師匠か、恩師か、目をかける若手か、 はたまた一生のライバルか。 第 29 回は、同い年の経営者ふたり。
浜田 宏が語る、小林いずみ
初めて会った時、同じ匂いがしたんですよ。修羅場をくぐった者同士がわかる獣の匂い(笑)。お互い外資系で同じような戦いをやってきたんだな、と。当時、彼女は大きなリストラを実行したばかりのメリルリンチ日本証券の社長でしたが、本当に大変な状況だったはず。でも本人はまったく動じてないし、ぶれない。肩に力も入ってないし、威張ったりもしない。お侍さんみたいでした。胆力すげぇ、なんてハンサムで格好いい人なんだ、と思ったんです。
聞けば20歳の時、ヨットで3ヵ月、南太平洋を航海したという。そこで死ぬのも怖くなくなった、と。実はそのヨットを僕は2012年に始めました。もともとダイビングが好きでよく海へ行っていましたが、潜るのがしんどくなってきて。ヨットと出合って、こんなに面白いものがあったのか、と知りました。潮、風、波など全部読みこんで進んでいく。とにかく頭を使う。
あ、そういえばヨットを始める時、小林さんに何ひとつ聞いてなかったなぁ(笑)。
(これよりWEB版限定テキスト)
日本で大きな組織をマネージし、世界銀行でもキャリアを作った、日本の宝のひとりですよ。僕はどこか大きな組織のCEOをぜひ務めてほしいと思っています。自由に力を発揮してもらう機会を作ることができたら、と。日本の女性で、本当に大きな組織を動かせる人って、他に見当たらないんですから。でも、いずみちゃんならできる。
とにかく、どでかいことをやってほしいんです。ただ、それは僕の片想いですから、友人としては日々楽しそうにしていて、笑ってくれていればそれでいいかな。また、みんなで飲んでワイワイ盛り上がりましょう。
小林いずみが語る、浜田 宏
初めて社長になった後、中学校からの同級生が「同じように外資系の社長になった友達がいるよ」と引き合わせてくれたのが、浜田さんでした。40代前半で社長になっている人は周りには少なくて、この人は自分の状況をすぐに把握してくれるだろう、と直感でわかりました。実際予想どおりだったんですが、最初に会った時は仕事の話なんかまったくしなくて、とにかく楽しく飲んで(笑)。以来、昔からの友達みたいに、同じような環境で過ごしている同志みたいにして過ごしてきました。
世界銀行への転身を相談した時も、「別に細かいことはいいじゃん、やれよ」という、おそらくそう言うだろうな、と思う言葉がすぐに返ってきたんです
昔は毎週のようにヨットで海へ出ていたんです。次に何が起こりうるかを常に想定しておかないといけないのがヨットの魅力。でも、浜田さんがヨットを始めたとは、まったく聞いてなかったです(笑)。
(これよりWEB版限定テキスト)
HOYAの社長を退任した後しばらくして、「こんなことをやろうと思うんだ」と浜ちゃんから聞いたのが、今のアルヒの事業でした。成功するというビジネスの直感と覚悟で、一気に東証一部上場まで持っていったのは、すごいなぁと思いました。起業する人はたくさんいるけど、本当にスケールさせてしまうのは、生半可なことではないですから。
もちろんまずは今のビジネスを大きくすることに懸命だと思いますが、きっとまた誰もがあっと驚くようなことをしてくれるんじゃないかと思っています。楽しみにしています(笑)。
Hiroshi Hamada(左)
アルヒ代表取締役会長兼社長。1959年生まれ。サンダーバード国際経営大学院MBA。デル日本法人社長、リヴァンプ代表パートナー、HOYA最高執行責任者などを経て、2015年より現職。
Izumi Kobayashi(右)
ANAホールディングス社外取締役。みずほフィナンシャルグループ社外取締役。三井物産社外取締役。1959年生まれ。大学卒業後、三菱化成工業を経て、メリルリンチ日本証券社長、世界銀行グループ多数国間投資保証機関長官などを歴任後、現職。