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2021.02.02

佐藤可士和展が2月3日に開催! その思考の源泉は幼少期にあった

佐藤可士和の集大成ともいうべき個展が国立新美術館にて開催される。それは思考や概念をひとつの形として表現すると同時に、これまでの仕事と人生を顧みたものとなっているという。佐藤がその55年にわたる軌跡を語る。インタビュー前編。

佐藤可士和

絵の才能が開花。幼い頃からロゴに執着

幼稚園の年長時、五線譜とト音記号を描く課題がありました。僕はすぐに描けて、ダントツに上手かった(笑)。時間が余り、五線の間をクレヨンで色分けしていたら、先生が紙を持ち上げたので「よけいなことをして叱られる?」と思ったのですが、他の先生にも見せて「すごい」と廊下に貼りだしたんです。その時に僕は「自分は絵が描けるんだ!」と認識しました。

小さい頃から絵を描くことが大好きな子供で、建築家である父親の図面や、大学教授の祖父の原稿など所構わず絵を描いていた。母親が「待って、待って」と言いながら紙を差しだすので「マッテ」が「紙」の名前だと思っていました。

小学校時代は漫画に夢中で、『天才バカボン』や『デビルマン』が好きでした。友達がコマ割りして漫画を描く横で、僕は“天才バカボン”というタイポグラフィとその週の漫画のストーリーを象徴するトビラが好きで描いていた。今考えると広告のポスターに通ずるものがあります。僕は本物のように描きたくて、鉛筆で下書きした後、マジックで墨入れするほどこだわって仕上げていた。皆からは「先生」と呼ばれ、休み時間になると友達が「ノートにバカボン描いて」と僕の前に列をなすほど上手かったです(笑)。

9歳の時に制作した「宇宙」

9歳の時に制作した「宇宙」。色の配置や構図のバランスが小学生とは思えない。

1970年代、小学生に人気なスポーツは野球。だけど子供心に「サッカーをやるほうがお洒落だ!」と。実はサッカーに興味があるというよりは、アディダスのウインドブレーカーとスニーカーが欲しかった(笑)。3本のラインとロゴがついていることで「他とはまったく違う!」と強く感じていたんです。そうしたら母親が「これではダメなの?」と似たようなものを買ってきた。「違う、それじゃ意味がないんだ!」と、散々粘り、本物を手に入れました。ロゴがついている箱やタグがカッコよくて、自分の教科書やノートもアディダス製にしたい、と思ってコンパスと定規を使いロゴを描いていました。ロゴがつくか、つかないかでモノの価値が変わる。子供ながらにブランドの価値を感じていました。

自宅は建築家の父親が設計。三角屋根で天井に梁(はり)がある家でした。1階に祖父母、2階に父母と弟、妹で暮らしていたのですが、とても広い空間に感じていました。それもそのはずで、2階は大きなワンルームだったんです。部屋が分かれておらず、リビング、ダイニング、寝室、書斎はゆるやかに家具で仕切られていた。すごくオープンな設計で、閉塞感のない面白い家だった。

また小1から剣道を習っていたのですが、これも剣道というより、その空間が好きだったから。いつも早めに行って、誰もいない広い板張りの道場の真ん中に寝転んで高い天井を眺める。ひんやりした床と凛とした空気が好きで、正直、剣道の稽古は辛くて嫌いでした(笑)。

僕が大きな広い空間に惹かれる原点は、そんな子供の頃の環境にあり、空間に身を置く心地よさが今の空間づくりにもつながっているのだと思います。

佐藤可士和

ドローイング作品「FLOW」は、「ARITA 400project」のゲストアーティストとして作品を制作する過程で生まれた。岩絵具を用い、スプラッシュペインティングによる動力と重力で描く筆跡がない作品となっている。

子供ながらに整理することに目覚める

『佐藤可士和の超整理術』(2007年)という本を書きましたが、子供の頃は例にもれず、散らかし放題。母親からは毎日「片付けなさい」と怒られていました。でも小3のある日、初めて遊びに行った友達の家で衝撃の体験をしたのです。その友達の机の上には教科書とノートが背の高い順にビシッと、さらに芯を鋭く削った鉛筆が長い順に並んでいて、最後に消しゴムが置いてあった。おもちゃも綺麗に箱に収められ、子供部屋とは思えないほど猛烈に整理されていた。「自分の部屋や他の友達とはまったく違う」と、その友達が大人っぽく見えてカッコいいと思いました。

その日、家に帰ってすぐさま漫画本を整理しはじめました。棚から全部出し、『ドラえもん』を1巻から順に並べたところ2冊ほど帯が見つからない。「歯抜けになってカッコ悪い……」。しばらく考え、帯を全部外して並べたところ「ビシッと決まった!」と感じました。他の本も並べたら本棚が見違えるようになった。そこから次は筆箱、机の中、最後に部屋全体の整理。それが今にいたるという感じです。整理に目覚めた瞬間でした。

人生のなかでの大きなターニングポイントのひとつが大学受験。絵はずっと好きでしたが、まだ自分の進路や職業とは結びついていなかった。高2で文系か理系かを選択しろと言われ、いろいろ考えたけれど、行きたい学部がひとつも思い浮かばない。たまたまクラスに美大を受ける友人がいて「可士和もお父さんが藝大だし、いいんじゃない」と言われ、自分のなかで初めて美術系という選択肢が生まれました。

明日、2月3日に後編のインタビューが続きます。お楽しみ!

佐藤可士和展

東京近郊に借りた300坪の倉庫に展示室と同じ高さの壁を作り、床も極力近い素材に。2年半かけて原寸シミュレーションを行った。

佐藤可士和展
会期:2月3日(水)~5月10日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京都港区六本木7-22-2)
TEL:03-5777-8600
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:火曜、2/24(2/23、5/4は開館)
入館料:¥1,700
詳細はこちら
※日時指定入場制。ウェブにて事前に要予約

TEXT=今井 恵

PHOTOGRAPH=高島 慶(Nacása & Partners)

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