師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。連載「相師相愛」第38回は、事業再生を果たした投資元と投資先。
ビジョナリーホールディングス、メガネスーパー代表取締役社長CEO星﨑尚彦が語る、永露英郎
前職の面談で初めてお会いして、意気投合したんです。リアルビジネスについていろんな話をしたんですが、ものすごく理解してもらえて。そんなファンドの担当者はこれまで会ったことがなかった。難しい状況にあった会社でしたが、一緒に毎週のように会って事業再生にも成功して。その後、メガネスーパーのご縁をいただいて、やっぱり毎週のように会っていました。
常に冷静なコメントが、ビシッと返ってくる。一撃必殺、という印象です。彼は将棋の達人ですけど、あらゆる状況を見て頭のなかでシミュレーションし、まさにここだ、というところを指す。ああなるほど、と感じることが多かった。一方で、人情深さもある。やんちゃな部下を見守ってくださったり。フェアな方ですから、私も包み隠さず、何でも話をしていました。
メガネスーパーは、本当に厳しい状況でしたが、今やメガネ業界で一番強い会社になったと思っています。一緒に頑張って、こうして結果を出せたことは、本当に嬉しいですね。
今は投資先からは離れた立場になりましたけど、さまざまな場面で、「これどう思います?」なんて話をしていきたいですね。「大丈夫ですか、あの会社」なんて話もしたい(笑)。余計な話だったとしても、やっぱり会話を通じて、学びがたくさんありますから。
そして前職も今も、再生のプロセスで仲間が本当にたくさんできました。ぜひみんなで、過去を振り返りながら、未来に向けて何か盛り上がりたいですね。苦しい状況だからこそ、燃える。きっとなんとかなる。そういう思いを共有した、かけがえのない仲間ですから。
アドバンテッジパートナーズ 永露英郎が語る、星﨑尚彦
再建を任せられる経営者を探していたなかで、圧倒的なエネルギーを感じたのが星﨑さんだったんです。前職のクレッジの時は、若い販売スタッフにEBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加算した値)という経営用語を根気強く教えて理解させたり、合宿や遠足を実施したりと、驚くようなアイデアが次々に出てきた。でも、そこには緻密なロジックがあって、しっかり結果に出たんです。
メガネスーパーの社長になってからも、自ら現場に飛びこんで売り場に立ち、レジも打つ。こうやったら売れる、ということを自ら実践する。やってみせるから、説得力が強いんです。そしてみんなを大いに盛り上げていく。お祭りみたいな状態で、どんどん業績が上がっていって、会社が再生していきました。
ドラゴンボールの孫悟空みたいな人ですね。ニコニコしているけど強い。しかも敵が強くなると、本人もどんどん強くなる。周りのエネルギーを集めるのも、本当にうまいんです。
2社で一緒に仕事をして、星﨑さんの仕事を通じて、価値を出すこと、成果を出すことについて、たくさんの学びをもらいました。とにかくリアルな人生を生きている感じがするんです。いつも勝負をしている。真剣勝負が本当に好きなんですよね。そういえば、話をしている時は、歴史や軍人の例えがよく出てきますね(笑)。これがまた、面白いんです。
お互いにこんなふうに話をしたことは一度もありませんでした。改めて、星﨑さんのことがやっぱり好きだったんだなぁ、と思いました(笑)。確認ができてよかったです。
Naohiko Hoshizaki (左)
1966年生まれ。三井物産を経て、外資系企業の日本法人トップに。2012年、アドバンテッジパートナーズからの要請でクレッジの再建を手がけ、’13年より現職。
Hiderou Nagatsuyu(右)
1970年生まれ。マッキンゼーを経て、’98年にアドバンテッジパートナーズに参加。小売りやサービス業を中心に、数多くの再生案件を手がける。