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2020.03.29

【松浦勝人】「アーティストを守るのが僕の仕事。これからも闘っていく」

【画像】matsuura

偽善の正義

新型コロナウイルスの影響で、期限つきですべての公演の開催を自粛することにした。今後は、状況を見てということになる。

この新型コロナの問題が起きてから、公演についてずっと考えていた。観客の安全を考えて中止にすべきではないか。中止ではなく、延期にはできないのか。

2月26日、政府からの要請があったその日、すでに予定されていたコンサートがあり、間に合わず、中止することができなかった。スタッフ全員の健康状態を確認し、除菌、手洗いを徹底して開催することになった。来場を控えるお客様には、チケットの払い戻しをお約束した。でも、かなりの方が来場し、コンサートを楽しんでいかれた。やっぱり、このような時でも楽しみたいという気持ちはあるのだと思う。

僕たちは以前からバーチャルライヴの仕組みを開発している。この開発も加速させて、スマホやPCで、どこからでもライヴに参加できる環境を少しでも早く提供できるようにしたい。また、YouTube公式チャンネル「エイベックス・チャンネル」では、3月いっぱい、所属アーティストのライヴ映像を無料公開することにした。こういう時でも、こういう時だからこそ、エンタテインメントを届けることを止めたくない。

ここからは愚痴。たまには僕だって、愚痴を吐きだしたくなる。政府要請があった1週間ほど前、あるコンサートが中止に踏み切った。それを知って、エイベックスも公演の自粛を検討しなければならないと思った。でも、その時、思ったのは「叩かれたくないな」ということ。そんなことを考えるべきではない。観客の安全と、僕たちの使命ということから考えていかなければならないのに、「やると叩かれる」ということが頭をよぎってしまう。

公演が中止されて怒る人の気持ちはよくわかる。チケットを払い戻してくれても、気持ちは収まらない。なかには、遠方から新幹線や飛行機を使って、宿泊するホテルを予約して来てくれる方もいる。何より、ずっと前から楽しみにしていて、それが突然奪われることに文句のひとつも言いたくなるのは当然。本当に申し訳ないと思う。

でも、公演を中止せずに、安全対策をとったうえで開催しても炎上する。見たい人は安全対策をしたうえで楽しめばいいし、リスクを感じる人はチケットを払い戻しすればいい。誰も経験したことのないことだから、賛否両論あるのは当然。でも、批難の声を必要以上にたきつけているのは、なんの責任も関係もない人なのではないかと思ってしまう。

昨年から、アーティストや芸能人が、違法薬物の使用で逮捕され、多くの人から批判を受けている。その批判のほとんどはそのとおり。ご迷惑をおかけしてしまった方々には本当に申し訳ないと思う。薬物なんか絶対やるべきではないし、アーティストや芸能人は大きな影響力を持っているということを自覚しなければならない。

でも、昨年末にツイッターで「年末にひとこと」と題して書いたことだけど、過去の偉大なアーティストたちは、多くが薬物を体験している。ビートルズはLSDを使うことで、アルバム『リボルバー』のような前衛的な作品を残し、アンディ・ウォーホルは、薬物で得た体験を創作に活かしていた。

だからやっていい、などと言うつもりはもちろんない。当時はすべての薬物が違法だったわけではないし、時代が違えば、国も違う。でも、歌手に限らず、アーティストというのは、常に刺激的な体験を求めている。そういう刺激がなくても、自分の内面だけから次々と偉大な作品を生みだせる天才もいるのかもしれないけど、僕はそういう天才に出会ったことがない。皆、常に刺激的な体験を求めて、それによって素晴らしい作品を生みだしている。

大切なことだから、何回も言うけど、だからといって薬物を使っていいとは思わない。それは絶対にダメと決まっていて、議論の余地はない。ただ、アーティストというのは常に刺激的な体験を求める、そういう姿勢が秀す ぐれた作品を生んでいくのだということはわかってほしい。

刺激的な体験というのは、薬物だけじゃない。恋愛も刺激的な体験だし、お酒を飲んで騒ぐのも、僕のようにSNSで本音を吐きだすこともそのひとつかもしれない。でも、今の日本では、そのどれもが叩かれる。法律だけでなく、道徳とか倫理に少しでも反すると叩かれる。それで活動自粛や、場合によっては引退しなければならなくなる。

批判されることは仕方がない。でも、本当の話が伝わっていない。メディアは、断片的な真実を切り取って、推測でそれをつなぎ合わせて、真実とはまったく違ったイメージをつくり上げてしまう。たぶん、本当の姿とギャップがあればあるほど、反響があるのだろう。どんどん、本人とは違うイメージがつくられていき、そのかけ離れたイメージに対して世間の人が叩く。これはきつい。

’90年代後半、小室哲哉さんの楽曲がヒットチャートを占領した頃、メディアは人気者になった小室さんのことをさまざまに書き立てた。やはり、真実の切り取りと推測を組み合わせて、真実の小室さんとはまったく違うイメージが捏造されていた。僕は、本当の小室さんの姿を伝えてくれと、メディア対策をずっとしてきた。そうしたら、今度は、僕自身もあることないこと書かれるようになった。本当の話が少しだけ入っている。それを盛って盛って、切り取って、噓になる。

そういう「噓」とずっと闘ってきた。日本はこんな素晴らしい国なのに、すごく不寛容だ。海外にでも脱出して、のんびり暮らそうかとも思う。

で、愚痴は終わり。アーティストを守るのが僕の仕事。時々愚痴るかもしれないけど、これからも闘っていく。そのやり方を考えている。

TEXT=牧野武文

PHOTOGRAPH=有高唯之

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