師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。連載「相師相愛」第45回は、高校野球部の先輩と後輩。
積水ハウス代表取締役社長 仲井嘉浩が語る、西脇隆俊
私は洛星高校の27期生なんですが、14期で硬式野球部ができたんです。それから間もない17期に、府予選でベスト8に入りました。その時のエースが西脇さんなんです。小さな巨人・西脇、針の穴を通すコントロール、というのが部の伝説になっていました。おまけに文武両道で、現役で東大に入られた。野球部に入ってすぐに、「こういう先輩がいる野球部なんだ、君たちもそうならないといけない」と監督には卒業するまで言われ続けました。
卒業後、私が20代のころ野球部のOB会で初めてお会いして、お酒もご一緒して、ゴルフコンペにも一緒に行かせていただくようになって。伝説の人なので緊張していたんですが、ものすごく誠実で公正でユーモアがある人なんです。楽しすぎて、話がまったく尽きなくて。
今はお仕事もご一緒するようになり、私どもがオーナーのザ・リッツ・カールトン京都の5周年パーティにもゲストで来ていただきました。今度は野球部の練習を見に行きたいですね。
西脇さんの時代から今も続けられている監督は、人生を学んだ尊敬する恩師です。野球のことのみならず、たくさんのことを教わりました。口癖は「黙々と」。やりきる、やりきれ、と。6時完全下校でしたから、2時間くらいしか練習できないんですが、帰って夕食を食べて1時間勉強してスイングを100本、また勉強してスイング、という3年間でした。
私は関西で就職したこともあって、卒業後も時間があれば、母校にノックしに行ったりしていました。この野球部との関わりが、今もつながっているのがうれしいですね。
京都府知事 西脇隆俊が語る、仲井嘉浩
洛星高校の野球部は団結力が強いんです。年末年始には必ずOB会がある。そしてここで一度、顔を知るとすぐ親しくなってしまうんです。仲井さんは私の10歳年下なのですが、だんだん年齢も気にならなくなっていくんですね(笑)。そのうち気がつくと、野球部のつながりだけではなく、仕事でも顔を合わすようになりました。
全国の道の駅にホテルを造っていく、という積水ハウスの地方創生のプロジェクトでは、京都から宮津市、京丹波町、南山城村の3ヵ所を選んでもらったんですが、なんと一緒に京都府庁で並んで記者発表もさせてもらって。何十年か越しで、いい仕事を一緒にさせてもらえたなぁと思っています。
若い頃から明るい人、そしてつながりを大事にする人です。難しいことに立ち向かう、というスピリッツは野球部仕込みかもしれないですね。監督もまだまだお元気です。後輩がどんなふうになっているか、見てみたいし、今度、ふたりでノックしに行きましょう(笑)。
野球部のつながりの強さは、監督が共通しているというのも、大きいですね。野球の鍛錬についての厳しさというよりも、挨拶や時間厳守など、生活態度とか立ち居振る舞いについて、とても厳しい人でした。この同じ教育を受けている。昔は本当に怖かったですから。今は優しいですけどね。
去年は、京都大会の予選で始球式をやりました。知事は当然、プレートから投げられますよね、と問われて、はい、と言ってしまって。改めて見ると、ホームまでけっこう遠いんですよ。おかげで2週間ほど練習しました(笑)。
Nakai Yoshihiro(左)
1965年生まれ。京都大学工学部卒業後、積水ハウス入社。経営企画部長などを経て、2018年2月より現職。国内外の積水ハウスグループを束ねる。
Nishiwaki Takatoshi(右)
1955年生まれ。東京大学法学部卒業後、建設省入省。国土交通省大臣官房長、国土交通審議官、復興庁事務次官などを経て、2018年より現職。