東京・湯島で注目すべき展覧会が開催中だ。文化庁国立近現代建築資料館での「安藤忠雄 初期建築原図展−個の自立と対話」は、世界のANDOの1990年ごろまでの手描きの設計原図を展示。建築好き必見の展覧会だ!
「安藤忠雄 初期建築原図展−個の自立と対話」開催
世界的建築家の安藤忠雄さんが、1969年に自身の建築事務所を開いてから90年代前半へ至るまでの時期に、国内で実現した建築作品の手描き設計図面やスケッチを、一堂に並べた展覧会を開催している。
「住吉の長屋」「小篠邸」「六甲の集合住宅Ⅰ」「TIME’S Ⅰ」「城戸崎邸」「水の教会」「光の教会」……。初期の代表作の原図を目の前にすると、「この図面から、あの名建築が立ち上がっていったのか」と、深い感慨が押し寄せる。
CAD(Computer Aided Design)の略で、コンピューターを使って設計するためのソフトやシステムのこと)導入以前の時代であり、図面がすべて手描きであることも、味わい深さをいっそう際立たせている。
「当時は事務所も小さくて、スタッフ総出で図面を描きました。自分も含めて皆、若くて元気があったから、夜も寝ずに夢中で描き続けた。こうして会場を眺め渡すと、よく描いて、よくつくったなと改めて思います」
そう語るのは、開催を前に会場を訪れた安藤忠雄さんご本人の弁。
会場の国立近現代建築資料館は、日本の建築資料の保存と公開を担うために設けられたもので、安藤さん自身も設立に尽力した。
「日本の建築は、総合的にみて大変レベルが高い。基礎的な資料を伝え残すことは、重要な仕事だと常々思っていましたから」
と、同施設の意義を教えてくれた。このたび展示されている建築図面はまさに、実務上欠かせぬものであるとともに、後世へ残すべき貴重な資料の実例だ。
くわえて図面とは、端的に美しい。線を引いた人の思いがダイレクトに伝わってくる優れた「作品」でもある。会場に身を置いていると、そんな実感も沸いてきた。
安藤さんも今展に寄せて、ちょうどこんな言葉を残している。
「1枚の図面の中に設計者の意思を凝縮させたい。図面は設計者の言葉だ」
なるほど深く納得させられる。建築に全身全霊を傾けてきた建築家のみが話せる「美しき言葉」に、ぜひ耳を傾けてみたい。
安藤忠雄 初期建築原図展−個の自立と対話
会場:文化庁国立近現代建築資料館(東京都文京区湯島4-6-15 湯島合同庁舎内)
会期:2019年6月8日(土)~9月23日(月)
開館時間:10:00~16:30
休み:なし
料金:無料
※土・日・祝日は隣接する都立旧岩崎庭園(一般400円)からのみ入場可能。