーエージェントのグループに属しているそうですが、なぜサイバーエージェントだったのでしょうか。

「ずばりベンチャースピリットですよね。DDTは1997年に旗揚げしたのですが、いわゆるメジャー団体ができないこと、やらないことに挑戦してきました。大手だと自由にできないじゃないですか。やっぱりベンチャーの心を持っているというところが大きい。サイバーエージェントも創業して20年強、いまや大企業だと思うんですけど、会社の風土にベンチャースピリットを感じるんです。よく言われるプロジェクトを若手社員に任せるのも、すばらしいじゃないですか。

DDTがサイバーエージェントのグループに参加するようになったのは2017年。その前に新日本プロレスがブシロードの傘下に入って、成功したんですよね。もともとプロレスって個人商店みたいなところがあって、会社として組織化されていませんでした。マネジメントしているのがトップレスラーで、昔の新日本プロレスは『アントニオ猪木商店』だし、全日本プロレスは『ジャイアント馬場商店』、ノアは『三沢光晴商店』でした。でも、そのトップがいなくなってしまうと会社としてはうまくいかなくなる。僕もDDTをやってきて、このままでは個人商店で終わると思ったんです。もっと組織化、企業化する必要が絶対にあるなと。そんなとき、サイバーエージェントの藤田晋社長と会食の機会があって、その際にスマホに路上プロレスから両国国技館の試合まで動画をいろいろ仕込んで、見ていただいたんです。『これは面白いですね』と。だから僕は『サイバーエージェントのグループの元できちんと企業化して、もっと大きくやっていきたい』とお伝えしました」

プロレス

――高木大社長は、DDTだけでなくノアの社長も兼任しているんですよね?

「はい。今、新日本プロレスが国内ナンバー1というなかで、DDTとしてそこにどう立ち向かっていくか、それを考えた結果です。DDTはプロレスという世界の中ではエンタメ色が強い亜流な団体だったのですが、新日本プロレスに真っ向から対抗するには、王道的な要素も必要だと。DDTとノアがスクラムを組んだサイバーファイトとして、新日本プロレスと闘いたいと思ったんです。三沢さんにはお世話にもなったので。

そもそも僕はDDTの、いわゆる文化系プロレスといわれるようなスタイルのプロレスにこだわっていると思われているみたいですが、そんなことは全然ありません。DDTのなかには『俺の家の話』のプロレスシーンを監修しているガンバレ☆プロレスもあれば、東京女子プロレスもあります。それぞれの相乗効果で売り上げを伸ばし、またコストを抑えるところは抑えて、サイバーファイトという会社を成長させていきたいですね」

プロレスはデジタルエンタテイメントに移行する

――高木社長はこれからもレスラーと社長の両方をやっていくのでしょうか。

「僕のなかでは、実はレスラーとしては2020年が潮時かなと思っていたんです。マネジメントとレスラーが一緒になるのはやっぱりよくない。でもコロナになってしまって、もうちょっと先に延ばしています。

でも、僕が両方をやってこられたのは、レスラーとしてはトップではなかったから。身長が180㎝以上あって、もうちょっとテクニックがあればよかったんだけど、そうではなかった。プロレスって自分が一番強い、という人の集まりなんですが、自分はそう思えなかったんですね」

――プロレスだけでなく、エンタメはコロナの影響を思いっきり受けていると思いますが、今後はサイバーファイトでどんなことをやっていきたいと考えていますか?

「オンラインの需要を伸ばしていかなければいけません。アメリカのWWEはWWEネットワークという動画配信サイトを運営しています。普段、興行を行えば飛行機の移動などで経費がかさむのですが、今は安い体育館を借りて改修工事をして毎週のようにショーを開催している。これがうまくいっているんですね。僕たちもライブエンタテイメントからデジタルエンタテイメントに移行しなければならない。僕はプロレスとオンラインは相性がいいと思っています。例えば、関ヶ原や川中島で試合をするのはどうでしょう。ロマンがあると思いませんか。こういった場所に観客を入れてやるとなると難しいのですが、観客なしの配信だったらできる。東京ドームだって、観客を入れなければ警備の人件費はかからないし、そもそも配信だけだと使用料も相当安い。何事もポジティブにとらえて、できることをやっていきたいです。

今、プロレスはアツいですよ。80年代、90年代に見ていた人、最近の新日本プロレスを見た人。女性ファンも増えています。そして、王道スタイルからエンタメ色の強いものまで、バラエティに富んでいます。サイバーファイトにも武藤敬司選手、秋山準選手という二人のレジェンドレスラーが入団しました。ベンチャースピリットで、プロレス界のナンバー1を目指します」

プロレス

Sanshiro Takagi
1970年大阪府生まれ。’95年プロレスデビュー。主なタイトル歴に、KO-D無差別級(6回)、DDT EXTREME級(2回)などがある。「路上プロレス」やアイドルとのコラボレーション興行を行うなどして、各業界から注目を浴びている。著書に『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』『俺たち文化系プロレスDDT』がある。得意技はシットダウンひまわりボム、ぶっこ抜き雪崩式ブレーンバスター。

TEXT=八木基之(ゲーテ編集部)

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