師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。第32回は、銀行マンと商社マン。
矢部延弘が語る、東京スター銀行頭取・佐藤誠治
銀行員らしくない、というのが第一印象でした。過去から今日よりも、今日から未来を考えている、という感じ。物言いがストレートなんですよ。慮おもんぱかったり、忖度したりしない。でも、私にはむしろ好感が持てました。ただ、「丸紅はここがダメだ」なんてことも平気で言ってきますから、こちらもカチンと来る(笑)。それで言い返したりして何度もやりとりしているうちに、すっかり親しくなりました。
しかも、ゴルフがちょうど同じくらいのレベルだったんです。こうなると、一緒に行って楽しいわけですね。これも巡り合わせかもしれないと思いました。加えて、ゴルフへの取り組み姿勢が180度違うんです。私は言ってみれば、感性でゴルフをする。だから、適当なんです。彼はいろんな本を読んで研究して、常にフォームを改造していたりする。まるで違う。
対戦成績は五分五分くらいですね。最近、また新しいドライバーを買ったらしい。でも、絶対に負けないですけどね、絶対に(笑)。
(これよりWEB版限定テキスト)
銀行を離れてから、最初に別の会社に行った時は正直、合うのかな、と心配していました。でも、今はチャンスをつかんで新天地に行き、本当にいろんなところで活躍して、ニュースなどでもよく見るようになって。良かったなぁ、と思いますね。もし、あのまま大きな銀行にいても、こうはなっていないでしょう。人生というのは、わからないものです。
これはゴルフでもいえますが、佐藤さんはそう簡単には満足しない人なんです。私も同じで、どんどんハードルを上げたくなる。だから、部下は大変だと思いますよ(笑)。
佐藤誠治が語る、丸紅執行役員・矢部延弘
頭取になった時、最初に来た外部からのメールが彼からだったんですよ。「驚くニュースを発見した」と就任の記事のURLを貼って(笑)。
初めて会ったのは7 年前。三井住友銀行時代のお客様でしたが、ストレートな物言い、出世を気にしない点、酒が飲めない、とにかくよく喋るなど、とてもウマが合った。しかもゴルフがうまい。私もゴルフは自信がありましたから、これはこのままにはしておけんぞ、と。ゴルフに何度も行くうちにすっかり親しくなりました。仕事で出会ってここまで友達みたいな感覚になったのは、まれだと思います。
でも、こういう出世を気にしない人がちゃんと出世する、丸紅という会社はいい会社なんだなぁと思います。東京スター銀行は丸紅と取引がなかったんですが、仕事でも関わりが始まったり、会社間で人材交流することにもなりました。ビジネスでの付き合いもどんどん楽しみになってきて。でも、ゴルフでは絶対に負けないですけどね、絶対(笑)。
(これよりWEB版限定テキスト)
いつも自然体なんですよね。しかも、誰に対してもそう。私もズケズケもの言うので、「佐藤さんはゴマすったことありますか」と真顔で人に聞かれたこがあります。実は記憶にないんです(笑)。そういうところも同じなんじゃなかと思う。意外にストレートにボールを投げ返してこないケースは多いですがビジネスでも何でも、必ず反応が返ってきます。クセ球もありますが(笑)。
ゴルフも自然体。素振りもしないんですから、いつも「え、もう打ったの?」ですよ。それで見事に飛んでいく。仕事もまったく自然体のはずですから、部下は大変だと思いますよ(笑)。
Nobuhiro Yabe(左)
丸紅代表取締役常務執行役員。1960年生まれ。大学卒業後、丸紅に入社。主に財務関連業務に従事。常務執行役員を経て現職。CFO、IR・格付担当役員、投融資委員会委員長など。
Seiji Sato(右)
東京スター銀行代表執行役頭取(CEO)。1958年生まれ。大学卒業後、貿易会社を経て、三井住友銀行入行。バンコク支店長などを経て、常務執行役員。2015年、倉庫会社役員を経て、’17年より現職。