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2020.08.03

「MBAの学生と先生」井潟正彦×我妻陽一 対談

師匠か、恩師か、はたまた目をかける若手か。相思相愛ならぬ「相師相愛」ともいえるふたりの姿をご紹介。連載「相師相愛」第48回は、教師と社会人学生。

相師相愛48

野村資本市場研究所常務、立教大学経営大学院客員教授 井潟正彦が語る、我妻陽一

課題のレポートを書いてもらうと、堅い金融の話も自分が電気工事会社で関わっている職人の話題にからめて書いてくるんですね。我妻さんはその世界の課題がはっきりと見えていて、私自身、知らない世界でしたから、とても勉強になりました。

我妻さんが何かをやろうとしているということは知っていましたが、卒業後すぐに起業したと聞いた時には、びっくりしました。本当にスタートアップを始めたんだと。しかも、自分が気づいていた社会課題をしっかり解決できるビジネスモデルで、です。そこから約2年でユーザー数が13万事業者ですから、本当に大したもんだと思います。

やっぱり物事を決めたりするのが、早いんですよね。フィンテックとDXについて授業で取り上げましたが、やろうと思っていますと連絡が来たと思ったら、重層構造で支払いの遅い業界で、工事代金の支払い代行のサービスを本当に実現させてしまっていました。さらなる成長を、楽しみにしています。

改めて思うのは、授業のレポートに当時書いていた「建設職人を支える」を、今も変わらず言い続けていることです。やろうとしていることが、何年経っても変わらない。それは仕事人として、素晴らしいと思います。そして、思っている通りに、会社が進んでいるんです。

今では年に1、2度、授業に来てもらって、話してもらっています。先輩に、こんな人がいるんだという事実は、学生たちにはとんでもないパワーを生み出していると思いますね。

これからも最先端、最前線の話をぜひ聞かせてほしい。私自身にも、大いに勉強になります。

助太刀代表取締役社長兼CEO 我妻陽一が語る、井潟正彦

29歳で電気工事会社をつくって約10年経ち、レガシーなビジネスにモヤモヤして、立教大学のMBAに行くことにしたんです。そこで出会ったのが、井潟先生の証券経済論でした。

ちょうどアメリカのスタートアップベンチャーが話題になり始めた頃。先生の授業を受けていて、自分がやるべきはまさにこれだ、とはっきりわかって、卒業後すぐにベンチャーをつくりました。

先生は起業後も、時々会社に来てくださって。その後、約13億円の資金をエクイティで調達したんですが、何度目かのラウンドの時、忘れられない出来事が起こりました。

大きな額の投資の話が来て舞い上がっていたら、たまたま先生が会社にお見えになったんです。こんな話が来たんです、と概要をお伝えしたら、急に顔が曇りました。「オレの息子だったら、バカヤローと言う。条件をちゃんと確認したのか」と、2時間説教されて。厳しいことも言ってもらえるって、なかなかないんです。本当にありがたい思い出です。

イノベーティブなビジネスアイデアを作り、VCからエクイティファイナンスを受け、彼らのネットワークも活かして急激に成長させ、社会を変える。日本の職人、一人親方の世界でこれをやるんだ、と決断できたのがMBA時代。通ったことは、大きな転機でした。

先生には、いろんなアドバイスをもらうだけでなく、自分ではまず会えないような人を紹介してもらったりして、たくさん応援をいただいています。すごい人たちに会うと、やっぱり目線が上がるんですよ。

ボロボロのオフィスの頃から知っていただいているのが先生。これからも、よろしくお願いいたします。

Masahiko Igata(左)
1963年生まれ。'91年シドニー大学MBA取得、野村総合研究所入社。2017年から現職。’16年より立教大学経営大学院特任教授、’20年より同大学院客員教授を兼務している。

Yoichi Wagatsuma(右)
1978年生まれ。きんでんで電気工事施工管理業務に従事。電気工事会社を約10年経営後、2015年立教大学MBA入学。卒業後に建設業界向けのマッチングアプリを手がける助太刀を創業。

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連載
相師相愛

師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ、相“師”相愛ともいえるふたりの姿を紹介する。

TEXT=上阪 徹

PHOTOGRAPH=杉田裕一(POLYVALENT)

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