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2020.12.06

『冬の狩人』刊行記念インタビュー。作家・大沢在昌が41年間小説を書き続けてこられた理由

ハードボイルド作家・大沢在昌が描く『狩人』シリーズは、累計200万部を超える大人気シリーズ。6年ぶりとなる待望の最新作『冬の狩人』が、今年の11月に上梓された。作家生活41年となった大沢氏に執筆スタイルや作家としての生き方について話を聞いた。

警察組織、闇社会をリアルに描ける作家として定評がある

「これまで約100作の小説を書きましたが、僕はロケハンやリサーチをほとんどしません。もともと取材が嫌いだし、銃や麻薬の知識は豊富に持っているしね。以前、麻薬取締官から『日本でいちばん薬物に詳しい作家』と言われたこともあるくらいで。

『冬の狩人』に出てくる人物、街、バーなどは、すべて空想の産物です。なのに周囲からは、裏社会の知り合いが多いと思われている。困るのは、銀行で口座を開設する時なんかに、「先生、念のため確認させていただきますが、反社とのお付き合いは……」と探りを入れられる。ないよ、そんなもん(笑)。

でも、なぜか、僕の作品は警察関係者や暴力団関係者から人気が高い。刑務所の図書館で、僕の作品が群を抜く人気だと聞いたこともある。警察官とやくざっていうのは明確に善と悪に分かれているわけではなく、それぞれに家族や恋人がいて、いろんな事情を抱えている。やくざを描くにしても、ただ悪者にしないところが支持される理由だと感じます。

今年はコロナの影響もあって、早起きになりました。夜遅くまで飲みに行くことがなくなり、朝7時頃には目が覚める。9時から11時くらいまで原稿を書いて、それで仕事は終わり。ごはんを食べて、昼寝をして、13時くらいに『これから何をしようか』と考える。たいてい車で商店街や地方のファーマーズマーケットに行って、食材を買いこんでくる。料理を作るのが好きなんですよ。

僕は切り替えを大切にしています。仕事をしている時は仕事のことしか考えない。仕事部屋の机に座ったら集中して原稿を書くだけ。逆に、料理を作る時は料理のことしか頭にない。だから、料理を作りながらいいアイデアがひらめくなんていうことはめったにありません。何事もスパン、スパンと切り替えていきます。

作家生活41年で、締め切りを破ったことはない。僕は原稿を書きためておくタイプではないけど、締め切りだけは厳守する。一度も落としたことはありません。ただし、『何事にも初めてはあるからね』と言うと、担当編集者はたいていビビります(笑)」

才能と素材が尽きるまで書き続けていく

「小説を書いて41年間、女性の好みは変わらないですね。脚がきれいな人。そしてハードボイルドな生き方を貫いているとなおいい。そもそも女性はハードボイルドが似合うんです。女性には『ガラスの天井』がつきまとい、強く生きるしかないから。僕は女性を描く時に、女性の気持ちになりきって書く。原稿用紙に向かいながら、『なめてもらっちゃ困るわよ』なんて女性口調でセリフを呟いたりしています(笑)。

僕の好みは変わりませんが、時代は変わりました。現代は生きるのが難しくなったなって感じます。体育会系のノリが通用しないし、一度の失敗をなかなか取り返せない社会になった。そうした社会だから、臆病になり、本音を言えず、やんちゃもできない。やんちゃができるのはSNSのようなクローズドな世界のみ。それじゃあ、成長できるわけがない。

やんちゃっていうのは大事なことなんです。僕も若い時は、相当やんちゃをした。六本木の高級レストランに一張羅で出かけて粋がって過ごした。周囲からは『なんだ、あのガキは』と思われていたはず。その積み重ねで、ある日『オレ、かっこ悪かったな』と気づく。それが成長なんですよ。背伸びすることで本当のかっこよさに近づけます。

結局のところ、要は自分です。生き方に悩んでいるなら、頭がねじ切れるくらい悩み抜けばいい。その悩みを解決できるのは自分だけですから。そして右に行くと決めたら、右に行くしかない。それでダメだったら、他の道を探ればいいんです。

作家という仕事は人気商売です。人気が落ちたら、『はい、さようなら』の世界。でも、それは怖くない。僕がそういう世界を選んだのだから。今あるものを倒し、次のダンジョンに向かっていく。その繰り返しを続けていくだけです。今の仕事よりも稼げる職業なんて僕にはない。だから才能と素材が尽きてダメになるまで、読者が面白がってくれる作品を書き続けます」

冬の狩人

『冬の狩人』
大沢在昌
¥1,800 幻冬舎
3年前にH県で発生した未解決殺人事件、「冬湖楼事件」。その行方不明だった重要参考人からH県警にメールが届く。新宿署の刑事・佐江による護衛を条件に出頭を約束するというのだ。しかしH県警の調べでは、佐江はすでに辞表を提出している身。そんな所轄違いの刑事を“重参”はなぜ指名したのか? H県警捜査一課の新米刑事・川村に、佐江の行動確認(こうかく)が命じられた――。

Arimasa Osawa
1956年、愛知県名古屋市生まれ。’79年『感傷の街角』で小説推理新人賞を受賞しデビュー。’91年に『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門を受賞。’94年『無間人形 新宿鮫IV』で直木賞、2014年に『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞する。その他に『北の狩人』『砂の狩人』『黒の狩人』『雨の狩人』『漂砂の塔』『帰去来』『暗約領域 新宿鮫Ⅺ』など著書多数。

TEXT=川岸 徹

PHOTOGRAPH=倭田宏樹

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