2009年からスタートした連載も今回で最終回に。約10年にわたりさまざまな世界の仕事人と対談するなかで、滝川さん自身のなかに起きた変化、魅力を感じた仕事人の姿を語ります。
経営者、アーティスト、建築家、ゲストは全員私がお会いしたいと思った方ばかり
私は2009年の9月に『ニュースJAPAN』を卒業して、10月からさまざまな活動を始めました。GOETHE読者の皆さんには、スタジオを出て右も左もわからないところから手探りで進んだ10年余りを、ずっと見ていただいたことになりますね。
今、ゲストひとりひとりの口調を思い浮かべながらバックナンバーを眺めています。これまでお越しいただいた方は総勢105名。最初の頃に緊張した思い出も懐かしいなあ。毎月の対談の時間が大きな楽しみになっていたことを、今改めて実感します。
実はこの連載、もともとは対談ではなく、エッセイとしてスタートしたんです。けれどたいした人生経験もない私に、そう毎月書きたいテーマがあるわけでもなく。編集部と相談して、スペシャル回としてさまざまな分野で活躍するゲストをお招きするようになり、やがてその対談スタイルが定着していきました。
他の番組などでご一緒したことがあっても、まとまった時間じっくりと対峙してお話をうかがう機会って、意外とありません。それはプライベートでも同じです。長い付き合いの友人であっても、ここで初めて聞く話がたくさんありました。
よく「ビジネスの顔は表面的で、プライベートの会話こそ、その人の本質が出る」というような意見がありますよね。でもいろいろなお話を聞いていて、真剣に仕事の話をする時こそ、その人が本当に大切にしているものが浮き堀りになるのだと感じる瞬間が何度もありました。回数を重ねるほどに、対談って深いなあと思います。
ゲストは全員、私がお会いしたいと思った方ばかり。共通点は、自分に限界を課すことなく、常に新しい扉を開いているところでしょうか。なかでも前例のない仕事をしている同世代の女性ゲストからは強く刺激を受けました。例えば、世界の紛争地で兵士の武装解除を行っている瀬谷ルミ子さんや、素潜りで神秘の海に挑むフリーダイバーの岡本美鈴さん、日本初の全寮制インターナショナルスクールUWC ISAK Japanを設立した小林りんさん……。同世代の親近感を抱きつつ、そのチャレンジ精神にはリスペクトの念に堪えません。
GOETHEでこんなことを言うと怒られるかもしれませんが、私自身は全然「仕事バカ!」ではないんです。アナウンサーという職種にもさほど執着はなく、やはりいつも何か新しい扉を開けたいと考えているタイプ。『ニュースJAPAN 』を卒業してからはなるべく仕事を詰めないようにしていたくらいです。というのも、どんなに好きなことでも、自分を見失うほど必死になりすぎたら、空回りして、どこかで車輪が外れてしまうと思うから。
逆に言うと無理なくやってこれたおかげで、仕事がつらくなくなったり、休みたいと考えたりしたこともありませんでした。仕事をしていたからこその出会いや経験はとても多く、自分に欠けたところや、あるいは無自覚でいた優れた部分に気づかせてくれたこともあります。私にとって仕事とは、ひと言で言うと“探求”なんです。もちろん、プライベートでも、知りたいことがあれば調べればいいのだけれど、それが仕事となるからこそ、枝葉が分かれて繋がって、深みを増していくっていう醍醐味がある。
産休期間は社会に出て以来20年ぶりの仕事のない時間になります。これもまた未知の扉。どんな日々になるのか、やっぱりワクワクしています。
この連載では毎月「夢を与える仕事人」あるいは「自己探求を続ける仕事人」もしくはその両方を備えた方の話をうかがえて、私自身が多くの気づきをもらいました。もし皆さんの仕事のヒントにもなれていたとしたら、何より嬉しいです。応援をありがとうございました。またお会いしましょう!