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2020.07.17

大谷翔平が自らのキャッチボールを通訳に撮影してもらう理由とは?【実践的行動学㉑】

幾多の試練を乗り越えながら、着実にスーパースターへの階段を上り続けるメジャーリーガー・大谷翔平。超短縮開催となる今シーズン開幕に向け、アメリカで準備を整えている。今だからこそビジネスパーソンが見習うべき、大谷の実践的行動学とは? 日本ハム時代から"大谷番"として現場で取材するスポーツニッポン柳原直之記者が解き明かす。

やっぱり数多く投げるのはキャッチボール

熱心な野球ファンでなくても気づいている方々は多いだろう。近年、いわゆる「プロ注目」ではないアマチュア投手でも140キロ台の速球を投げるシーンを見ることが多くなってきた。150キロに迫る投球、もしくは、150キロを超えないと全国的には注目されなくなってきた時代に突入している。

野球担当の記者という仕事柄、知人から「なんで昔より速い球を投げられる選手が増えたのか?」と聞かれることが多い。その理由としてトレーニングの進化はもちろん、インターネットで最新の情報を簡単に得られやすくなったことがあるだろう。YouTubeなどの動画投稿サイトでは日本のプロ野球やメジャーリーグの超一流のプレーをすぐに見ることができる。また、スマートフォンのカメラ性能が向上し、フォーム分析が容易になったことも一因かもしれない。

では、日本最速165キロを誇るエンゼルスの大谷はどのようにその投球を磨いてきたのか。今月13日の2度目の紅白戦登板後のオンライン会見。米メディアから「投手の調整方法」について問われると、次のように答えている。

「一番、大事なのはキャッチボールです。傾斜の感覚だったりブルペンも大事ですけど。やっぱり数多く投げるのはキャッチボールなので、そこが一番、フィーリングを確かめるのは大事かなと思います」

基礎中の基礎練習かもしれない。ただ、その基礎をあえて例に挙げたのがいかにも大谷らしかった。

大谷はキャッチボールを行う際、スマートフォンで水原一平通訳にフォームを撮影してもらっていることが多い。キャッチボールの相手役の後方から、投げる大谷の後方から、大谷の正面からなど細かく撮影してもらっている。かつて、その理由については「ある程度、大げさに(フォーム変更を)やっても、あんまり見栄え的には変わっていなかったりとか。客観的に見ているものと主観がちょっと違かったりするので。そういうのはやっぱり(スタッフなどに)見てもらったりとか、(スマートフォンで)撮ったりしないと分からないかなと思います」と語ったことがあった。重要なのは客観的視点。正しいフォームで投げれば良い球を投げられる、自然と速い球を投げられるというシンプルな思考だ。

日本ハム時代から150キロを下回る速球を投げれば「何かアクシデントがあったのでは?」と心配する声が挙がるほどで、近年の野球界でも大谷は異次元の世界にいた。幸いなことに所属するエンゼルスのミッキー・キャロウェー投手コーチによれば、紅白戦に登板した7月13日の球速は94~96マイル(約152~154キロ)。これまでの2試合で打者25人に12四死球と制球に課題を残すが、パワフルな右腕の振りが戻ってきつつある。

米メディアなどによれば、24日(日本時間25日)の開幕・アスレチックス戦はDHで出場し、26日(同27日)の3戦目の初先発が有力。大谷の投球をテレビや動画投稿サイトで見た野球少年たちが、更なる進化を遂げる。そんな日々が再び始まろうとしている。

TEXT=柳原直之

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